シリウスは意外と積極的・二
やっと思いが通じ合った王子とヴァレリア
一旦お城に戻り、王子はヴァレリアを残して執務室に戻るのだった。
ヴァレリアと王子はバルカ城に戻っていた。
「ごめんな、テセウスに地下室の場所を案内してくるからヴァレリアはここで待っていてくれ」
そう言って王子が指差したのはお城のテラスだった。
「テセウス?」
聞きなれない名前に首を傾げる。
「ああ、この間のマクシミリアン公の息子だよ」
「そうなのね、わかったわ」
そう言って私はテラスにある円形のベンチに座った。と、そこへ近づく人影が。
「シリウス?」
そこにはシリウスがいた。気のせいか瞳が輝いている。
「マクシミリアン公爵の晩餐会以来でしたわね。来ないつもりがまた来てしまいました」
「‥‥‥」
シリウスが黙っているので私は困惑した。
「あの、シリウス?」
「お嬢様、王子との婚約破棄はどうなったのですか」
「えっ」
シリウス?何を言っているの??いきなりの質問に困惑しているとシリウスに腕を取られる。
「いたっ、何?」
「破棄されたなら、私にもチャンスはあるはずだ」
そう言ってシリウスは私を抱き寄せてきた!
ゾゾゾゾ〜ッと背筋が凍る!気持ち悪い、レクター以外に触れられることがこんなに気持ち悪いなんて!
「えっえっまってシリウス!私と王子は‥‥‥」
『やめろよ、ヴァレリアに触んな』
その時ニーズヘッグが出てきて、シリウスの手を叩いた。
「なんだお前は、悪魔か?」
『やめろ!俺様に触るな!』
バスンバスンと尻尾で追い払おうとするニーズヘッグの隙をつかれて、私はシリウスに再び腕を掴まれた。
「悪魔は下がっていろ!私はヴァレリア様に用事があるのだ!」
「きゃあ!シリウス!痛い、何するの?!」
シリウスの力の強さに驚く!シリウスは細いのに。男の人ってこんなに力が強いの?!振り解けない!
その時ヴァナルカンドの咆哮が響いた。
「ヒィ!なんですかあの大きな獣は??」
「ヴァナルカンド!ユーリ!」
よく通る咆哮に目を向けるとそこにはユーリとヴァナルカンドがいた。
「ヴァレリアさん!お城に戻ってたんですね?そちらの方は?」
「ユーリ!久しぶり!」
「ヒィェェェ!ヴァレリア様のお知り合いの方?!あの大きな狼も?いつのまにそんな事に?」
ユーリはこちらに足を運んでシリウスに一礼した。
「僕はユーリです。貴方は?」
シリウスはムッとした顔をユーリに向ける。
「何故貴方のような平民などに私が名乗らなければならない?」
「えっ?」
シリウスのその言葉を聞いて、ヴァレリアがとうとうブチギレた!
「シリウス!この人は私の友達なの!もちろんヴァナルカンドもよ!大体急に現れて何なのその態度は!無礼にも程があるわ、私の視界に入ってこないで!」
烈火のごとく怒るヴァレリアはシリウスの手を振り払った!
「そ、そんな〜!!」
シリウスはヴァレリアの言葉にガックリと肩を落とした。その目には涙が浮かんでいる。
『へへー、ざまぁ!』
ニーズヘッグがシリウスの丸めた背中を見ながら笑う。
「こらニーズヘッグ、笑わないの!」
『だって生意気じゃん、アイツ』
ニーズはそう言って、トボトボと去って行くシリウスの背中にアカンベをする。
『俺の飼い主はここにはいないみたいだな?あちらの庭か?』
そう言ってヴァナルカンドは城の裏にある広い庭に鼻を向けた。
「えっ庭?どこ?」
ユーリがヴァナルカンドの横でぴょんぴょん跳ねながら庭を探す。
(ええ〜何このユーリ可愛い〜!)
「私が案内するわ。こう見えてもお城の事は一通り見て覚えてますからね、恐らく先王様はあちらにいますわ」
『いや、ここからでは歩いてあの庭に行くのは少し時間がかかる。二人とも俺の背中に乗れ』
それを聞いてヴァレリアの顔がパッと輝く!
「わぁ〜嬉しい!私このもふもふに前から触りたかったと思っていたのですわ!」
そう言ってヴァレリアはヴァナルカンドの背中によじのぼる。
「ユーリも早く!」
えっえっと困惑しているユーリに手を差し伸べるヴァレリア。まるで王子のようだ。あれ?これって普通逆だよね?僕がヴァレリアさんに手を差し伸べる状況だよね?というユーリの思いを無視してヴァレリアはヴァナルカンドの背中にユーリを誘う。
「じゃあ行きましょう!ヴァナルカンド!お願いね!」
『おう、しっかり掴まってろ』
そう言ってヴァナルカンドは庭への道を走り始めた。
ヴァレリア様かっこいいですね。かっこいい女性って好きなんです(という性癖)。
アラジンが魔法の絨毯に乗った時にジャスミン王女に手を差し伸べるシーンが脳内再生しました。
シリウスは、うん‥‥‥懲りないなとしか。
次回は、謎に包まれたレクターのお父さんがついに登場するかもしれないししないかもしれないし。
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