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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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我が愛しきお前無くして

ニーズヘッグにヴァレリアの気持ちを一方的に言われた王子。

果たして王子はどうするのか!?


※視点が王子だったりヴァレリアだったりウロウロします。

「ニーズヘッグ、王子に伝えてくれたの?」


 自分の胸の谷間で疲れて眠るニーズヘッグの背中をトントンしながらヴァレリアは歩いていた。


 ヴァレリアがたどり着いたのは雪深い山にある大きな図書館だった。


(ここならしばらく一人で過ごせる)


 ニーズヘッグに言い捨てられた王子はしばらく呆然としていた。


 なんだそれ。


 何が、誰が、幸せになれだと?

 お前無くして。

 ヴァレリアがいなくて。


 幸せになれるのか?俺が?


 馬鹿じゃないのか?ヴァレリアは。


 ヴァレリアはどこまで俺を振り回せば気が済むのだ??


『その目は一夜で(ほろ)ぶべく一夜で生まれた。魂が光の輝きの中に眠っているときに。私は姿をあらわす』


 レクターが何かしら唱えると、その体が青い炎に包まれた。


(ヴァレリアを救ってくれよ。普通の人間なら何もできないだろうけど、でも王子なら、王子だったらできるだろ!!可哀想な、ヴァレリア‥‥‥)


「当たり前だろ‥‥‥俺を誰だと思っている!?」


 シュォォォォ‥‥‥


「えっ??」


 トボトボと図書館へと足を向けるヴァレリアの目の前に、青い炎に包まれたレクターが立っていた。


「えっ?レクター‥‥‥。どうして?」


 俺はヴァレリアを見る。

 さっき会ったばかりなのに。

 さっき別れたばかりなのに。

 愛おしい、ヴァレリア‥‥‥


「ハァ、俺を舐めてもらっては困るぜ。俺が本気を出せばこの「目」に頼らずともヴァレリアを探し出せるのだ」


 私はレクターが現れてくれた事に内心嬉しく思っていた

 だって‥‥‥


 私はレクターの事が‥‥‥


 私の目には涙の膜が張っていた。

 気を抜いたらポロポロ溢れてしまいそうだ。

 だって、レクターが追いかけてきてくれた!

 ニーズヘッグの言葉を聞いてもなお‥‥‥


(王子はいずれ結婚して。その横で微笑むのは、私じゃないって。人間としても悪魔としても中途半端な私より、王子は普通のお嬢様を選ぶと)


 そう思っていたのに。レクターは私のところへ来てくれた。


「レクター、来てくれたんですね‥‥‥」


「当たり前だ」


 レクターはいつもと違い、青い炎が全身を纏っている。この炎、最初に会った頃のレクターの瞳の中の青い炎に似てる。


 レクターは不思議そうに見ている私の視線に気付いたのか、口を開いた。


「この炎は最終手段だ、普段は「目」を使って世界を見渡している、お前の事も‥‥‥」


 最終手段‥‥‥レクター。そこまでして、私のことを。


 レクター。私貴方が好きだよ、好きだよ。


「嬉しいです、そこまでして私を探して下さるなんて」


 そう言って頬を赤らめるヴァレリア。

 なんなんだよ、こいつは!

 俺を振り回してばっかりの‥‥‥


 段々ヴァレリアに腹が立ってきた。


「ああそうだよ!お前が変な事ばっかり言うから!探して見つけたんだよ!いいか誤解してるようだから言っておくが、俺が好きなのはヴァレリアお前だけだ!結婚したいと思っているのもヴァレリアだけだ」


「へぁ?!」


 突然のレクターの告白に私は驚いた。いや前からずっとそんなこと言ってたような気がするけど。こんな風にストレートに言われたのは初めてかもしれない。


 無意識に涙が溢れてくる。


「うん、嬉しいです。レクター」


「何回も言わせるなよ、何が不安なんだ」


【でもこの国のどこに、貴女みたいな悪魔憑きを選んでくれる物好きがいるかしらね!?】


「アナスタシア様に言われちゃったの、私は悪魔憑きだって。だから、王子。‥‥‥レクターも、もしかしたら悪魔憑きの女性は嫌なのかなって色々考えちゃって。最初の頃はレクターも、私のこの紫の瞳が悪魔の色だって言って、嫌がっていたし」


「俺はもうお前の瞳の色に嫌悪を感じてない! むしろ愛しいと思ってる。それにしてもアナスタシア‥‥‥アナスタシアがそんな事を?」


 私は慌てる!レクターが王子の権限を行使してアナスタシア様を罰したらどうしよう!


「いえ、別にアナスタシア様は関係ないのですよ!? 私が勝手に思っただけで。アナスタシア様は今ハンニバル様と頑張って治療してますから、出来るだけ刺激は与えないでください!」


「面白いなお前は。自分の事を悪く言うやつを(かば)うなんて」


 レクターの言葉に、ヴァレリアはボソボソと呟く。


(かば)うというか、事実だし。それに私はあまりニーズヘッグを悪魔だと思っていないので。ニーズヘッグは、もう私の家族のような感覚で、だから余計にショックで」


 そう言ってヴァレリアは、胸の中のニーズヘッグを愛おしそうに撫でる。


「‥‥‥」


「?レク‥‥‥」


 レクターは何も言わず、私を抱きしめてきた。


「帰ろうヴァレリア、一緒に」


「‥‥‥ッ!!」


 再び涙が頬を伝う。


「レクター‥‥‥ありがとう」


「もう馬鹿な事考えるなよ、俺にはヴァレリアだけだ」


 私は王子の、レクターの側にいていいのね‥‥‥


「うん!」


 言いながら私は王子(レクター)の背中に手を回す。


 寝たふりをしていたニーズヘッグが、ホッと胸を撫で下ろした。



やっと両思い?になりましたね。

まだまだ一波乱ありそうですが。

書いててなかなかくっつかない二人にイライラ(以下略)


サブタイトルはバッハのオペラ「マタイ受難曲」からイメージさせて頂きました。

個人的にお前呼びは無いなと思いつつ、レクターだからいいかと思いつつ書いてました。


ここまでお読みくださってありがとうございます。




この話が良いと思ったら広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!良くないと思ったら☆にZEROを付けて行ってくださいね。


ご拝読ありがとうございました。また読んでください。

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