ニーズヘッグの想い
執務室の窓からヴァレリアの姿を確認したレクターは、ヴァレリアを探しに外に出る。
そこには意外な奴が待ち構えていて‥‥‥
何故、何故ヴァレリアは戻ってこない?
ヴァレリアを見つけた方に走って向かう。
いない‥‥‥
右を見ても左を見てもどこにもいない。
やはり、俺が見たのはヴァレリアだったのか?
(レクター何て顔してるんですか、今生の別れでもないのに、私は大丈夫ですよ)
「クソッ、この目で!」
俺が「目」を使ってヴァレリアを探そうとした時だった
あれは‥‥‥
「ニーズヘッグ。お前」
俺の目の前にはニーズヘッグが小さな羽根をパタパタさせながら浮遊していた。
『チッ、どういうわけか知らないけどよ。ヴァレリアは王子に合わせる顔がないんだとよ』
合わせる顔がない?
どういう事だ?
『はあ、ヴァレリアの事だから、どうせ私はお前に相応しくない〜とか思ってんじゃねぇの!?知らんけど、あいつ時々そういう思考に陥るからな』
「相応しくないだと?何故そう思うのだ? 本当なら俺は今すぐにでも式を挙げたいのだが。ただ今は、ヴァレリアの気持ちが俺を好いているのかわからないから」
無理にはしたくないだけだ。
ニーズヘッグはハーっとどでかいため息を吐いた。
『相応しくないよな。悪魔憑きの女なんて』
「何?」
『ヴァレリアは言っていた。王子はいずれ結婚して、その横で微笑むのは、私じゃないって。人間としても悪魔としても中途半端な私より、王子は普通のお嬢様を選ぶと』
なっ‥‥‥なんだ、それ。
『ヴァレリアがお前の事を好きかどうかわからないってお前は言ってたが、ヴァレリアはお前が好きなんだよ。好きだから、身を引いたんだ』
なんだそれ。
「‥‥‥今ヴァレリアはどこにいる?」
『今は、ほっといてやれよ。一人になりたいんだとよ、エリー達には俺様が伝えとく』
あと‥‥‥ヴァレリアに言われたんだけどさ。
『幸せになってくれ、て』
ドッ‥‥‥
心臓に杭を刺されたかのように胸が痛い。
そこまで言って、突然ニーズヘッグは泣き出した。
『こ、これはお、れさまの、個人的な意見だけどさ。王子‥‥‥ヴァレリアを救ってくれよ。グスン、普通の人間なら何もできないだろうけど、でも王子なら、王子だったらできるだろ!! うぅ。可哀想な、ヴァレリア‥‥‥』
いつのまにかニーズヘッグの体は透けていた。消えるのか?
「待て!ニーズヘッグ!」
ニーズヘッグは泣きながら消えていった。
短くてすみません。
ニーズヘッグのヴァレリアへの気持ちが書けてよかったです。
個人的にニーズヘッグ好きなんです。
ここまでお読みくださってありがとうございます。