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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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好きになってごめんなさい

アナスタシアとヴァレリアの話は平行線でどうにもならず、ヴァレリアは肩を落としてレクターのいる場所へと足を向けるのだった。

【元に戻りたかったら、貴女が死ぬ以外方法はないわ!】


「ハァ‥‥‥なかなか根強いわ。あの方の問題は」


 アナスタシア様付きの女中に解放され、私はトボトボとレクターが待っているだろう方向へと足を運んだ。


『ヴァレリア大丈夫か? ごめん。でも俺様は今のあいつには戻りたくねぇ、前は平気だったのに、あんな奴守りたくねえ、どうしてかな。これもお前のせいだよな多分』


「ふふっ、ごめんねニーズヘッグ。元々は悪魔なのにね」


『別にその事は気にしてねぇよ! ただお前と一緒にいる方が楽しいし面白いんだよ』


 ニーズヘッグ‥‥‥


「もし、私が死んだら貴方も消えるのよね?」


『ハァ?何言ってんだ?お前死ぬのか?当たり前だろお前が死んだら俺様も死ぬ、もしそんな事になったら俺様一生恨むからな!』


 ニーズヘッグが尻尾で私の顔をビタンビタンする。少しも痛くないけれど。


「痛い痛い、冗談よ。聞いてみただけよ!」


【でもこの国のどこに、貴女みたいな悪魔憑きを選んでくれる物好きがいるかしらね!?】


 私はアナスタシア様に言われた言葉を思い出していた。


(悪魔憑き‥‥‥)


 レクター。レクターなら今さら私に悪魔が憑いていようがいまいが気にしないだろうけど、仮にも一国の王子でこの国の主で。今は私についてくる形で旅に出ているけど、いずれはお城に戻る日が必ず来る。


 そしていずれ結婚して、確固たる地位を築いて‥‥‥


 王子の横にいて微笑んでいるのは、私じゃない誰かで‥‥‥


「‥‥‥ッッ!」


 どうしてだろう。

 胸がズキズキする。

 痛いよ‥‥‥


 いずれレクターは、私のような悪魔憑きじゃなく、他のお嬢様を選んでしまうのだろう。だって、一国の王子のお相手が私だなんて烏滸(おこ)がましい。


 私はレクターのいる方に向かう歩みを止めた。


『どうしたんだよ?王子に会わないのか?』


 ニーズヘッグがピョコと顔を出して問う。


「どうしよう私、王子に合わせる顔がない」


『はあ?』


【この人と生きていきたい。最初は婚約破棄されたのにどうして?と困惑していて、レクターを好きかどうかわからなかったけれど。今はレクターの笑顔をずっと側で見ていたい。でもきっとそれは叶わない夢‥‥‥】


(私は、きっと最初から)


【誰かを好きになってはいけなかったのですわ】


 本当はあの時から、わかっていた。

 私は誰かを好きになるべきじゃない!


『ストゥルルエッダ!』


『わぁ〜いきなり何すんだ!』


 ビキビキビキ!!私の紫の瞳が濃くなり、ニーズヘッグの羽根が生える!


「飛行の練習をするの!」


 違う、本当はレクターに会いたくないだけ。


 できるだけ遠くに、レクターの金色の目でも探せないように。


『どうしたんだよ!アナスタシアに言われた事がそんなにショックだったのか!?』


 こんな、悪魔憑きで。入れ替わっても中途半端な私!


 新しい体になって、まっさらになって、希望に満ちて。冒険をしていたはずなのに。レクターが現れてから、心を乱されてばかりで!


『どうしたんだよ!ヴァレリア!』


「ごめんニーズヘッグ。しばらく一人になりたい」


『はぁー?なんでいきなりそんな事に??』


「‥‥‥」


 いつのまにか、涙が溢れていた。

 王子、レクター。ごめんなさい。

 好きになって、ごめんなさい‥‥‥


* * *


 その頃王子とテセウス(とシリウス)は、主に王子不在の時の打開策を練っていた。


「そういえば俺と同じ髪色のカツラを見つけたんだ、買っといてよかった、テセウス被ってみろ」


 スポッ!


「おおお〜カツラを被ると俺にそっくりじゃないか!」


「そうかー?俺には分からんな」


 王子とテセウスは、お互いに鏡を見ながら着せ替えを楽しんでいた。


「あとお前は少し姿勢が悪いぞ」


「仕方ないだろ、ずっと地下に居てずっと同じ姿勢だったのだから。そろそろ戻りたい。研究がしたい」


 テセウスは拗ねたように言い放つ。


「ははは!冗談だよ!お前はそのままでいいよ」


 シリウスは罪悪感も手伝って済まなそうな様子で窓の外を見た。


「おや、ドラゴンだ‥‥‥珍しい」


 ドラゴン?


 シリウスのその言葉にレクターが焦った様子で窓の外を見る。


「ヴァレリアだ‥‥‥」


「えっ!?ヴァレリア様なのですか?あのドラゴンは!?」


 王子はシリウスを睨む。


「お前は軽々しくその名前を呼ぶな!!」


 王子の目が殺意を込めた金色の目に変わる!


「ふぁ!ひゃいい!すみませんでしたァァ!!」


 でも何故ヴァレリアが?俺のところに真っ直ぐ戻ってくるんじゃなかったのか?


(レクター何て顔してるんですか。今生(こんじょう)の別れでもないのに、私は大丈夫ですよ)


 何故かあの時の笑顔のヴァレリアを思い出した。


「‥‥‥ッ!!すまんテセウス!地下室は用意しておく、また後で!」


「ほーい、行ってら」


 テセウスの声を背に王子は執務室のドアをバタンと閉めた。



ついに認めたね!鈍感激鈍お嬢様!


お互いが好き合っているのに付き合っていない二人‥‥‥

謎です。これから二人はどうなって行くのか?


ここまでお読みくださってありがとうございます。



この話が良いと思ったら広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね。良くないと思ったら☆に0を付けてくださいね。


ご拝読ありがとうございました。また読んでください。

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