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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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幸せな時間

束の間の休息を取ったヴァレリア達。

ヴァレリアはかつて自分が思っていた事により目覚めるのだった。



【この人と生きていきたい。レクターを好きかどうかわからなかったけれど。今はレクターの笑顔をずっと側で見ていたい。でもきっとそれは叶わない夢‥‥‥】


(私は、きっと最初から)


 【誰かを好きになってはいけなかったのですわ】


「‥‥‥ッ!!」


 あの時の記憶が蘇る。


 目の前にはレクターの寝顔。もしかしてずっと私を抱きしめたまま眠っていたのだろうか?


 そういえば王子、レクターはいつも自分の寝室には誰も入れず、ベッドの横にはいつも剣を置いていると聞いたことがある。寝込みを襲われないようにとかなり警戒していて、いつでも覚醒できるように、いつも浅い眠りだと。


 そんな人が今、私を前にして‥‥‥こんな無防備に寝顔を晒している。もしかして私、すごいレアな場面に遭遇しているのかも?いや、今さらなんだけど‥‥‥


 レクター、可愛い寝顔。


 顔に触れてその頬を撫でてみる。


 その瞬間、手を握られ、レクターの目が開いた。


「あ、おはよう。レクター」


 私がそう話しかけた途端、レクターの目が見開いたような気がした。


「レクター?」


「‥‥‥ヴァレリア」


 レクターはそう言うと、また私を抱きしめてきた。


「よかった。ヴァレリア」


 私は急に強く抱きしめられて、若干ドキドキしながら問う。


「ど、どうしたのですか?」


「お前が俺の目の前から消えてしまう夢を見たんだ」


「‥‥‥ッ!」


【この人と生きていきたい。レクターの笑顔をずっと側で見ていたい。でもきっとそれは叶わない夢‥‥‥】


 一瞬脳裏に()ぎったそれを、振り払うようにぶんぶんと頭を振る。


「レクター、私は消えませんよ。貴方がそばに居てくれるから‥‥‥」


 ね?と言って私はレクターの両頬をつねる。


「痛え!」


「あははは!」


 そうだよな、消えるわけがない!こんなに幸せな時間が。


「お返しだ、このこの!」


「きゃー! はははは!」


 この幸せな時間が続くのなら、俺はなんでもする。


 レクターとじゃれあいながら私は思い出していた。昨日のニーズヘッグの言葉‥‥‥


(俺様ヴァレリアに支配されてから、思考がヴァレリア寄りになってきてんだもんよ! もしかしたらこのまま思考ごと、体ごと乗っ取られるんじゃないかと思って!)


 もし、ニーズヘッグの言葉が真実(ほんとう)なら、確かめてみる必要があるわ。


「レクター! 私お城に戻りたい! 戻って、ヴァ‥‥‥アナスタシア様と話がしたいです」


「わ、どうした突然?」


 私が急に振り向いたので、レクターは面食らってベッドの上に倒れた。


 その様子に少しだけ可愛いと思ってしまった。


「ん? アナスタシアに? ヴァレリアはアナスタシアの事嫌いじゃなかったのか?」


「えっ?」


「折々の(もよお)し事でお前を見た事があるが、毎回アナスタシアの事をすごい形相で睨んでいたのを知っていたぞ。あの頃のヴァレリアと比べたら、今のヴァレリアは別人だけどな。そこも俺の興味を引いたところでもあるが」


 ハハハッと笑うレクター。


「‥‥‥」


 知らなかった‥‥‥ヴァレリア様はそんなに、そんなに私の事が嫌いだったの?何故?(アナスタシア)が何か、ヴァレリア様にしたかしら?だったらそれを聞く為にも尚更ヴァレリア様に会わなければ!


「レクター! お城に行きたいです! いえ、レクターが行きたくないのなら私一人でも行きます!」


「待て待て、誰も行きたくないとは言っていないだろう。一緒に行くよ。ちょうどユーリとヴァナルカンドも城に向かっているだろうからな、合流できるかもしれないし」


「お城、嫌じゃないんですか? 政務の事とかほったらかしにしてるのに」


「はは、心配ないよ。今は国も安定してるからな、ただ、シリウスが苦労してるだろうが、あいつはしばらくお灸を据えねばならん」


「??お灸?」


 レクターは前にマクシミリアン公の晩餐会で、シリウスがヴァレリアを誘った事をまだ根に持っていた。


 ヴァレリアの脳裏に苦労しているシリウスの顔が(よぎ)った。


「ヴァレリア、城に戻るのはいいが、シリウスとは顔を合わせるなよ。真っ直ぐ後宮に行き、アナスタシアと会うんだ。これが城に戻る必須条件だ」


 ??必須条件て‥‥‥レクター、何を必死になっているのかしら?まあ確かに私は城から出て行って、一度は婚約破棄をされた身だけど‥‥‥


(レクターはそれは解消だと言ってたけど??)


「顔を洗いに行ってくる」と言って洗面所に行ったレクターを見送る。


 ふと視線を下にやると、ニーズが胸の谷間からピョコと顔だけ出していた。


『お前あの話をするのか?ヴァ、アナスタシアに』



少し短かったですねすみません。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

感想などありましたらどんどん書いてください。

よろしくお願いします!

泣いて喜びます。



この話が良いと思ったら広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!良くないと思ったら☆にZEROを付けて行ってくださいね。


ご拝読ありがとうございました。また読んでください。

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