ついに一線越えますか?
ユーリと双子の決着が着き、自由になったヴァナルカンドはユーリと城へ向かう。
ひとまずの休息が各々に訪れるのだった。
※未成年飲酒の描写がありますが、この作品はフィクションです。皆さんは成人してからお酒を嗜みましょう。
場所は変わってここは王族の領地のひとつであるアガンシュ島の王子の別荘。エリー達とは別れて、ヴァレリアの為に特別に用意させたのだ。もちろん食べ物は王室仕様で豪華。
ズラッとテーブルに並べられたご馳走の数々にヴァレリアは目を輝かせた!
ぐるるるると腹が鳴った!
「なんだ今の音は? ヴァレリアまた悪魔化したのか?」
「いいえ! 今の音は私の腹の音ですわ! それよりこの豪勢な食事はどこから調達なさったんですか?」
「ここは俺の別荘だからな、今日は特別に城のコックや女中を呼んで用意させた。約束だったからな」
「ふわぁ〜? 全部食べてもいいのですか?」
「うん、俺はあまり腹減ってないからこれを貰おうかな」
そう言って取ったのはターンオーバーと呼ばれるパイのようなものだった。
「最近特に忙しい日が続いたな」
そう言って俺がお酒に手を出した時、ヴァレリアは徐に語り始めた。
「美味しい〜! 生きてて良かったですわー!! 感涙」
「ハハ、喜んでもらえて嬉しいよ」
「レクター私幸せですわ! こうして食卓を囲んで好きな人とたわいもない会話をしている時が一番幸せですわ。ありがとう」
「いいんだよ、これくら‥‥‥」
えっ? 今ヴァレリア、俺のこと好きって言った?
「ふぁあ。このジュースも美味しいですわ、なんか頭がふわふわして‥‥‥ひひひ」
「ヴァレリア?」
まさかと思ってヴァレリアの手元にあるグラスを嗅いだ。
お酒だ。
「うへへへ、レクター。しゅき〜」
そう言いながら俺の手を取り頬をすりすりして甘える。
(か、可愛い)
クソッ、いくら酔っているとはいえ‥‥‥これは卑怯だろ。
「レクター‥‥‥」
頬が紅潮して瞳はとろんとして、心なしか声も艶っぽい。はっきり言ってエロい。俺の心臓が早鐘を打つ。
「はぁ〜‥‥‥なんでお酒がこんな所に」
レクターは顔を手で覆った。気がつくとヴァレリアがまた飲もうとグラスにワインを注ごうとしている。
「ヴァレリア! もうやめとけ、大体お前は未成年だろう」
「へぁ? ころお酒なんれすか? ありゃ〜どうしましょう。うへへ」
俺はクラクラとしながら
「とりあえず今日はもう寝ろ。二日酔いになりたくないだろう?」
「ヤダァ、まだ食べる」
「はぁ〜、明日また食べれば良いだろう。食事は逃げやしないよ」
嫌がるヴァレリアの手を無理やり引き、沢山あるうちの一番近い部屋に入り、ベッドにヴァレリアを下ろす。
「大丈夫か? 水持ってくる」
「うふ、ふへへ。レクター」
そう言って俺に抱きつこうとするヴァレリア。
「おっと」
それを避ける俺。今ヴァレリアに抱きつかれたら我慢が効かんからな、色々と。
「レクター、一緒にいてぇ?」
上目遣いでクイクイと俺の袖を引くヴァレリア。俺は再び理性と本能の狭間でクラクラした!
「‥‥‥お前なぁ!」
待て待て落ち着け俺! これは酒のせいなんだ!
「とりあえず水持ってくる」
「レクター、好き‥‥‥」
俺の腰に抱きつき、頬を擦り寄せるヴァレリア。プッツーン!! 辛うじて残っていた俺の理性が切れる音がした。
「ヴァレリア、散々俺を煽りやがって! 覚悟は出来てるんだろうなぁ!?」
そう言いながらヴァレリアに覆い被さった! ヴァレリアはふにゃりと笑っている。
「えへへ、レクター。怖い顔〜!」
ヴァレリアはそう言いながら俺の頬をつねる。その手を取り、枕元に縫い付ける。
「ヴァレリア‥‥‥」
ヴァレリアに口付けようとした時、ニーズヘッグがヴァレリアの胸から出てきた!
『ブッブー!! 残念でした! ヴァレリアは寝てしまいました! ハハハ王子! なんだそのダッセー顔は!!』
は‥‥‥
『ねぇ今どんな気持ち? 今どんな気持ち?』
「ニーズヘッグよ」
『ん??』
ニーズヘッグは寝ているヴァレリアの胸の上でふんぞり返っていた。うらやま‥‥‥いや。
「礼を言うよ。あのままだと俺はヴァレリアによからぬ事をしてしまいそうだった」
安心したようにベッドにどっかりと座ってホッとひと息を吐く。
「あー、もうヴァレリアには振り回されっぱなしだ! 俺の調子が狂いっぱなしだ!」
以前はこんな事はなかった! 好きな時に女を抱いて、好きな時に遊んで、それこそシリウスが呆れるほど我儘の限りを尽くしてきたのに‥‥‥。以前の俺だったら‥‥‥
俺は手で髪をぐしゃぐしゃにしながら言う。
『ハハハ、情けないなぁ王子ともあろう人が! まあ俺様がいる限りヴァレリアには指一本触れさせないが』
「‥‥‥そうしてくれ、ヴァレリアを傷付けたくない」
『お優しい事で、お優しいついでに王子の秘密をそろそろ教えてあげてもいいんじゃないのか?』
「それは難しい。この話をしたら、ヴァレリアとの関係がギクシャクしてしまいそうだ。俺は、今の関係が心地よいんだ。わがままかもしれんが」
『拗らせてるなぁ! 別にいいじゃねぇか! 王子の宿命だろ? それも含めて全部理解されるってのが愛ってやつじゃないのか知らんけど!?』
「ハハハッ! これは意外だ! 悪魔が愛を語るなど」
『し、仕方ねーだろーよ! ヴァレリアと同化する内にヴァレリアの思考も俺様に流れてくるんだからよ! 逆らう事もできねーし!』
ん? ヴァレリアの思考が流れてくる?
ニーズヘッグは首を捻った。
(あれ? 俺様って、偉そうに言ってるけど、こんな事初めてだ。ヴァレリアに支配されてから、思考が‥‥‥)
『あびゃびゃびゃびゃー!!』
いきなり涙目になったニーズヘッグがヴァレリアの頬を尻尾で叩いて起こそうとした。
「こら、いきなり何をする!」
『びぇぇん! だって俺様ヴァレリアに支配されてから、思考がヴァレリア寄りになってきてんだもんよ! もしかしたらこのまま思考ごと、体ごと乗っ取られるんじゃないかと思って!』
怖いじゃん! と鬼気迫る様子でニーズヘッグは詰め寄る。
たしかにそうだが‥‥‥
「お前、悪魔の契約の権利は? どうなってる?」
『そんなもんとっくにヴァレリアに取られてるよ! あっ、そっかそれで‥‥‥』
悪魔の契約は、基本的に権利を持つものがその権利を好きに行使できる。その権利がヴァレリアに移動した事はつまり、ニーズヘッグを生かすも殺すもヴァレリア次第という事になる。
「あっ‥‥‥」
『「あっ」とか言うな! おいヴァレリアヴァレリア!』
そう言ってまたニーズヘッグはヴァレリアの頬を尻尾で叩く。
「ニーズヘッグやめろ(怒)! ヴァレリアの玉の肌に傷でもついたらどうする!」
「うーん‥‥‥」
その時ヴァレリアの目がうっすらと開いた。
「ニーズ、起きてたの?」
『ま、まあな!』
ニーズヘッグは慌てて尻尾を隠す。
「ニーズおいで。私は貴方を消したりしないわ、貴方は私の体の一部ですもの」
そう言ってヴァレリアはニーズヘッグを抱きしめた。
『あ、そ、そうなのか?(ホッ) お、俺様もヴァレリアと一緒に居たいぞ!』
ニーズヘッグはそう言ってヴァレリアの胸に顔を埋める。
イッラァ〜(怒)!!
「ニーズ! お前だけずるいぞ!」
「わぁレクター! びっくりした! 居たんですね」
「うん、まぁ‥‥‥ちょっと」
さっきの事の負い目もあって俺は口籠る。
「私にとって大切なのはレクターも同じですわ」
そう言って微笑むヴァレリア。ああ、やはりあのまま間違いを起こさないでよかった。危うくもう二度とヴァレリアのこの笑顔を見る機会を失うところだった‥‥‥
「ヴァレリア、俺も一緒に寝ていいか?」
「えっ! だ、だめですよ!」
途端に赤面して断る。さっきまでは好きとか言ってたくせに‥‥‥本当に、ヴァレリアには振り回されてばっかりだな。
「添い寝だけだ、ほらいつもしてやってるだろ」
「本当に添い寝だけならいいですけど‥‥‥」
そう言うと、レクターは布団に入ってきた。あ、レクターの腕が、私の体を抱きしめてきて、暖かいな‥‥‥
レクター、好きだよ。酔ってたからじゃなく、本心だったんだよ。
「どうした?」
どうした? なんて、優しく聞かないでよ。
「何故泣いているのだ?」
レクターが、優しいからだよ。幸せだからだよ‥‥‥でもこの体はヴァレリア様じゃない。本当は、ただの虚弱なアナスタシア。
「なんでもないですわ、幸せで‥‥‥夢じゃないかと思って」
朝が来たら、この体が元に戻っているかもしれない。もしそうなっても、それでも貴方の気持ちは変わらないかな。
『そんなわけないだろ! お前には俺様がいるだろ! それに今、王子に愛とは云々ということを説教したんだ! だから大丈夫だ!』
「なんだ? ニーズヘッグまで? 愛? なんの事だ?」
『ベー! 教えてやらねーよ! この鈍ちん! 変なところで真面目、この謎オブ謎のクソ王子!』
「なんだと!?」
「ふふ、ニーズヘッグ」
ありがとう、レクター。ありがとう、ニーズヘッグ。
レクターに抱きしめられながら、温もりを感じながらその日は眠りについたのだった。
あれ?ほのぼのにしたかったのに最後少ししんみりしちゃいましたね?
王子がヴァレリア様に振り回される描写が
書けてよかったです。
ここまでお読みくださってありがとうございます。
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ご拝読ありがとうございました。また読んでくださいね。