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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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意外な事実

自らの決意の下、双子を消す事に成功したユーリ

守られていたばかりの自分と決別したのだった。

 双子が消えた瞬間、ヴァナルカンドの口に打ち付けられていた杭が消えた。


 ヴァナルカンドは口元を手で確認した。


『おお、かたじけない。あの双子が死ぬ前に唱えていた呪文は俺の舌を封じて、俺の咆哮(ほうこう)を抑える為だったのだ。助けを呼べないようにな。俺はユーリを守る事ができたことで諦めていたのだが‥‥‥お前たちのおかげだ、ありがとう』


「ヴァナルカンド、こちらこそありがとう。今までずっと守ってくれて、僕。やっとあの双子に復讐できた‥‥‥」


 ユーリが泣きながらヴァナルカンドの白い毛に顔を埋める。


『うむ、ユーリ。お前と魔力。共に強くなったな』


「ヴァナルカンド、これからどうする? 呪いは解けたわけだが」


 王子が口を開く。


「もう施設もない、ユーリを守る必要もない」


『ハハハ、では久しぶりにお城にでも寄ろうかな。お前の父親に会いに』


「え? 親父に?」


『ああ、お前の父親は俺の主なのだよ。話してなかったか?』


 え?


「ええ〜!! すごい! ヴァナルカンドの飼い主って先王様だったのね!」


 飼い主って‥‥‥ユーリが思わず吹き出す。


 そうか、あの時ヴァナルカンドが言っていた「主との約束」は、王子のお父さんとの約束だったんだ! 言いつけ通りに、僕を守ってくれたんだね!


 ユーリは嬉しくなって再びヴァナルカンドの白い毛にぎゅっとしがみつく。


『お前は先程のニーズヘッグを従えたという女か』


「ええ! 私は悪魔化できる人間なの! ヴァレリアとも言うわ」


『? お、おう‥‥‥」


 初対面のヴァナルカンドに対し、ヴァレリアは何を言いたいのかイマイチわからない事を(のたま)いながら話に割り込んできた。その様子に王子が吹き出しそうになった。


「そんな事は聞いてないなぁ、うちの家系は叔父様といい秘密主義が多くて困るな、ハハッ」


 それを聞いてヴァレリアがブチ切れる。


「何を言っているのですか!? あの一族の中で一番の謎の人物は貴方なんですよレクター!(怒)」


「わぁびっくりした! ヴァレリア、怒るな怒るな、腹減ってるのか? この後肉を奢ってやるから」


「肉ぅ〜? ま、まぁそれならいいですわ! お店でお肉をいただきながらたっぷりと王子の秘密を聞きましょう」


『ハハハハハ、面白い女だ! ニーズヘッグを従えただけでなく、王子を相手に意見するとは!』


 それを聞いて、二人ともお互いを見つめ合った。


「ヴァレリアがそもそもズバズバ言い過ぎるんだ! おかげで俺の調子は狂いっぱなしだ、俺の心をこんなにもかき乱して」


「それは王子が何も話さないのがいけないのですわ! レクターと呼んでも一つとして謎も教えてくれないし、そもそも冒険を続ける限り王子は王子じゃなく一般人なのです。それは最初から言ってたでしょう??」


 またギャーギャーと言い合いをする二人。


『ハハハハハ! 早速痴話喧嘩か! 俺でも食わねえぞ!』


「ち、違います! これはただの」


「まぁハタから見たら痴話喧嘩だろうな。すまんヴァナルカンド」


 王子は首の後ろを掻きながら答える。


「くっ! ま、まぁ確かにそうかもしれないけど‥‥‥」


 ヴァレリアは赤くなった顔をぷいと背ける。


『ハハハ! 面白いな、お前たち二人はそれで付き合って無いのだろう?? それも含めて面白い』


「「‥‥‥」」


 どうやらヴァナルカンドには、二人の気持ちは見透かされているようだ。


 さすが悠久の時を経てきたヴァナルカンド。大抵の事はわかるらしい。


『で、ここからは少し真面目な話になるんだが。恐らくあの双子が完全に死んだのは、契約した悪魔にも伝わっているはずだ。何にも無いといいんだが』


 契約した悪魔? 先程ヴァナルカンドが言いかけた悪魔かしら?


「その名前は口にしない方がいい、嫌な感じがする。あの双子が復活したのも、ヴァナルカンドがその悪魔の名前を言いかけたからだと思う」


 レクター‥‥‥


『そうだな‥‥‥しつこい分、賢い悪魔だからな。どこでどう出てくるかわからない内は、名前は伏せておくよ』 


 だが、双子以外にもあの悪魔には沢山の部下がいる。これからもずっと旅を続けるつもりなら、充分警戒は怠らないようにな。


『さて、俺はお城に行って久しぶりに「飼い主」に会ってこようかな』


「親父はとっくに引退してるぞ、時々城の大事な催し事に顔を出すくらいで‥‥‥」


『ハハ、あいつももうそんな歳か』


「いや。政務が嫌になって幼い俺と摂政に丸投げしただけだ」


 レクターの言葉を聞き、ヴァナルカンドはずっこけた。 


『そ、そうか‥‥‥ある意味あいつらしいというか、それにしても幼い王子に丸投げとは。頼りない親父だなあいつは』


「ヴァナルカンド、どこかへ行くの?」


 ユーリが不安気に見上げる。


『ユーリ、そうだな城に行って飼い主に会ってくるよ。伝えたいこともあるしな。お前の事と、双子が完全に死んだことを』


「ぼ、僕も行く!」


 ヴァナルカンドはユーリを見つめる。


『まぁお前に関する事だからな‥‥‥主も知りたい筈だ。旧友の息子がどのように成長しているか』


 えっ? 旧友って‥‥‥


「もしかして、僕の父親はヴァナルカンドの主の友達だったの?」


『ああ、仲良しだったよ』


 それを聞いてユーリの顔がパッと明るくなる。


「すごい! 前国王と、僕の父親が友達だったなんて!」


「へぇ、案外世間は広いようで狭いんだな」


 王子は他人事のように感心して言った。


「へぇ、て‥‥‥家族のことなのにレクターは何も知らないのですね」


「はは、すまんな。なんせ親父が引退してからずっと摂政やら宰相の元で勉強勉強の日々だったからな。それどころではなかったんだ」


「そう‥‥‥」


 そういえば、私も幼い頃からずっと体が虚弱という理由で親族との(えん)は希薄だった。


 レクター、いつか私にも話してくれるのかな。王子のチート級の力の理由以外にも、王室の事情等も知りたい、教えてほしい。


 レクターは、きっと王室の身内のつまらん話と思っているでしょうけど、私は知りたいな。あ、お肉食べている時にそれとなく聞いてみようかしら!


 ーーいつのまにかヴァレリアの悪魔化は解けており、ニーズヘッグはヴァレリアの胸で眠っていた。



何だか色んなところで繋がっているんですね。

ヴァレリア様肉に釣られててワロタ。

一応北欧の設定なんだけど、お肉は美味しいのかな??

父王様とユーリの父親の事もいつか書ければいいかなと思っています。

次回は完全に(作者の)癒しの回もとい性癖の(以下略)です。


ここまでお読みくださってありがとうございます。



この話が良いと思ったら広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!良くないと思ったら☆にZEROを付けて行ってくださいね!


ご拝読ありがとうございました。また読んでくださいね。

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