決着
ヴァナルカンドの口から自分の血族や悪魔の事を聞いたユーリは...
リューフェロ、リュツィフィ‥‥‥
聞きたくなかった名前。悍ましい記憶が蘇る!
「ああ、ああああ!!」
ユーリは叫び、自分の顔を覆う。
『大丈夫だ、ユーリ! 私の背中にいる限り、双子に手出しはさせない!』
ヴァレリアさん‥‥‥
『ハハハ〜! 俺ってばずーっと寝てた!』
『リューフェロも!? 俺も俺も! で? こいつら何?』
『私はヴァレリアよ! まとめてかかってきなさい。そのかわり私が勝ったら呪いの解き方を教えなさい!』
『ぶ、ははははは! こいつ人間の分際で俺たちを倒すってよ〜!』
「俺もいるぞ」
王子がしれっと言う。
「まぁお前ら双子はヴァレリアとニーズヘッグに任せても大丈夫だろう」
(それでも万が一双子がヴァレリアに傷一つ付けるような事があったら、その時は殺すけど)
『『んだとォ!?』』
「ユーリ、お前はどうする? ヴァナルカンドを助けたいか? このまま逃げるか?」
王子が訊ねると、ユーリが覆っていた顔を、ゆっくり上げる。双子に真っ直ぐ目を向ける! 不思議とあの時感じたような恐怖はもうなかった。
地獄のような光景。
血まみれの廊下!
下卑た双子の笑い声。
忌々しい記憶。
その全てが苦痛だった!
でも‥‥‥
もう、あの頃の弱いユーリじゃない!
「いえ! 僕は逃げない! ヴァナルカンドを助けるんだ!!」
もう、守られてばかりのユーリじゃない!
ゴゴッ!
大きな音がし、見るとユーリの周りの土がユーリを囲んで浮遊している!
『この世のあらゆる喜びから逃げた者よ! お前は無言で横たわり、悲しむ者もいない! トレカティキム!!』
ゴゴゴゴ!!
ユーリの周りの土が光を帯び、研ぎ澄まされたナイフのように形状を変え、双子めがけて一斉に刺さる!
『ぎゃあああ!』
ナイフに変わった土がザクザクと双子に突き刺さる!
「わぁ、ユーリ! 凄い!」
「ヴァレリアさん、こいつら双子は僕に任せてください! 僕がケリを付けたいんです!」
「ユーリ‥‥‥」
ユーリの前髪が、今の術で乱れて上がっている。でも中身はユーリのまま‥‥‥アレクに代わっていない!!
「ええ! お願いするわ」
『ゲボ、お、お前ユーリだったのか? あの何もできなかったユーリ?』
『ハハハハハ!! 自分からノコノコ来やがって! 丁度いい! 今度こそ連れて行ってやるよォ!』
僕が弱かったから先生は死んだ。
今までその事実から目を逸らしていた。
でも、どう考えても悪いのは‥‥‥
「悪いのはお前らだろうが!」
『イエールプティオ!!』
ユーリがそう唱えた時、ゴッ! と音がして岩が爆発した。
『ハハハ! どこ狙ってんの!? ハズレ〜!』
「当たってるよ」
ユーリが冷静に言い放つ。
爆発で砕けた岩が双子めがけてドスドスと突き刺さった!
地面に散らばった小さな無数の火薬が、確実に双子の急所をめがけて散る。
『グハッ、いてぇ! ぎゃあああ!』
目に、こめかみに。内臓に。そして動脈に‥‥‥確実に死ぬように!
『えっ、何なのこれ! ぎゃあああ!』
「苦しんで、死んでね?」
ニッコリと笑顔を浮かべて双子に言い放つ。自分でも恐ろしく冷たい声音。
あの先生は、あの職員は、苦しんだだろうか? 恐怖で苦痛も感じなかっただろうか? ならば、そのどちらも味わいながら死に至ればいい! 死の恐怖に怯えながら!
「最後に聞く、お前らは元々僕を連れて行きたかったんだろう? どこへ連れて行く気だった?! 誰の命令だ!?」
『ハァハァ、ハハハッ! お前なんぞに‥‥‥』
『お前なんぞに言うわけがないだろう! ハハハ!』
双子は崩れ落ちながら言う
『ハハ、ハハハ‥‥‥』
ドス黒い血を流しながらやがて双子は灰になり、風で消えてしまった。今度こそこの世にチリひとつ、呪いひとつも残さず消えただろう。
「ユーリ、もうこれ以上はいけないわ。貴方の体に負担がかかる」
ヴァレリアさん‥‥‥
「うん‥‥‥」
「ヴァレリアさん、僕は許されたのかな?」
「ん?」
ユーリは天を見上げる。先生、僕は許されたでしょうか?
「うん、大丈夫よ。もう何も心配しないで」
ぎゅっと抱きしめてくれるヴァレリアさん‥‥‥あったかい、いい匂い。
「うぁぁぁん!!」
僕は再び泣いた、嗚咽のような慟哭が、シィンと静まる雪山にずっと響いていた。
双子ちゃんすぐ死んじゃう問題。
ニーズヘッグより弱いから仕方ないよね。
※ニーズヘッグはいまいち強キャラ感出せてないけど、そこらの悪魔より余程強いのです。なんでかなぁ?話し方がアレだからかな(笑)
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