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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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王子の複雑な気持ち

前回割と重めのアレクとユーリの過去を聞き、

ヴァレリアはたまらずユーリを抱きしめてしまう。

フレスベルグは果たして、ヴァナルカンドの居場所を知っているのだろうか?

 フレスベルグはユーリの話をひとしきり聞いて、やがて口を開いた。


『ふむ、そういう事情か』


 ユーリは気が抜けたのか眠っていた。


「フレスベルグ、お前は知っているのか? ヴァナルカンドの居場所を」


 レクターがフレスベルグに聞く。


『ああ、知っているよ、氷山に(はりつけ)にされている。多分その双子が最後に唱えた呪文のせいだな。恐らく禁忌の呪文を解放したのだろう、禁忌の呪文は、唱えた方の命と引き換えに発動することがある、俺は呪いの専門家ではないので詳しくは分からんが』


 呪いという言葉に反応してニーズヘッグがピクリと体を揺らした。


「そ、それで。ヴァナルカンドは、ユーリを助けてくれたヴァナルカンドは生きているの?」


 私はユーリを抱いたまま聞く。


『生きてはいる、俺も空から見ただけだからな。わざわざ降りて確認してはいないが、生命の鼓動を僅かに感じた』


「そうなの‥‥‥」


 私は泣き疲れて寝ているユーリに、なるべく負担はかけたくないと思った。どうしよう‥‥‥


「わかった、アレクには俺が伝えておく。邪魔して悪かったな。フレスベルグ」 


 レクターはチラッとヴィゾーの方を見る。


『はっはっは! 俺も面白いことが聞けて良かったよ! 面白いものも見れたしな!』


「帰るぞ、アレク。ヴァレリア」


「あ、は、はい」


 レクターは私に抱きついて眠るユーリを奪い、その首根っこを掴み、私を空いている方の腕で抱えて再び羽根を生やす。


「うわぁ!」


 レクターに肩を抱かれて私の体が浮いた。


「いつまでも甘やかして‥‥‥」

(確かにアレクの過去は壮絶だったが。あのようにヴァレリアの胸の中で眠る事はないだろう)


「えっ?」


「なんでもない」 


 レクター、不機嫌になってる?


「しっかり掴まってろよ、下を見ないように」


「う、うん」


「じゃあなフレスベルグ、邪魔したな」


 フレスベルグはレクターに一礼をした。ニーズヘッグもそうだけど、私の周りの悪魔達って、レクターを知ってるっぽいんだよね。何故かしら??


 レクター自身も謎が多いし‥‥‥


「そういえばレクター。私がレクターと呼べば、レクターの秘密を教えてくれるって言ってたわよね」


「うん? ああ、そういえばそうだな」


「そろそろ教えてくれてもいいと思うんですけど? それにその翼の秘密も‥‥‥まだ何も教えてくれてもいないのに、謎が増えすぎですよレクターは!」


「‥‥‥」


 レクターは私とユーリを見比べる。


「はぁ。教えてやろうと思っていたが、なんか今はそういう気分ではない」


「ええ、何故ですか? 痛っ!」


 ギリギリと私の腕を抱くレクターの手に力が入る。


「ヴァレリア、俺は意外と心が狭いようだ。特に、お前の事となると」


「???」


「ヴァレリア、すまん!」


 と言うと、レクターは私にいきなりキスをしてきた。


「えっ? ええっ!?」


 顔を赤くしたレクターが、それを誤魔化すように一気に下降した。


「ぎゃぁぁぁぁ!!」


 私はレクターの秘密とかどうでも良くなり、急降下する事の恐怖で頭が一杯になった!


「あばばばば!! ひぇぇぇ!! レグダー!!怒りますよ!」


 一方ニーズヘッグはどうしていたかと言うと、いつのまにか私の胸の中でスヤスヤと眠っていた。


 こいつ(レクター)、あとで絶対しばく!!


 酒場に戻る頃にはもう日が暮れていた。


 私はふらふらになりながら馬に身を任せてやっとという思いで酒場に着いた。


「お嬢様! どうなさったんですか?」


「お、エ、エリー。ちょっと疲れただけですわ。レ、王子が無茶をして‥‥‥」


 それを聞き、エリーが般若になった!


「王子ィ!? 貴方がついていながらどういう事ですか! これは!」


「あ、すまん。いや、つい。アレクがちょっと調子に乗ってたから、ついな?」


 テンパって意味がわからない事を言う王子。烈火のごとく怒るエリー。


「「つい」じゃないのですわー!! お嬢様に何かあったら困るのは王子だけじゃないのですから! それに一番お嬢様に危害を加えたくないのは王子でしょう! しっかりしてくださいよ!」


「すまん」


 クソッ! ヴァレリアの事となると、感情が先走ってしまう。それもこれもヴァレリアがずっと、アレクを抱いているからだ!


「嫉妬して、冷静でいられなかった。すまん」


 そう言うと、レクターは酒場にさっさと入って行ってしまった。その様子を見てエリーがため息混じりに口を開く。


「ハァ、お嬢様。また何かしたのですか?」


「いえ、私はただ、ユーリを介抱しただけですわ」


 ふーん、介抱しただけねぇ?


 ユーリの方をチラッと見るユーリは馬に(くく)りつけられて眠っており、レクターの馬と縄で繋がっていた。


 それを見てハァ、とエリーが再びため息を吐く。


(王子は根は優しいんでしょうけど、ヴァレリア様を前にすると、冷静さを維持できなくなるのでしょうね)


「えっ? 何か言いました? エリー」


 馬から降りて、飼い葉を食べさせているお嬢様が振り向く。その振り向いた無垢な表情に何度目かのため息を吐いてエリーは答える。


「いいえ何にも」



こだまでしょうか

いいえ、誰でも


ここまでお読みくださってありがとうございます。



この話が良いと思ったら広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!良くないと思ったら☆にZEROを付けて行ってくださいね。


ご拝読ありがとうございました。また読んでください。

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