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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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アレクとユーリの過去

フレスベルグを前にアレクが語り始めたのは、あまりにも悲しい過去だった。


※この物語はただのライトノベルであり

書いてある事はフィクションです

犯罪行為を推奨するものではありません。


 俺はあの悪魔のような双子に平穏な日々を、ある日突然奪われたんだ。


 リューフェロとリュツィフィに。


 俺は幼い頃に両親が事故に遭い、施設で育ったんだ。


 施設での生活は普通だった。とても寒かったが、普通に暖かいご飯も食べられるし、普通にふかふかの毛布で眠れた。

 幸い勉強が出来たのと、教員が優しかったので、特に生活に不自由はしなかった。


 平凡だけど、幸せだった。


 あの双子が入ってくるまでは‥‥‥


「リューフェロです」


「リュツィフィです」


 なんだあの双子‥‥‥なんかわからないけど嫌な感じがする。


 白すぎて血色の悪い肌

 ピアスだらけの顔

 銀色の髪

 ギラギラした紫の瞳

 それに‥‥‥

 二人とも左右違いで同じタトゥーが顔に走っている。


「みんな、この子たちももう施設の仲間です。仲良くしてくださいね」


 女の先生が優しく言う。


「「よろしく〜」」


 ニヤニヤと双子は下卑た笑いを浮かべる。その笑顔がとても嫌な感じだった。


 双子が施設に来て次の日。


 いつものように授業を受けに教室に行った俺が見た光景。そこには地獄が広がっていた。


「え、先生?」


 俺が見た時、すでに先生は事切れていた。


「先生! 先生!」


 俺はもう既に手遅れな事はわかっているのにそれでも必死に呼びかけた。


「先生、なんで、なんでこんな目に‥‥‥」


『それは俺たちが殺したからだよ〜』


 気が付いたら後ろにリューフェロとリュツィフィがいた。間髪入れずにリュツィフィが口を開く。


『元々俺たちの目的はお前だけだからなぁ、他は好きにしていいって言われてたし』


 へ? 何、何の事? 俺が目的って、なんだ?


『お〜、また来たよリュツィフィ』


「ユーリ逃げて! この二人は‥‥‥」


 リュツィフィが何か訴えようとしていた職員を真っ二つにした。


「ハァハァ、な、何!?」


 息が自然とあがってしまう。何が起こっているんだ?? 昨日までは、普通だったのに? 今日もそれは同じだと思ってた。


 次から次へと悲鳴をあげて逃げて行く教員や職員の断末魔が、耳鳴りのように響く。


『あははは、皆殺しだ!』


 あっという間に血まみれになる廊下。やがて悲鳴は収まり、静寂が訪れた。


「ユーリ、逃げて! あの子たちは悪魔だわ‥‥‥! ヴァナルカンドの‥‥‥ところへ」


 俺を呼ぶ声にハッとして足元を見ると、息も絶え絶えの職員が俺に鍵を渡してきた。


「これでヴァナルカンドを‥‥‥解放して、大丈夫‥‥‥ユーリなら、できる」


 ボキッ!


 俺が鍵を受け取った時、リュツィフィが思い切り蹴って職員の首が俺の目の前で折れた。


『あははは! ほんとに人間って脆いなぁ。んで、お前は? お前はちょっとは楽しませてくれるよなぁ?? ユーリィィ??』


 そう言って振り向いたリュツィフィ。ニタニタと笑うその顔が酷く不気味で。


 俺は叫びもせず、ただ走った!


 何が起こっているんだ!? 今のは現実なのか?! 目の前で起こった事がただただ信じられ無くて、俺は顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながらヴァナルカンドの方へ急いだ。


 ヴァナルカンドは厳重な鍵付きの檻に入れられて、施設の大人の全員で何故か飼われていた狼だった。


 暴れる心配はないがなんせ体が大きいので、ヴァナルカンド専用の部屋には一応鍵がかけられている。鍵はいつも教師や職員が開けていたけど‥‥‥


「ユーリなら、できる」


 職員はそう言っていたけど‥‥‥うう、あの職員の恐怖を貼り付けた顔が脳裏に浮かぶ。


「うう、何でぼくがこんな目に! 昨日までは平穏だったのに!」


 昨日までは、本当に普通に生活していて。先生も、笑顔で。職員さんも。


 俺は先程の事を思い出していた。血まみれの廊下、叫ぶ職員‥‥‥


「オエエエエ!!」


 ふぅ、ふーッ!ふー!


「ウゥッ、あいつらが、アイツらが、」


 アイツラガ、コワシタ‥‥‥


「僕の、俺の、平凡だけど、幸せだった日々。人。先生。職員たち‥‥‥!!」


 あいつらが、奪った!


「ウッ、ウワァァァーーーーッ!!!!」


 俺は叫んだ! と同時に、なんとも言えない感情が湧き上がってきた!


「ハハハ! アッハッハッはーーーー!!!! 惨めなユーリ! 無力なユーリ!!」


 馬鹿な僕!!


「何もできない! いくら頭が良くたって! いくら魔法を覚えたって!! お前は何もできない!!」


 馬鹿な俺!!


「ワッハッハッ!! アハハハハ!! アァァァァァーーーッ!!」


 お前には誰も守れない!僕には誰も守れない!俺には誰も守れない!!!!


 俺は気付いたらヴァナルカンドの部屋の前に居た。


「アハハハ、ハァハァ!」


 俺はほとんど狂っていた。狂気のままに鍵を開ける!


 頬を液体が凍って伝う。


 思えばこの時から、いつのまにか(アレク)という人格が形成されてしまったのだ。


 扉を開けた瞬間、青い光が舞って吹雪が俺の身を包んだ。


『誰だ? ユーリか?』


 吹雪が引いて上を見ると、白い毛の大きな狼が立っていた。

 白い毛に覆われた青い瞳! こんな狼は見たことない。いや、そんな事より何故? こいつは俺の名前を知っている?


『ユーリが来たという事は、奴が来たのか?』


 奴? 奴って誰だ? あの双子??


『あははは! こいつ、ヴァナルカンドじゃねぇか!!』


『ほんとだ! 初めて見た、デカいなぁ〜!』


 いつのまに来たのか、双子が俺の背後に居た。


『お前ら、奴の手先か?』


 ヴァナルカンドが双子に聞く。奴って誰だよ、双子のことじゃないのか?


『あははは! お前は、ちょっとは楽しませてくれそうだなぁ!?』


『グォォォォォーーーー!!』


 その瞬間、ヴァナルカンドが咆哮(ほうこう)した。その凍てつくような咆哮に、俺は完全に固まってしまった。殺気とかいうレベルじゃない、触れたら殺される!俺は情け無い事にその場にへたり込んでしまった。


 あはは、また、まただ!惨めなユーリ、惨めな僕。


『おおお、久しぶりにゾクっときたぞ! リューフェロ見ろよ俺のこの鳥肌!』


『何だそりゃ! ダッセー!!』


 リュツィフィの鳥肌を見てゲラゲラ笑いながらリューフェロが言う。


『ヴァナルカンド! 勝負だ! 俺たちが勝ったらユーリはもらう!』


 な‥‥‥なんだよ、なんなんだよ! こいつら何が目的なんだ?! 俺は普通に生きて来たただの人間だぞ‥‥‥ユーリはもらう?? 意味がわからない、怖い!


『ユーリ心配するな。俺が守ってやる。主との約束だ』


「‥‥‥」


 約束って何だ? 何の事だ? 俺は恐怖で声が出せない。ただ目の前で起こっている三人の戦いを見ているしかなかった。


 無力だ、僕はあまりにも無力‥‥‥無様だ、俺はあまりにも無様‥‥‥


『『ああああああ!!』』


 双子は死んだ。命が尽きる前にヴァナルカンドに何か呪文をかけていた。呪文をかけた途端に、双子は死んだんだ。



 俺はそこで気を失って‥‥‥


 気付いたらヴァナルカンドも、双子も、職員もいない病院のベッドで目覚めた。病院ではよく夢を見た。


「何度も(うな)された。夢にあの職員の潰れた顔が、双子に弄ばれた優しい教師の姿が。脳裏に浮かんでは、消えて‥‥‥」


 誰が運んでくれたのかはわからないけど、病院の人達が優しかったのは覚えている。でも俺は病院を抜け出した!

 怖かったのだ。俺がいる事で、またあの悪魔のような双子が来て、俺の平穏を切り裂きに来るのではないかと!

 親切にしてくれる人達に危害を加えるんじゃないかと‥‥‥


「それ以来、ずっと俺は旅を続けてきた。ヴァナルカンドを探して‥‥‥」


 あの日から、俺は人に対する罪悪感と良心の呵責(かしゃく)で一杯だった。いつも恐怖と不安しかない人生。俺がいる事で、周りを傷つけるのではないかと。いつも不安で、恐怖で押し潰されそうな日々を過ごして、そして。不安定なままヴァレリアに出会って‥‥‥


「ユーリ‥‥‥もういい、もういいよ」


 ヴァレリアが、ぎゅっと抱きしめてきた。


 あ、ヴァレリアさんの、胸、柔らかくていい匂いだな‥‥‥


「うううッ、ふっ‥‥‥」


 俺はヴァレリアの腕の中で泣き続けた。ずっと泣いていなかったからかな、まるで()き止めていたものが決壊したように泣きじゃくった。


 ヴァレリアの腕の中。安心する‥‥‥


「そんな壮絶な過去を過ごしてきたなんて‥‥‥ユーリ、辛かったね」


 ヴァレリアさんが僕を抱いて子守唄を歌ってる。


 俺は、僕は‥‥‥安心して、いいのかな? 今だけなら、許して‥‥‥


 許して‥‥‥先生。今だけは安心することを許してください。



今回少し重かったですね( ;∀;)


大丈夫です!必ず解決してみせますよ!(何を?)


ここまでお読みくださってありがとうございます。

読者様、いつも有難うございます。

励みになります。



この話が良いと思ったら広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!良くないと思ったら☆にZEROを付けて行ってくださいね!


ご拝読ありがとうございました。また読んでくださいね。

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