アレクの焦り
前回、久しぶりにアレクになったユーリは、喜び勇んで酒場を飛び出したのだった。
店外に出たアレクはヴァレリアと王子がいるのに気がついた。
「ヴァレリア!」
ぎゅー!!
「わぁ! ユーリ? アレク?」
アレクは一緒にいた王子を突き飛ばしてヴァレリアを抱きしめる!
「俺だ、アレクだ! 久しぶり」
「う、うん。アレクは、久しぶりだったかな? ははは」
アレクの抱擁にジタジタしながらもヴァレリアは答える。
「ヴァレリア、一緒にフレスベルグのところに行こう? お前とニーズヘッグなら、なんとかあいつの話が聞けるかもしれない」
「あいつって、フレスベルグの事?」
「そうだよ!」
グイッと、ヴァレリアの手を引く。イタッ、とヴァレリアは声を上げた。
「アレク、アレク、痛いわ」
(なっ、アレクのやつ‥‥‥)
それを見て王子がアレクの腕を掴む。
「よせアレク、ヴァレリアの意思も聞かず自分一人で突っ走ろうとするんじゃない」
「はぁ?! 王子様は引っ込んでろよ! そこの茶屋でゆっくり紅茶でも飲んでろ。俺ら二人で行くから」
「あ、アレク‥‥‥うわぁ!」
アレクはヴァレリアの言葉に耳を貸さず、ヴァレリアを肩に担ぎ、馬にまたがろうとする。
「うわー!!」
ズルリとヴァレリアが落ちそうになった!
「危ない、ヴァレリア!」
「レクター!!」
王子がひょいとヴァレリアを抱きとめる。
ホッとヴァレリアと王子は息をつく。
「ありがとうレクター」
高所恐怖症で怖かったろうに、王子を見て無理に微笑むヴァレリアを見て、怒りが込み上げる!
王子がキッとアレクの方を睨む!
「アレク! お前ちょっと無茶苦茶すぎじゃないか??」
「早くしないと、あいつに会わないと‥‥‥ブツブツ」
アレクの目にはもう二人の方は見えておらず、困惑する二人を他所にアレクは落ち着かない様子で口を開いた。
「ヴァナルカンドの居場所を、フレスベルグが知ってるかもしれないんだ! ヴァレリアお願いだ。ついてきてくれよ!」
アレクは必死になってヴァレリアに追い縋った。
(ヴァナルカンド? どこかで聞いた気がする)
レクターはアレクが放った言葉に首を捻る。
「ヴァナルカンド? アレク、一体何のことを言っているの?」
アレクはヴァレリアの質問には答えず震えていた。頼む、頼む、と懇願しながら
その様子にヴァレリアと王子は仕方ないという感じで肩を落とす。
「わかったわ、アレク。ついていきますから、落ち着いて?ねぇ」
「俺もついていく!!」
いきなり大声を出す王子に吃驚するヴァレリア。
「二人きりにさせたくないからな」
そう囁くと、王子はヴァレリアの肩を自分の方に寄せた。
レクター‥‥‥
「うん、それでもいい‥‥‥ヴァレリアごめん。俺、焦ってしまってた」
「いいのよ」
王子とヴァレリアの目が合う。
(ありがとう、レクター)
ヴァレリアは小声で礼を言った。
「いいんだ。それにしてもアレクのあの状態は、何なんだろうな? 少し気になる」
「私もですわ、妙に落ち着きがないように感じます、アレクになったのが久しぶりだからかも‥‥‥」
それにヴァナルカンド? とは一体何のことなのかしら?
アレク、ヴァナルカンドってなんだよ(困惑)
すみません、今回も短かったですね。
話の流れ的に、ぶった切ってしまいました。
ここまでお読みくださってありがとうございます。