無防備なヴァレリア様!
アナスタシア(ヴァレリア)様は久しぶりに悪夢を見ずに済んだ
一方本物のヴァレリア(アナスタシア)様は久しぶりに自室のベッドでぐっすりと寝ていたのだった
翌朝‥‥‥
ヴァレリアは久しぶりに自室のベッドで目覚めた。うーん、宿屋の硬いベッドもいいけど、やはり自室のフカフカのベッドも捨てがたいですわ〜!
「ん?」
ニーズヘッグがまだ寝ている。寝顔が可愛いわ、と思わず頬擦りしようとすると、そこへレクターがヌッと顔を出した。
「うわぁぁぁ!!」
私は思わず自分の顔を枕で隠す!
「お嬢様〜? どうかされましたか?」
「あっ、エリー! レ、王子がいつのまにか私の部屋に!」
「ああ、それは私が頼んだのですよ。ニーズヘッグがあんまりにも眠っているので、深夜に暴れるのではないかと心配で」
大丈夫ですよ! ニーズヘッグは起きなかったです!
いや、そういう事ではなくて‥‥‥
「おはようヴァレリア。よく寝ていたな、昨日はありがとう」
「お、おはようございます?」
私は訳が分からなくて、エリーに何故ここに王子が?というジェスチャーをした。
エリーはクスクスと笑いながら
「ごめんなさい、まだお嬢様が心配で私の独断で王子に来ていただいたんです。それに王子もヴァレリア様の事が気になっていた様子だったので」
「エリー」
王子がエリーを制す。
「おっとお! そういえば私はまだ朝食を運んでいなかったのでしたわ。すぐに持ってきます」
バタバタとエリーが出ていく足音を聞きながらレクターが口を開く。
「はぁ、エリーには敵わんなぁ」
「レクター。エリーが朝食を運んで来る間に私は着替えてきますから、ニーズヘッグの様子を見ていて下さいね」
「ああ」
それにしてもニーズヘッグのやつ良く寝てるな。そう思ってレクターが顔を近づけた時、ニーズヘッグが飛び起きた!
『ベーッ! 騙されてやんの!! どうせお前が来ると思って寝たフリしてたに決まってんだろ!』
そう言いながらニーズヘッグはレクターの顔を引っ掻こうとした。
「おっと」
ニーズヘッグの攻撃を難なく避けるレクター。
『お前お前お前! 完璧すぎて生意気なんだよ! 見てろ!』
そう言ってニーズヘッグはヴァレリアの衣装部屋に向かった。
ニーズヘッグとヴァレリアの会話が聞こえる。
「あらニーズ、起きたの? ずいぶん寝てたじゃない」
『びぇーん、ヴァレリア聞いてくれよ! 王子が俺様の事をいじめるんだ!』
「まあ、またニーズが何かしたんじゃないの??」
『俺様はこんなに小さくなっちまったし、ヴァレリアに魔力もほとんど取られちまったんだぞ! 今の俺様に何ができるってんだ』
ガタガタッ!
「ちょっと待って! まだ私着替えてないんですから!」
『ヤダーー!! お前のおっぱいを貸してくれなきゃヤダーー!!』
まるで子供のように騒いで暴れるニーズヘッグ。
「はぁ‥‥‥何をやっているんだアイツは」
キィィィィン‥‥‥!
レクターの目が金色に変わる。
『ストゥルツイ!」
レクターが何かを詠唱した!
「キャァ! ニーズ! どうしたの!?」
バタァン!
「レクター! 大変! ニーズヘッグが突然気絶しちゃったの!」
「うわ! ヴァレリア! 着替え中に出てくるな!!」
ヴァレリアは布を体に巻きつけたような格好で慌てて出てきた!
「わかったわかった! そいつを俺に渡せ! なんとかするから、お前は早く着替えてこい!」
レクターは出来るだけヴァレリアを見ないようにしながらニーズヘッグを受け取り、ヴァレリアを衣装部屋に戻した。
「はぁ、はあ、なんてやつなんだ。ほんとに危機感がないなヴァレリアは」
そこへエリーが朝食を運んで来た。
「王子? どうなされましたか?」
レクターはハァ‥‥‥とため息を吐き、衣装部屋の扉を背にズルズルとその場に崩れ落ちた。
「エリー、ヴァレリアは何故あんなに危機感がないのだ? 朝から非常に疲れた」
エリーはああ、と思い当たるような仕草をした。
「王子、私が離席していた間に何かあったのですか?」
レクターはエリーに事の経緯を説明した。エリーはそれを聞いて今まで溜まっていたものを吐き出すように言った。
「それはもう、お嬢様は王子に心を許しているからですわ。お嬢様は気付いていないようですけど、」
「? それはどういう事だ?」
「それはご自分でお考えください、全く二人とも鈍感でいらっしゃる‥‥‥」
「えっ」
「だから私も王子のお嬢様の部屋への入室も許可したのですけど、お二人とも、私のお膳立てにも全く気付かなくてこちらがブツブツ‥‥‥」
その時着替えを終えたヴァレリアが衣装部屋から出てきた。
「レク、王子、ニーズの様子はどうですか?」
「それからお嬢様は、もっと王子を信用すべきだと私は思いますよ!」
えっ? とヴァレリアはポカンと口を開けてエリーを見た。
「では私はこれで失礼します。馬の整備をしてきますのでね、お二人はどうぞごゆっくり朝食を食べててくださいね」
エリーはそう言うと、部屋を後にした。
「えっ‥‥‥エリー、少し怒ってた? 何故かしら」
「うーむ‥‥‥」
王子はテーブルに腰掛けて頭を抱えた。
二人とも無自覚というのがもうね。好きだー!!(大声)
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