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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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王子の嫉妬

美しくなって皆の前に登場したアナスタシア(ヴァレリア)

持ち前のポテンシャルの高さで王子からの無茶振りのダンスを見事に披露した。

目立つ事はしたくないアナスタシア(ヴァレリア)だったが‥‥‥

「ヴァレリア、こっちへ」


「‥‥‥うわぁ!」


 レクターは軽々と私を抱き上げた、再び(どよ)めく人々。


 こいつ(レクター)、あとで絶対しばく!!


 マクシミリアン公に許可を得て、バルコニーに出て二人きりにさせてもらう。


 バルコニーに出て、そっとヴァレリアを下ろす。


「腹が減っているのだろう? シリウスに何か持って来させるから、しばらくここで待ってて」


 レクター、あの噂好きのお嬢様方から助けてくれたの?


「あ、ありがとうございます」


「いや、元々は俺のせいなんだ」


 言われてハッと気付く。そうですわ、元々はレクターのせいだった! 付いてくるだけでいいと言ったのに、人々の目の前でダンス、挙句に私を抱き上げてまた噂好きのお嬢様に格好のネタを提供して‥‥‥


「思い出したら腹が立ってきましたわー!!!!怒」


 ドスドスと割と本気でレクターの胸を殴っていたら、口をポカンと開けて立っているシリウスと目が合った。


「あ‥‥‥」


 私は思わず立ち上がって話し掛ける。


「シリウス、お久しぶりです。もうここには来ないつもりだったのですが‥‥‥」


 シリウスはしばらく呆気に取られていたがやがて口を開いた。


「いえ、最初見た時は誰かわかりませんでした。ヴァレリア様、すごく変わりましたね。今日は王子の客人としていらっしゃったのでしょう? だったらいつでも歓迎しますよ」


 極めて冷静に答えたが、シリウスの内心はバクバクだった。


(ええ〜この方がヴァレリア様?! 婚約者候補の時とは全然違う‥‥‥なんだこの夢見るような瞳と、匂い立つような色気は! ハァ〜ドキドキする)


「なんだこの夢見るような瞳と匂い立つような色気は!ハァ〜ドキドキする」


(ではお食事を持って来ましたのでごゆっくりどうぞ)


「おいシリウス、心の声と逆になっているんだが!?」


 しまった!


「しまった! では私はこれで!」


 シリウスは光の速さで逃げていった。


「? シリウスは何故あんなに慌てていたのかしら? まだ食事を届けてくれるの?」


「‥‥‥知らん」


 ヴァレリアはシリウスが運んで来てくれた美味しい城の料理に舌鼓(したつづみ)を打った。


「美味し〜! 幸せですわ〜」


 ふと王子の方を見ると、機嫌が悪そうに不貞腐れているように見えた。


「レクター? 何かあったんですか? 疲れましたか?」


「‥‥‥何でもない、ただ少し」


 レクターがチラッと私の方を見た。


「甘いもの食べたら疲れが取れますよ。ほら、果物を」


 私は体の調子が悪い時は、いつもすり潰した果物を食べたら元気になったことを思い出した。


「レクター、何が食べられる?」


 果物が乗った皿をレクターに持って行く。


「ヴァレリア‥‥‥」


「わっぷ!」


 レクターが突然抱きしめてきたのでぐらっと私の体が傾いた。


「レクター? どうしたんです?」


「ヴァレリア、すまん。少しの間、こうさせてくれ」


 レクターは私を抱きしめる腕に力を込める。


 ぎゅーっ!


「痛い痛い痛い! レクターやめてください! ただでさえ私コルセットが久しぶりで」


「ヴァレリア」


「えっ?」


「お前、を連れてくるのでは、なかった‥‥‥お前を見る男達の目が許せない」


 シリウスも言っていた。ヴァレリアは美しくなっただけでなく、どことなく色香を感じられる。男達の注目を集めて。まるで、俺のヴァレリアが汚されたみたいな。


 いや、これは俺のエゴ? それとも嫉妬‥‥‥? 嫉妬など、俺には縁遠い話だと思っていたのに。こんなのは初めてだ。嫉妬がこんなに、心を掻き乱すものだったとは。


「男達って‥‥‥レクター何馬鹿な事言ってるんですか? 私を助けてくれるのはレクターしかいませんよ」


「えっ」


「えっ」


 あれ? 私変な事言ってないよね? 王子はレクターで、男で、いつも私を助けてくれて。いつも私が一番側にいて欲しい時に、いつも側にいてくれて‥‥‥


 え‥‥‥


 そう考えると、まるで。私にとってレクターは、特別な存在みたいな。


「‥‥‥果物、もらおうかな」


「う、うん‥‥‥」


 レクターは皿に盛られた果物を一つ取った。


「甘い」


「お、美味しい?」


「うん、美味い」


 二人はお互い見つめ合いながら黙り込む。


 ヴァレリア‥‥‥ありがとう。


(私を助けてくれるのはレクターしかいませんよ)


 お前の言葉に、救われた。先程のドロドロとした嫌な気持ちが(ほど)けていく。


「すまん。ずっとこうしててもいいか」


「うん」


 レクターに抱きしめられて、レクターの膝に乗って、私は自分の体を預けていた。暖かい。心地よい、嫌ではない。むしろずっとこうしていたい。


 ふとレクターの顔を見た。それに気付いたレクターが私を見て微笑んだ。


 私も釣られて微笑む。


 私は、レクターの事が好きなのかな?今はわからない。でも、レクターには笑っていてほしいな‥‥‥


ヴァレリア様のズレ具合が絶妙なんよ。

王子とヴァレリア様、これもう付き合ってますよね?


次回もまだ少しマクシミリアン公の話が続きます。


ここまでお読みくださってありがとうございます。

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