無自覚な二人
前回アナスタシア(ヴァレリア)様は持ち前の精神力でニーズヘッグと王子を驚かせた。
結局、ケルベロスはユーリが受け取る事になった。
結局ユーリはケルベロスをもらい、連れて行く事になった。
ケルベロスはすぐにユーリに懐き、ぐるぐると言ってユーリにすりすりしている。すごい! ユーリって動物使いなのかしら。
「なんか俺らのパーティー、色んな奴がいるな」
「私はもう諦めましたよ。もう誰が仲間になろうが驚きませんわ」
エリーが遠い目をして言った。
「はははは! エリーはいつも誰かのフォローに回って大変だなぁ! 安心しろ、俺はお前の味方だ、なんかあったら俺に言え」
「セト‥‥‥ありがとう」
ああー久しぶりにセトとエリーのイチャイチャを見る事ができましたわ! 相変わらず尊い!!
ヴァレリアは胸にニーズヘッグを挟んだまま拝む。
『ぐへ! ヴァレリア! 俺様を挟んだまま拝むな! また俺様を潰す気か!?』
ニーズヘッグの言葉もどこ吹く風で、ヴァレリアは涼しい顔をしている。
その様子を見て王子がまたイライラしていた。
クソッ、あいつを小さくするのではなかった! いやでもあいつがヴァレリアの中にいるとヴァレリアが苦しむ。それはもっと嫌だ‥‥‥
ヴァレリアがニーズヘッグの力を「イムブレカーティオ」によって解放した事は、ニーズヘッグにとって都合のいい事だった。
ニーズヘッグがヴァレリアの中にいると悪魔の力が増加し、悪魔としての記憶も宿主の体に影響を与えるので、この先ヴァレリアはずっとニーズヘッグに苦しめられるのだ。
だが俺ができる事は、せいぜいニーズヘッグを弱体化し、小さくする事くらいだ。悪魔との契約など、初めから無き物にする事ができれば全て解決するのに‥‥‥
(‥‥‥。アイツに頼んでみるか? しかし‥‥‥)
ヴァレリアの方を見ると、すっかりニーズヘッグを支配下に置いているように見える‥‥‥何よりヴァレリアがニーズヘッグを可愛いがっている。最初は悪魔など嫌がっていたのに。
不思議な女だ‥‥‥アレクみたいな変わり者も、害をなしていたジューダの事も、悪魔ニーズヘッグでさえも。受け入れてその心を掌握してしまう。しかも当の本人は無意識のうちに。
俺の心も‥‥‥? ヴァレリアに惹かれている? ヴァレリアが‥‥‥
「うーむ、もう少し様子を見るか‥‥‥」
王子は独り言ちた。
そこへセトが依頼書を持ってやってきた。
「今回の依頼だが、もう夜だからな。明日やろう。大丈夫今回の依頼は先日より比べたら俺とエリーだけで充分クリアできるさ」
一行はエリーが見つけた宿屋に宿泊することになったが。
「ちょっとなんで王子が私と一緒の部屋なんですの?」
「私がいるからいいじゃないですか‥‥‥それに王子はお嬢様を守るためにいるのですよ。お嬢様の暴走を止められるのは王子しかいないのですから」
エリーがため息を吐きながら言う。
「いつもは私が止める立場なのに、お嬢様は王子がお嫌いなのですか?」
「えっ? えーと。嫌いではありませんけど、秘密が多すぎて信用できないのです」
「ユーリは知り合ったばかりで一緒の部屋で寝ようとしたのに? 変なお嬢様ですねぇ」
あれ? 確かにユーリの事は信用できるのに、何故王子の事は信用できないのかしら? 秘密を話してくれないから? でも何故? 私は何故王子の秘密をこんなにも知りたいのかしら?
んー?? とヴァレリアは首を捻る。
「まぁまぁ、あんまり深く考えずに。寝るぞヴァレリア。来い」
そう言うと王子はベッドにヴァレリアの腕を引き、包み込むように抱きしめ、寝始めた。
「ちょっと、まだ私は考え中で‥‥‥」
『そうだぞ王子、お前と添い寝など死んでも嫌だ‥‥‥』
あれれ? 王子の腕、安心する‥‥‥
「スヤァ」
ヴァレリアはニーズヘッグと共に眠りについてしまった。
クスクスとエリーが笑う。
「どうせすぐ寝てしまうのに、王子の力はすごいですね。ありがとうございました」
エリーは敢えて王子の力について聞く気はないようだ。
(ニーズヘッグも寝たし、これで夜中に起きて暴れるような心配はないだろう。でも心配だからもう少しこのままでいるよ)
「柔らかくていい匂いがするし、抱き心地は最高だし、もう少しこのままでいるよ」
「心の声と逆になってますわよ王子?(ニッコリ)」
しまった!
「しまった!」
「お嬢様は私が守りますわ! 王子様とて結婚するまでは例外ではないんです! おどきなさい!」
エリーはまたデッキブラシを振り上げた! エリーそのデッキブラシはどこで手に入れたんだ!?
「すまん!」
と言って王子は窓から逃げてしまった。
やれやれ、と文句を言いながらエリーはヴァレリアの寝顔を見た。
ヴァレリアは幸せそうな顔をして寝ている。
「お嬢様は、王子の事が好きなんですね‥‥‥」
お嬢様はお気付きになってないでしょうけど。
無自覚な両思いの二人に周りが振り回されるパターン好きなんですよね(難儀な性癖)
ここまでお読みくださってありがとうございます。
次回は少しバトルシーンあります。
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ご拝読ありがとうございました。また読んでください。