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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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ヴァレリアの精神力

街のサーカスを観てなんだかんだで大満足したアナスタシア(ヴァレリア)

ニーズヘッグがいる事がエリーにバレてしまうが‥‥‥

 あーだこーだ言いながらも私達はサーカスに大満足だった。


 ユーリは結局我慢が出来ず、団長と直接交渉に行ってしまった。


「でもあの大きさなら何とかなるんじゃないかしら?」


「そうだな、セトはなんだかんだで心が広いからな」


 ヴァレリアはそう言った王子の顔をびっくりしたように見た。


「王子〜! ただの自己中我儘王子かと思っていましたが、ちゃんと仲間のこと見ていたんですね! 嬉しいです」


「ヴァレリア、お前は俺を何だと思っていたのだ?」


「ふふっ! 嬉しいです」


 そう言ってヴァレリアは王子に腕を組んで擦り寄る。


 イライラムラムラ‥‥‥ 


 王子は頭を抱えた。


(コイツ、本当に俺が側にいないと俺以外にもこういう事しそうだな。エリーが苦労するわけだ)


「ヴァレリア、お前こういう事するのは俺だけにしとけよ。人との距離感がおかしいからなお前は」


「? 今日の王子は本当にエリーと同じような事を言うんですね」


『そりゃそうだろうが、お前は何もかも鈍いんだよ。まあ何かあったら俺様が守ってやるから安心しろ』


 ニーズヘッグがヴァレリアの胸の谷間でふんぞり返って言った。


「お前まだそこにいたのかよ! 退()けよ!」


 王子が怒気を(はら)んで言う。


『おほーあのいつも冷静な王子様が珍しく怒っていらっしゃる』


 ニーズヘッグはヴァレリアの胸の中でくつろぎハナホジしながら言う。


「‥‥‥お前、一度死ぬか?」


 そう言った途端に殺意のオーラが王子の身体を取り巻く。


『ひぇぇー! つい調子に乗りました嘘です許してください!!』


「あらら、隠れちゃった」


 ニーズヘッグが尻尾だけ出して胸の谷間に潜ってしまった。


 団長との直接交渉でOKを貰って来たユーリが笑いながら言った。


「ははは、悪魔が恐れるって! 王子は一体何者なんですか?」


 ユーリがそう聞くと、王子は困ったように首の後ろを掻き、黙ってしまった。


「無駄ですよ、ユーリ。この王子は秘密、謎。ミステリー作家もびっくりの全力自己中我儘謎男なのですから!」


 ヴァレリアは怒ったようにぷいと顔を逸らして言う。


「うーむ、俺にも色々事情があるんだ。いつか話すよ、時が来たら‥‥‥」


(今はまだ、話せない。ヴァレリアを怖がらせたくないし。何より俺が心から信じきれていない! 王家の秘密を、そう易々(やすやす)と教えるわけにはいかない。すまんヴァレリア。俺が臆病なばっかりに‥‥‥)


「時ィ? 時っていつですか?!」


 ヴァレリアと王子が(一方的にヴァレリアが)またバチバチやっている。


「ははは、まぁ無理に聞きませんよ。人にはそれぞれ事情がありますから‥‥‥」


 ユーリは、ユーリでいる時は本当に優しい‥‥‥


「ユーリ、ありがと‥‥‥」


 そう言ってユーリを抱きしめようとしたところを王子に止められた。


「そういうところだよ、ヴァレリア」


「なぁにがそういうところですか? 王子こそ、肝心なところを一つも言わないじゃないですか!? 王子なんかこうしてやるー!」


 ヴァレリアは王子の胸をポカポカ殴った。


「ヴァレリア! やめろやめろ! 降参だ、参った」


『やめろ〜!! ヴァレリアまた俺様が潰れっちまう!』


 その一連のやりとりにユーリは耐え切れずに爆笑してしまった。


「そういえばユーリ、ケルベロスはどうなったの?」


 ヴァレリアは王子を殴りながら思い出したように言う。


「まだ夜の部が残ってるから、それが終わったら良いよ。て言われたので、終わるまで待ちます」


「そうなのね」


 するとエリーの声が聞こえてきた。


「あっここに居たのですね! 探しましたよ」


「エリー!」


 私が手を振って話しかけるとエリーの顔が真っ青になり、体を震わせながら口を開いた。


「お嬢様、なんですかそのお嬢様の胸の中でうごめく物は‥‥‥」


 そう言われてふと自分の胸に目を()ると、ニーズヘッグがふんぞり返っていた。


「ああ、この子は私に取り憑いていた悪魔よ。ニーズヘッグっていうの、よろしくね!」


『おう、本来ならもっとデカイんだけどな』


 チィーッス、みたいなノリでニーズヘッグはエリーに答えた。


「ちょ、え? 取り憑いてた? えっ、えっ? ヴァレリア様に取り憑いていた悪魔? この子が?」


 じゃああのイムなんちゃらとかいう禍々しい毒の炎もこの子の力で?


「お嬢様から退()きなさい!!」


『うわー!! やめろ! デッキブラシで叩くな!』


 エリーはその辺で拾ったデッキブラシでニーズヘッグを叩き始めた。ニーズヘッグはたまらず飛び出した。


「エリーやめて! この子は今力が弱ってるから魔力はほとんどないの」


「ハァハァ、本当ですか?」


 エリーが小さなニーズヘッグから私を守るようにして立ちながら言った。


「うん、ほんとほんと。今は大丈夫だから、あの魔法も、当面の間使うことを王子に禁止されたし」


『そうだぞ、今の俺様は魔力がほぼないんだ! 見ろこの哀れな小さな体を』


「ニーズ‥‥‥可哀想に」


 私はニーズヘッグをぎゅっと抱きしめた。ニーズヘッグはまんざらでもないようだ。


「あー‥‥‥」


 エリーはチラッと王子とユーリの方を向いた。


「で? お前らはお嬢様にこの変な生き物が取り憑いててもいいと? 王子、それだけの力がありながら何故お嬢様から悪魔を取り除いて差し上げないのですか?」


 ん?とエリーがニコニコと微笑みながら二人に近づく。二人は咄嗟にエリーに背を向けてコソコソと話す。


(ちょっと、王子があの悪魔の事知ってるんですよね? なんとか言って下さいよ。エリーが言うように消せないんですか?)


(無理だよ、悪魔は一度でも宿主を決めたら永遠に離れないんだ。そういう契約になってる! いくら王子でも契約は変えられない)


 ユーリと王子がコソコソとやっているところへ、エリーがデッキブラシを持って怒りのオーラを纏って立っていた。


「聞こえてますわよ」


 デッキブラシを持って佇む怒りのエリーにヴァレリアが割って入る。


「エリー落ち着いて、言葉遣いが壊れてますわ。私は王子にこうして分離してもらっただけで随分楽になりました。確かに悪魔が取り憑いているのは嫌ですけど‥‥‥ニーズヘッグも、何か可愛いし。離れる方法がないのなら、割り切るしかないですわ」


「お嬢様‥‥‥なんておいたわしい。グスッ」


「心配してくれてありがとうエリー。でも私は平気ですわ」


 私は心配するエリーを抱きしめる。悪魔に取り憑かれる事など、不健康な体よりはマシです。私の胆力(たんりょく)を見くびらないで欲しいわ、ニーズヘッグ!


 私はニーズヘッグに振り向いて、ウインクをした。


『なっ、なんだよ! 俺様は悪魔だぞ!』


「‥‥‥まぁ力が弱くなってるのならいいでしょう。そのかわりニーズヘッグ、お嬢様に何かあった場合は即座に私がお仕置きしますわよ!」


『なんだとぉ!? たかが人間風情が生意気な口を利くんじゃない! 俺様が本気を出せばお前など‥‥‥』


 言いかけたところでヴァレリアが睨んでいた。


『なァんて思ったりして‥‥‥』


 ヴァレリアの謎の迫力に押されてニーズヘッグは途端に小声になってしまった。


「ほう、これはもしかして! ヴァレリアはニーズヘッグを逆に支配しつつあるのかもしれないな!」


 王子が目を見開いて感心したように言う。ニーズヘッグは慌てて訂正する。


『お、俺様は悪魔だぞー! 人間に支配されるなど断じて認めん!!』


 とか言いつつヴァレリアの胸にニーズヘッグは戻ってしまった。



アナスタシア(ヴァレリア)の精神力がいかに強いか、

という事を書きたかったんだけどなんか長くなってしまった


ここまでお読みくださってありがとうございます。



この話が良いと思ったら広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!良くないと思ったら☆にZEROを付けて行ってくださいね!


ご拝読ありがとうございました。また読んでください。

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