弔い
前回アナスタシア(ヴァレリア)の代わりに村長の話を聞いた王子。
そのあまりの自己中な物言いに、ついに王子はブチ切れ、村長の首を刎ねるのだった。
パチパチ、パチパチ、炎が上がる音が聞こえる。
アマーリエ達村民が、村長の首と体を焼いているのだ。
村民は骨を骨ツボに入れると、裏山の二人に見せに行くと行ってしまった。
「村長嫌われすぎですね‥‥‥」
燃え尽きて消し炭になったそこを見てエリーが呟く。
「ヴァレリアは?」
王子の問いにエリーは答える。
「眠っていますわ、王子。ヴァレリア様を助けて下さってありがとうございました。よく分からないですけど、ヴァレリア様の有り余る魔力を王子の力で落ち着かせているのでしょう?」
エリーが意味ありげにニヤリと笑う。王子は困ったように頬をかく。
「エリーお前はあのヴァレリアをどう思う? 例えばもし、何かに」
エリーは王子の言葉を手で制して答える。
「ヴァレリア様の中に何がいたとしても、ヴァレリア様はヴァレリア様ですわ」
「そうか」
王子は安心したように微笑んだ。
と、そこへアマーリエがやってきた。
「ありがとうございます。村長を殺してくれて」
エリーは思いついたように言った。
「あ、私はお水をお嬢様に持って行きますわ」
エリーが去って、その場にはアマーリエと王子の二人だけになった。
「‥‥‥前からずっと村長は嫌な人だった。でも私達も悪い。村の最長老だというだけで、誰も逆らわなかったんだもの」
ジューダの人身御供の事も、反対の声が多かったの。
特にジューダの育ての親の反対はすごかった。私達の息子をどうするのかと。私はまだ小さかったので、ジューダの家には行くなと言われてて、詳しくは聞けなかったけど、村長と言い合う家族の声は聞こえてきた。
「お前はジューダの事を知っていたのか?」
ええ、村民は皆知っていましたよ。ジューダの事。
「ジューダが夢に出てきました。殺してくれと。何度も、何度も、私に頼みに来るんです」
もっと生きたかったはずなのに。
殺して、殺してと何度も。
「でもこれで、その悪夢も見れなくなると思います。村長の首を捧げることで、弔いにはなったと思うから‥‥‥」
「‥‥‥これからお前はどうするのだ?」
「私はこの村に留まります、直接手は下さなかったにしろ、私達も村長の暴走を止められなかったのです。その罪は一生背負っていくつもりです」
アマーリエはそう言って微笑んだ。
「‥‥‥お前はもう毒の呪いも解けた。この村を出て、自由に生きる権利もあるのだが?」
わざわざこの村にジューダへの罪悪感で留まる事もないのに。
「ふふっ、大丈夫です。村長が嫌いだっただけで、私はこの村が好きなのです」
アマーリエの顔は、晴れ晴れとしていた。少女らしい微笑みを浮かべて。
王子も釣られて微笑んだ。
「そうか‥‥‥」
* * *
村の裏山には今も赤い門《鳥居》がある。だがもうそこでは邪悪な気配は感じない。
鳥居の奥にはまるで幸せな親子のような影が映る不思議な岩が静かに鎮座していると言う‥‥‥
木漏れ日に照らされた澄んだ池の鯉が、パシャリと水音を立てた。
すみません次回にかけての短めの話を急遽ねじ込みました。
アマーリエに幸せが訪れますように。
次からは普通の冒険です!
ここまでお読みくださってありがとうございました。