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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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王子の怒り

一部暴言の描写がありますが

物語の設定です

この物語はフィクションです。


 村長が?


 エリーの声の方に目をやると、そこには村長がいた。私はジューダの事を思い出していた。悲しいジューダ‥‥‥綺麗な緑の瞳をしていた。


「おのれ、よくもジューダを!」


『お前が死ねば良かったんだ!』


「ヒィッ」


 村長が情け無い声を上げる。


「ヴァレリア、やめろ」


 王子が慌てて私を止めようとする。

(ヴァレリア、ニーズヘッグと混同しているのか? 言葉遣いが荒い)


「うるさい!」


 グルル‥‥‥ヴァレリアは髪の毛を逆立てて唸る。


 何故、私はこんな事をしたくないのに。こんな汚い言葉も使いたくないのに。これもニーズヘッグのせいなの?そういえば‥‥‥


 ニーズヘッグは取り憑かれた人間の方が怖いって、確か言ってた。


「来るな!」


「ヴァレリア、大丈夫だ」


 そう言うと王子はまた私を抱きしめてきた


「ヴゥゥ〜! うっ‥‥‥」


 王子の腕、安心する‥‥‥


「スヤァ‥‥‥」


 私は王子の腕の中で眠ってしまった。


「エリー、ヴァレリアを頼む。村長とは俺が話す」


「あっ、はい!」


 こちらへ‥‥‥と言ってエリーはヴァレリアをベッドに横たえさせた。


「ヴァレリアお嬢様、色々あって疲れましたね。もう大丈夫ですよ」


「村長、下で話そう」


 王子がそう言って村長を促す。エリーが王子の方を見る。


「すぐ終わるよ」


 王子はそう言って微笑んでみせたが、瞳は笑っていなかった。


「‥‥‥ッ!」


 コクンっ。エリーは静かに頷いた。


* * *


「さて、村長」


 王子は静かに切り出す。


「どの面下げてここへ来た?」


「その、村を救ってくださってありがとうございます」


 王子は一瞬ポカンとした。


「‥‥‥ハハッ! それを言うためだけに来たのか? 礼など要らぬ。元々この依頼は断るはずだったのだ。それにあのヴァレリアの怒りを見ただろう、あれを見てもそう言えるのか? ジューダを人身御供にしておいて、『ありがとうございます』などと‥‥‥」


 あんなに心を乱したヴァレリアは見たことがない。ニーズヘッグがいるとは言え‥‥‥


『お前が死ねば良かったんだ!』


ニーズヘッグが取り憑いているとはいえ、あんな事を口走るとは。


 村長は事もなげにこう言った。


「わ、ワシには関係ない事じゃ。それにジューダはもう人間じゃない、ただの器だ! 入れ物だ。入れ物と化したものに同情するなどありえん」


 なるほど、これは。


「なるほど。あくまで自分のした事は悪くないと?」


「‥‥‥悪くない! 何かを得るには捨てなきゃならん命もある」


『思ったより胸糞が悪い話だ』


 ブワアァッ!


 その時王子の瞳が金色に変わり、禍々しいオーラが王子の周りを取り囲んだ。その禍々しい殺気に押され、村長が命乞いをする。


「ヒィィィ許してくだされ!」


「ん? 妙な事を言うな? お前はジューダの声に耳を傾けたか? ジューダは一度ならず二度も捨てられたわけだが」


「何も聞いてません! 子どもの言うことなどただの戯言(たわごと)ではないですか? それにジューダは元々捨てられていた子で‥‥‥」


 王子の金色の瞳が濃くなり、さらに殺気を増す。その目だけで射殺(いころ)せそうなほどに。


「質問を変えよう。もしまた村が危機に陥った時、お前はどうするのだ」


 もうヒュドラ(守り神)もいないのに。


「また適当な(にえ)を探して捧げるのか?」


「‥‥‥もう何度も繰り返してきた村の風習じゃ。今さら止める事はできん」


 はぁ‥‥‥


 王子は呆れたようにため息を吐いた。


「人間の方が悪魔よりタチが悪い、と悪魔が言っていたが」


『お前はもうどうにもならないな。人間でもない、悪魔でもない。動物にも劣るただの下種(げす)だ』


「ど、どうか命だけは」


「お前のその命乞いに価値はあるのか? ジューダだってもっと生きたかった筈だ」


 その時村長が王子の瞳の色に気付いてハッとした。


「その金色の瞳、まさか。‥‥‥あんたは‥‥‥ウッ」


 ザシュッ!


 王子は迷う事なく村長の首を刎ねた。


「恐らくお前の思っている通りの名前だよ! もっとも、もう口にする事はできないが」


 王子が村長の髪を掴む。


 お前には死んで償ってもらう。じゃないとジューダも浮かばれないだろう?


 何より。


「ヴァレリアがいつまでも苦しみ続けるだろうが!!」


 王子の怒りの咆哮が、村全体を包み込み、宿舎の壁がビリビリと振動した。


 エリーがヴァレリアの手をギュッと握った。


「お嬢様、全て終わりましたよ」


 眠っているヴァレリアの顔が、少し微笑んだ気がした。



王子が珍しくイケメン回でしたね。

いや私にとってはいつも王子はイケメンのつもりなんですが。


ここまでお読みくださってありがとうございます。


この話が良いと思ったら広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!良くないと思ったら☆にZEROを付けて行ってくださいね!


ご拝読ありがとうございました。また読んでくださいね!

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