王子の怒り
一部暴言の描写がありますが
物語の設定です
この物語はフィクションです。
村長が?
エリーの声の方に目をやると、そこには村長がいた。私はジューダの事を思い出していた。悲しいジューダ‥‥‥綺麗な緑の瞳をしていた。
「おのれ、よくもジューダを!」
『お前が死ねば良かったんだ!』
「ヒィッ」
村長が情け無い声を上げる。
「ヴァレリア、やめろ」
王子が慌てて私を止めようとする。
(ヴァレリア、ニーズヘッグと混同しているのか? 言葉遣いが荒い)
「うるさい!」
グルル‥‥‥ヴァレリアは髪の毛を逆立てて唸る。
何故、私はこんな事をしたくないのに。こんな汚い言葉も使いたくないのに。これもニーズヘッグのせいなの?そういえば‥‥‥
ニーズヘッグは取り憑かれた人間の方が怖いって、確か言ってた。
「来るな!」
「ヴァレリア、大丈夫だ」
そう言うと王子はまた私を抱きしめてきた
「ヴゥゥ〜! うっ‥‥‥」
王子の腕、安心する‥‥‥
「スヤァ‥‥‥」
私は王子の腕の中で眠ってしまった。
「エリー、ヴァレリアを頼む。村長とは俺が話す」
「あっ、はい!」
こちらへ‥‥‥と言ってエリーはヴァレリアをベッドに横たえさせた。
「ヴァレリアお嬢様、色々あって疲れましたね。もう大丈夫ですよ」
「村長、下で話そう」
王子がそう言って村長を促す。エリーが王子の方を見る。
「すぐ終わるよ」
王子はそう言って微笑んでみせたが、瞳は笑っていなかった。
「‥‥‥ッ!」
コクンっ。エリーは静かに頷いた。
* * *
「さて、村長」
王子は静かに切り出す。
「どの面下げてここへ来た?」
「その、村を救ってくださってありがとうございます」
王子は一瞬ポカンとした。
「‥‥‥ハハッ! それを言うためだけに来たのか? 礼など要らぬ。元々この依頼は断るはずだったのだ。それにあのヴァレリアの怒りを見ただろう、あれを見てもそう言えるのか? ジューダを人身御供にしておいて、『ありがとうございます』などと‥‥‥」
あんなに心を乱したヴァレリアは見たことがない。ニーズヘッグがいるとは言え‥‥‥
『お前が死ねば良かったんだ!』
ニーズヘッグが取り憑いているとはいえ、あんな事を口走るとは。
村長は事もなげにこう言った。
「わ、ワシには関係ない事じゃ。それにジューダはもう人間じゃない、ただの器だ! 入れ物だ。入れ物と化したものに同情するなどありえん」
なるほど、これは。
「なるほど。あくまで自分のした事は悪くないと?」
「‥‥‥悪くない! 何かを得るには捨てなきゃならん命もある」
『思ったより胸糞が悪い話だ』
ブワアァッ!
その時王子の瞳が金色に変わり、禍々しいオーラが王子の周りを取り囲んだ。その禍々しい殺気に押され、村長が命乞いをする。
「ヒィィィ許してくだされ!」
「ん? 妙な事を言うな? お前はジューダの声に耳を傾けたか? ジューダは一度ならず二度も捨てられたわけだが」
「何も聞いてません! 子どもの言うことなどただの戯言ではないですか? それにジューダは元々捨てられていた子で‥‥‥」
王子の金色の瞳が濃くなり、さらに殺気を増す。その目だけで射殺せそうなほどに。
「質問を変えよう。もしまた村が危機に陥った時、お前はどうするのだ」
もうヒュドラもいないのに。
「また適当な贄を探して捧げるのか?」
「‥‥‥もう何度も繰り返してきた村の風習じゃ。今さら止める事はできん」
はぁ‥‥‥
王子は呆れたようにため息を吐いた。
「人間の方が悪魔よりタチが悪い、と悪魔が言っていたが」
『お前はもうどうにもならないな。人間でもない、悪魔でもない。動物にも劣るただの下種だ』
「ど、どうか命だけは」
「お前のその命乞いに価値はあるのか? ジューダだってもっと生きたかった筈だ」
その時村長が王子の瞳の色に気付いてハッとした。
「その金色の瞳、まさか。‥‥‥あんたは‥‥‥ウッ」
ザシュッ!
王子は迷う事なく村長の首を刎ねた。
「恐らくお前の思っている通りの名前だよ! もっとも、もう口にする事はできないが」
王子が村長の髪を掴む。
お前には死んで償ってもらう。じゃないとジューダも浮かばれないだろう?
何より。
「ヴァレリアがいつまでも苦しみ続けるだろうが!!」
王子の怒りの咆哮が、村全体を包み込み、宿舎の壁がビリビリと振動した。
エリーがヴァレリアの手をギュッと握った。
「お嬢様、全て終わりましたよ」
眠っているヴァレリアの顔が、少し微笑んだ気がした。
王子が珍しくイケメン回でしたね。
いや私にとってはいつも王子はイケメンのつもりなんですが。
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