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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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紫の瞳と毒の炎

前回、ジューダの悲しい過去を知り、

殺してくれと懇願するジューダに

アナスタシア(ヴァレリア)は立ち尽くしてしまう

そこへ王子が現れて....

『イムブレカーティオ!』


 ヴァレリアは叫んだ。


 ブワァっとジューダとヴァレリアの周りに紫の雲が広がると共にヴァレリアの瞳が濃い紫に変わる!


「避けて!王子!」


「ヴァレリア!?」


 濃い紫の雲にジューダが苦しむ。じわじわと毒と炎で焼かれている。


『ハハハハハ!俺様の毒と炎は強いだろう!お(ジューダ)よりも強力だからな!』


ニーズヘッグが高笑いをする。


「ジューダ!お望み通り殺してあげるわ!」


 ハァハァ!


 紫の瞳が濃くなり私も苦しい。巨大すぎる魔力のせいだろうか??


 もう私は泣いていなかった。さっきまでの弱気は消えて、ジューダに対する憎しみしか残っていなかった!


「ジューダ!‥‥‥」


 ジューダの苦しんでいる姿が見える。毒の炎に苦しんでいる。


『ふん、やっと私達を殺してくれるのか?』


 ヒュドラが静かに顔をあげる。


「ええ、ジューダもヒュドラも! まとめて殺してあげるわ!」


 ゴッッッッ!!


 紫の瞳がギラギラと輝き、二人に毒の炎を放った。


『‥‥‥あ』


 その時ジューダの顔がハッキリと見えた。髪は整い、身体中に書かれていたわけのわからない文字は消え、紫の瞳は、綺麗な緑色になっていた。


「えっ‥‥‥」


 私はその姿を見て正気に戻り、声を上げた。まだあどけなさの残るその顔は、気のせいか晴れ晴れとしていた


『殺してくれて、ありがとう‥‥‥』


「‥‥‥ッ!!」


 ジューダ‥‥‥っ!!あぁ‥‥‥


「あなた、本当はそんなに綺麗な瞳をしていたのね‥‥‥」


 私は再び泣いていた。こんなに。こんなにも悲しくて、悔しいことがあるなんて‥‥‥まだあどけなさの残る子に、私が手を下すなんて!!


 毒の炎が(とど)めを刺すように再びヒュドラとジューダを包んだ。


「ジューダ!!‥‥‥」


 堪らなくなった私は炎の中に手を入れて、ジューダの頬をそっと撫でる。


(ごめんなさい、ごめんなさい‥‥‥)


 ジューダはヒュドラと一緒に灰になって、一瞬で消えてしまった。


「あ、あぁ‥‥‥。ジューダ‥‥‥可哀想な子」


 でも‥‥‥これでよかったのよね?


『ハハハハハ!これは驚いた!俺様より強い力が出せるとはな!ヴァレリア!』


「ハァハァ‥‥‥」


 ジューダとヒュドラが消えた途端に、苦しい、病気の時とは違う苦しみが私を襲って来た。わけのわからない汚い言葉も出てしまう。この苦しみは何!?ヴァレリア様の苦しみなの?!


『その苦しみは毒によるものだ。お前もジューダの毒に少なからず触れてしまったからな、平気だ。俺様が中和してやろう』


 そうなの‥‥‥?私にも、毒が?


「ヴァレリアさん!」


 いつのまに来ていたのか、ユーリが心配そうに声を上げる。


「近づかないで!寄るな!まだ私には毒が残ってる! 私にしか、中和できない毒なの。近づかないで!」


「ヴァレリア様、酷い怪我!!」


「来るな!エリー! ハァハァ、誰も触れないで! 私に‥‥‥触れたらコロス!」


 汚い言葉‥‥‥無意識に出てしまう!これも悪魔の影響なの??


 ビクッとして、エリーが下がる。


 ごめんなさいごめんなさい。みんなを守るにはこれしか無いの、ごめん。


 ありがとうみんな

 ありがとう

 ごめんね


 ヴァレリアの瞳から涙が溢れ、頬を伝った。


(ごめん、ごめんエリー‥‥‥)


「ハァハァ」


 苦しい!でもまだ毒が抜け切れていない!どこか遠くに行って、不本意だけどこの悪魔に中和してもらわなければ‥‥‥


 その時、ずっとこちらの様子を見ていた王子が私に近付いてくる。


「来るな!」


 ありったけの殺気を王子に向ける!自分でも紫の瞳が濃くなっているのが分かる!


 その悪魔のような殺気にメンバーは近寄る事ができない。


「来ないで来ないで! お願いだから‥‥‥」


 王子は何も言わずに私を抱きしめてきた。


 はぁ?! この人、何考えてるの!? 私の周りには毒が蔓延してるのに‥‥‥


「平気だ、このくらい‥‥‥俺を誰だと思っている?俺に毒は効かないと前に教えただろう?」


「アーーーーッ!!!!」


 その時私の内部から切り裂くような痛みが走った! 毒が‥‥‥私を蝕む! 私の腕や足や筋肉が、黒く変色してきた。


 このままでは王子にも毒がうつってしまう!


「王子、毒がうつってしまう。早く逃げて、私は大丈夫ですから。中和できますから!! 王子!!」


 王子は私を抱きしめたままビクともしない。


 ハァッハァッ!


(王子‥‥‥)


退()けコロスぞ!』


 私の中の悪魔が叫ぶ! 違うの、違うの‥‥‥本当は殺したくないの。


『ん?』


 王子を見た悪魔の様子が変わる。


『なんだお前か』


 えっ? 悪魔、王子を知っているの??


『さっきはヴァレリアを守ってくれてありがとな、ジューダの毒は俺様でも中和に手こずってたから助かる。おいヴァレリア、あとはこいつに任せるぞ』


 この話し方、まるで昔から王子を知っているような口ぶり。


『それにしても、悪魔そのものより、取り憑かれた人間の方が怖いってのは本当なんだなぁ。ケケケ!!』


 そう言って悪魔はヴァレリアの中で大人しくなった。


(ハァッハァ。あ、楽になってきた? やっと中和が始まった)


 不思議だ。王子が抱きしめてくれると、さっきまで上がっていた息も落ち着いて来ている。


 シュウウウ‥‥‥


 私の黒く変色した箇所が元に戻っていく! 王子は?


「王子!」


 バッと、王子を見上げる。黒く変色していないどころか‥‥‥。目が金色に輝いている??


「だから大丈夫だと言っただろ? ヴァレリア‥‥‥」


 そう言って王子は私を抱きしめる手に力を込めた。


「あぁ‥‥‥! はっ‥‥‥」


 私の身体から毒が抜けていく感覚がする。先程の苦しみも、もう無い。

 私は安心したように王子の腕の中で気を失った。


ほのぼの要素皆無でワロタ

王子かっこいいなぁ。

悪魔は何故王子を見てすぐ引っこんだんですかね?

うーむ、謎だ!


ジューダ可哀想すぎる( ;∀;)


ここまでお読みくださってありがとうございます。




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― 新着の感想 ―
[一言] 静と動…。今回は思い切り動のお話でしたねぇ。ここからの変化が楽しみですな。ゆっくり読み進めて行きますね。
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