ジューダ
前回、胸糞の悪くなる村長の話を聞いて、セトとアナスタシア(ヴァレリア)は依頼を断った
怒りのあまり倒れてしまったアナは、村の外れに用意された宿舎で目を覚ますのだった
ん? ここは?
「気付きましたか?」
アイシャ?
ああ、違う、アイシャはもう‥‥‥
「ここはどこ?」
目覚めた私はエリーに聞く。
「呪われた村の近くにある宿舎ですよ。私達のような冒険者のためにわざわざ用意したんですって」
その時娘が私のところにお茶を運んで来た。
「アマーリエと申します。今日は色々あってお疲れでしょう、そのお茶を飲むとぐっすり眠れますよ。では、失礼します」
と言い、ぺこりとお辞儀をして足早に去って行ってしまった。
「あの子は?」
「‥‥‥ここまで案内してくれた子です。呪われた村の娘さんみたいですよ、可哀想に。村からあまり離れてはいけないんですって。そうしないと、呪いの毒で死んでしまうんですって」
えっ‥‥‥
あんな優しそうな子が
「恐らく、あの子は一生村から出る事はできないでしょうね」
ズキン
それを聞いて胸が痛んだ。私は、本当に私の選択は間違いではなかったのだろうか?
勢いで酷い事を言ってしまったけれど‥‥‥あんな若い娘さんがいるなんて思わなかった。
「ねぇ、エリー。‥‥‥やっぱり私」
「ダメですよ」
「えっ? 何が?」
「ヴァレリア様、きっとあの子の為にもジューダを倒しに行きたいとか思ってらっしゃるんでしょうけど、無理ですよ。もうセトが依頼書を破り捨てましたし、セトはお金が絡まないと絶対動きませんし、私もこの依頼には参加しかねます」
それに、元はジューダも犠牲者の一人だったんですよ?
「そ、それはそうだけど」
だけど、それでも‥‥‥
「あの子がずっとこの村に囚われながら過ごすなんて、あの子の人生はどうなるの?」
「‥‥‥気持ちはわかります」
私一人なら??
「ジューダの居るところに連れて行ってもらえないかしら?」
「絶対にダメです! いくらレベルが上がったとはいえ、ヴァレリア様はまだ何もできないんですから!」
うっ‥‥‥
「わかってください。人には出来ることと、出来ない事もあるんです。アマーリエは気の毒ですが‥‥‥」
エリーの言っている事はもっともだ‥‥‥でも救える命と救えない命、その線引きをすることが、こんなに辛い。
「王子が来るのを待って、明日また新たな依頼を請けて出発しましょう」
「うん‥‥‥」
その日の夜、私を呼ぶ声が聞こえ、目が覚めた。
『ヴァレリア、ヴァレリア』
声が聞こえる。
懐かしいような、でも決して好ましくない声。
「‥‥‥誰?」
『ヴァレリア、俺様だ。あの時契約した悪魔だ』
なっ‥‥‥
(エリー!!‥‥‥)
声が出ない?!
『ハハハー! 騒がれては困るからな! どうだヴァレリア、今からジューダのところに行ってみようじゃないか!』
私は震えて声の元を探す! どこ?どこなの?
『俺様はここに居る、お前の体の中から直接頭に話しかけている!』
ゾッとした! 悪魔が私の中に居るですって?! 一体何故!?
『ハハハハハ! 何を今更驚く事がある! 今までもお前に力を貸して来たではないか!』
??‥‥‥まさかヴァレリア様には、元々悪魔が取り憑いていたというの? わけがわからない!
『入れ替わったあの体は虚弱だったからなぁ! あのままアナスタシアの中にいたら俺様自身が弱っちまうからな! それより今まで言うこと聞いて来た分のお礼を返してもらうぜ!』
(な、何をするつもり?)
『決まってるだろ、ジューダに会いに行くんだよ!! ひでえ話だ、悪魔より人間の方が恐ろしい事をしやがるぜ。俺様も長い間閉じ込められてたからな! 生贄にされた人間ってのを見てみたくってなあ!」
(まっ、待って!)
体が、動かない?
声も出せない!嘘でしょ?
エリー、エリー!
『ハハハハハ! 無駄無駄! 俺様はジューダに会いたいんだ! これから先は俺様の言うことを聞いてもらうぜ!』
私は自分の意思に関係なく出かける準備をして、扉を開け、歩を進めてしまう。
嫌だ嫌だ嫌だ!!
助けて、セト、ユーリ、エリー!
『どうした? お前村人達を助けてやりたかったんじゃないのか?』
確かに、助けてあげられるものなら助けたい!でも、悪魔の力を借りるのは違う!私もあの人達と同類になってしまう!それは嫌よ!
『ハハハ!お前面白いことを言うなぁ!俺様は人間とは違う!れっきとした【悪魔】だ!』
いつのまにか道が開けて赤い門?のような物が見えて来た。
ゾゾゾッ!!
(何かしらこの悪寒は‥‥‥)
赤い門から流れて来る生温い風が、何故か酷く冷たく感じた。
『ほぉ、コイツは面白い! ジューダの他に、もっと面白いヤツがいる』
面白いヤツ?
『毒の神「ヒュドラ」だ! これはこれは、来た甲斐があったというもの!』
そう言うと、私の中の悪魔が赤い門を潜ろうとする。
いや、嫌だ!私その門は潜りたくない!!中に入りたくない!
『お前は黙っていろ!ここからは俺様が話を付けてきてやる!』
あ、あ、た、
たす、て、誰か‥‥‥
その時、何故かレクター王子の金色に変わる不思議な瞳を思い出した
レクター王子‥‥‥
助けて‥‥‥
わおわお、果たしてアナスタシア(ヴァレリア)様はどうなるんでしょうか!?
王子ー!!
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