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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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ジューダ

前回、胸糞の悪くなる村長の話を聞いて、セトとアナスタシア(ヴァレリア)は依頼を断った

怒りのあまり倒れてしまったアナは、村の外れに用意された宿舎で目を覚ますのだった

 

 ん? ここは?


「気付きましたか?」


 アイシャ?


 ああ、違う、アイシャはもう‥‥‥


「ここはどこ?」


 目覚めた私はエリーに聞く。


「呪われた村の近くにある宿舎ですよ。私達のような冒険者のためにわざわざ用意したんですって」


 その時娘が私のところにお茶を運んで来た。


「アマーリエと申します。今日は色々あってお疲れでしょう、そのお茶を飲むとぐっすり眠れますよ。では、失礼します」


 と言い、ぺこりとお辞儀をして足早(あしばや)に去って行ってしまった。


「あの子は?」


「‥‥‥ここまで案内してくれた子です。呪われた村の娘さんみたいですよ、可哀想に。村からあまり離れてはいけないんですって。そうしないと、呪いの毒で死んでしまうんですって」


 えっ‥‥‥


 あんな優しそうな子が


「恐らく、あの子は一生村から出る事はできないでしょうね」


 ズキン


 それを聞いて胸が痛んだ。私は、本当に私の選択は間違いではなかったのだろうか?


 勢いで酷い事を言ってしまったけれど‥‥‥あんな若い娘さんがいるなんて思わなかった。


「ねぇ、エリー。‥‥‥やっぱり私」


「ダメですよ」


「えっ? 何が?」


「ヴァレリア様、きっとあの子の為にもジューダを倒しに行きたいとか思ってらっしゃるんでしょうけど、無理ですよ。もうセトが依頼書を破り捨てましたし、セトはお金が絡まないと絶対動きませんし、私もこの依頼には参加しかねます」


 それに、元はジューダも犠牲者の一人だったんですよ?


「そ、それはそうだけど」


 だけど、それでも‥‥‥


「あの子がずっとこの村に囚われながら過ごすなんて、あの子の人生はどうなるの?」


「‥‥‥気持ちはわかります」


 私一人なら??


「ジューダの居るところに連れて行ってもらえないかしら?」


「絶対にダメです! いくらレベルが上がったとはいえ、ヴァレリア様はまだ何もできないんですから!」


 うっ‥‥‥


「わかってください。人には出来ることと、出来ない事もあるんです。アマーリエは気の毒ですが‥‥‥」


 エリーの言っている事はもっともだ‥‥‥でも救える命と救えない命、その線引きをすることが、こんなに辛い。


「王子が来るのを待って、明日また新たな依頼を請けて出発しましょう」


「うん‥‥‥」


 その日の夜、私を呼ぶ声が聞こえ、目が覚めた。


『ヴァレリア、ヴァレリア』


 声が聞こえる。


 懐かしいような、でも決して好ましくない声。


「‥‥‥誰?」


『ヴァレリア、俺様だ。あの時契約した悪魔だ』


 なっ‥‥‥


(エリー!!‥‥‥)


 声が出ない?!


『ハハハー! 騒がれては困るからな! どうだヴァレリア、今からジューダのところに行ってみようじゃないか!』


 私は震えて声の元を探す! どこ?どこなの?


『俺様はここに居る、お前の体の中から直接頭に話しかけている!』


 ゾッとした! 悪魔が私の中に居るですって?! 一体何故!?


『ハハハハハ! 何を今更驚く事がある! 今までもお前に力を貸して来たではないか!』


 ??‥‥‥まさかヴァレリア様には、元々悪魔が取り憑いていたというの? わけがわからない!


『入れ替わったあの体は虚弱だったからなぁ! あのままアナスタシアの中にいたら俺様自身が弱っちまうからな! それより今まで言うこと聞いて来た分のお礼を返してもらうぜ!』


(な、何をするつもり?)


『決まってるだろ、ジューダに会いに行くんだよ!! ひでえ話だ、悪魔より人間の方が恐ろしい事をしやがるぜ。俺様も長い間閉じ込められてたからな! 生贄にされた人間ってのを見てみたくってなあ!」


(まっ、待って!)


 体が、動かない?

 声も出せない!嘘でしょ?

 エリー、エリー!


『ハハハハハ! 無駄無駄! 俺様はジューダに会いたいんだ! これから先は俺様の言うことを聞いてもらうぜ!』


 私は自分の意思に関係なく出かける準備をして、扉を開け、歩を進めてしまう。


 嫌だ嫌だ嫌だ!!

 助けて、セト、ユーリ、エリー!


『どうした? お前村人達を助けてやりたかったんじゃないのか?』


 確かに、助けてあげられるものなら助けたい!でも、悪魔の力を借りるのは違う!私もあの人達と同類になってしまう!それは嫌よ!


『ハハハ!お前面白いことを言うなぁ!俺様は人間とは違う!れっきとした【悪魔】だ!』


 いつのまにか道が開けて赤い門?のような物が見えて来た。


 ゾゾゾッ!!


(何かしらこの悪寒は‥‥‥)


 赤い門から流れて来る生温い風が、何故か酷く冷たく感じた。


『ほぉ、コイツは面白い! ジューダの他に、もっと面白いヤツがいる』


 面白いヤツ?


『毒の神「ヒュドラ」だ! これはこれは、来た甲斐があったというもの!』


 そう言うと、私の中の悪魔が赤い門を(くぐ)ろうとする。


 いや、嫌だ!私その門は潜りたくない!!中に入りたくない!


『お前は黙っていろ!ここからは俺様が話を付けてきてやる!』


 あ、あ、た、


 たす、て、誰か‥‥‥


 その時、何故かレクター王子の金色に変わる不思議な瞳を思い出した


 レクター王子‥‥‥


 助けて‥‥‥



わおわお、果たしてアナスタシア(ヴァレリア)様はどうなるんでしょうか!?


王子ー!!


ここまでお読みくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] え! それはなんとも言いようがないですね(苦笑)。 マイページのコメントの所に残ってなかったら、残念です。
[一言] はい。 読みながら、気が付いたところを。 一応アドレスです。 https://ganap-akira1.com/syousetsukouza/syousetsu021-kihon/
[一言] 明日の更新分が出来たので、こちらに来て一気にここまで読みました。 冒険が始まった感じでワクワクしながら良いところで、後日の楽しみにしておきます。 少し気になった所。 受ける→金銭が絡ま…
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