いざ城の外へ
王子に正式に婚約破棄されたヴァレリア(アナスタシア)
早速自室に戻り身支度を整えるのだった
てっきり父親(侯爵)のいる家に帰るのかと思いきや
「お嬢様〜、本当によろしかったのですか?」
「えっ何が? 私の装備、何か足らない物があるかしら?」
「いえ、そうではなく......」
今私の部屋では、およそお嬢様呼びとは無縁の物々しい甲冑の音が響いている。
「うーむ、結構装備が重いわねぇ。こっちに決めた!」
比較的軽い皮の甲冑。
剣を納めやすい鞘付きのベルト。
それに私の肌にピッタリとしたズボンと皮のブーツ。
「いかにも冒険者って感じで良くないですか? エリーザベト!?」
「お、お嬢様、一体どこにお出かけするつもりですか? そんな冒険者のような格好をして」
「冒険者!? うわぁ私って冒険者に見えますか? 嬉しいですわ!」
エリーは何が何かわからないというように頭にハテナをたくさん浮かべている。
エリーザベト......
そっとエリーの髪を撫でる。
「私は一度外に出たかったのです。カゴの中の鳥は嫌なのですわ」
13歳からお城に隣接する学校で淑女たる振る舞いを学び、16歳になるこの歳までをお城で過ごしていたけれど。
もっと外に出て、外の世界を見て、知ってみたい......
(本来の私の体は虚弱、多分、あのままヴァレリア様と入れ替わらなければ一生外に出る事は叶わなかったから)
「お嬢様……」
「あ、エリーは無理についてこなくても大丈夫ですよ。私のわがままでエリーの人生を振り回す事はできませんから」
そう言うと、エリーが意を決したように口を開いた。
「あの! 私もついていきます! だって私、帰る家もないし、頼る親は、いるにはいるけど毒親で......。今帰ったらそれこそ人生めちゃくちゃになります。だから、そう思っているのなら私も連れて行ってください!」
エリー......
「ごめんなさい、私自分の事ばかり考えてエリーの気持ち全然考えていませんでしたわ。ごめんなさい」
「ヴァレリア様、私はずっとヴァレリア様の味方です。例え他の姫様方に影で笑われていても、王子に冷遇されていても! だから私がついて行きたいんです。これは私の意思です」
そう言ってエリーはぎゅっと私の手を握る。ていうかヴァレリア様は王子だけでなく他の女性たちにも嫌われていたのね? もうヴァレリア様ったら!
でもそんなヴァレリア様、ヴァレリア様にも理解者がいてくださった!
気付いたら私は嬉し泣きをしていた。
思えばヴァレリア様の周りはいつも顔色を伺うような方が多かった。
ヴァレリア様にも、エリーのような逞しくて頼りになる、そして忠義を捧げてくれる女中も居たのですね......
今回は何故か百合っぽくなってしまいました
わざとじゃないですよ
ここまでお読みくださってありがとうございます。