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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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呪いの村にて

王子が城に一旦戻り、シリウスと話をしている最中、アナスタシア(ヴァレリア)一行は目的地の呪いの村に到着するのだった。

 レクター王子がお城に戻って話をしている頃、一同は呪われた村に到着していた。


「さて、まずは村長に話を聞かないとな。裏山の場所もよく分からんし、エリー」


 セトはエリーを呼んだ。


「二人で話を聞くぞ」


「あ、はい、お嬢様達はどうしますか?」


 エリーはチラッとヴァレリアとユーリを見る。


「この村本当に呪われているのかしら?」


 ヴァレリアの呟きに村長が眉を(ひそ)めた。慌ててユーリが取り(つくろ)う。


「ヴァレリアさんは僕と一緒に村の人達の情報収集に行ってきます。ヴァレリアさん、行きましょう」


「はい!」


 ヴァレリアは元気よく返事をし、二人は外に出た。


「で、早速だが、お嬢の言う通りこの村はパッと見で呪われてるようには見えないのだが? 何か特別な力でも働いてるのか?」


 村長は一瞬口籠もり、深いため息を吐き、重い口を開いた。


「‥‥‥。もう、ワシらにはどうする事もできんのじゃ。あの子を捧げた、ワシらの罪なのはわかっている、でもこれ以上は耐えられない。どうか、この村を救ってください」


「あの子?」


 村長はコクリと頷いて話しだす。それはこの村の(おぞ)ましく、悪しき風習が(もたら)したものだった。


「ジューダが来た時から十年ほど経った頃じゃった」


 ちょうどこの村の田畑が大雨で育たず、村は飢饉に(おちい)った。ワシらはその度に山の神にお願いをする事で飢饉を乗り越えてきた。


「その時に人身御供(ひとみごくう)として選ばれたのがジューダだったのじゃ」


 ところが


 神は怒った!


 古い村の因習は、神には届かなかったどころか命を粗末にするなと逆に怒りを買ってしまった。神はジューダを村に返さず、罰とばかりにそのまま異形として村に瘴気を撒き散らす悪霊とした。


『ははは、愚かな人間ども、私を馬鹿にした罰を永遠に受けるがいい!』


 それからもう五十年、村は奇跡的に飢饉から脱した。が、村人はこの村の出身である限り満遍なく呪われ、瘴気に侵され、体内に毒を溜め込み、その溜め込んだ毒によってやがて死ぬ。


 この村が一瞬呪われてない様に見えるのは、あんたらがこの村の出身じゃないからじゃ。


「ジューダはどうなったの? 人身御供にされたジューダは?」


「ジューダは、生きていても異形に意思を抜かれている。今はもう、ただこの村に瘴気を撒き散らす悪霊の、入れ物と化しているだろう」


 ひどい‥‥‥


「なんでそんな酷い事ができるの?!」


 ヴァレリア様‥‥‥


 先程出て行ったはずのヴァレリアが青ざめた顔をして立ち尽くしていた。後ろでユーリが申し訳無さそうにしている。


「すみません、村長さんの声が聞こえて来たので‥‥‥」


 ヴァレリアはギリギリと歯軋りをする。


「こんなに人間に憎しみを覚えたのは初めてだわ! 人間が、同じ人間を山の神に捧げるなんて馬鹿げてる!」


 そこまで言って止め、再び口を開いた。


「いえ、人間じゃないわ! 人間のする事じゃない。思いやりという気持ちはないの? 悲しみは? 後悔は? 親から子を奪った事への罪悪感はないの?」


 村長はこの村を守るためなら仕方なかったんだという。


「あんたは身なりから、言葉遣いから、いいところのお嬢様と見受けられます。あんたみたいな人間にはわからんじゃろう」


 飢えに苦しむ人間の気持ちは。

 飢えが故に狂う人間の気持ちが。

 今日明日(きょうあす)食う事に困る人間の気持ちが。


「それが解消できるならどんな事でもやるんじゃ! 村の人間はそれを良しとして来た!」


 わからないわ‥‥‥


「例え貧困に陥っても、人が人を訳の分からない物に捧げていいわけがないでしょ?」


 ヴァレリアの紫の瞳が、怒りを(はら)んでギラギラ光る。


「お嬢、そこまでだ。村長悪いがこの依頼は無かった事にしてもらう。そんな胸糞な話を聞かされてもなお引き受けてくれる奇特(きとく)な人間を探すんだな」


 そう言ってセトは依頼書をその場で破り捨てた。


 私は泣いていた。酷いわ、ジューダはこの村に瘴気を撒き散らす為に、産まれたわけでもないのに。


「ゥゥッ」


 ヴァレリアを突然頭痛が襲う。


「ううっ! 痛いッ‥‥‥!」


 唐突に苦しみだすヴァレリアに、エリーは心配して呼びかける。


「お嬢様? どうされたのですか?」


「お嬢? どうしたんだ?」


「ヴァレリアさん、どうしたんですか?」


 セトとユーリも心配そうにしている。


『お嬢様、お嬢様がどんな時でも、アイシャは側にいますからね』


【悪魔!!】


 これは、ヴァレリア様の記憶??


【薄気味悪い子ね】


【ヴァレリアこっちへ来ないで!その瞳で見つめないで!】


【この悪魔め! 私の娘から出ていけ!】


『悪魔ですって? 何を言ってるの?』


 悪魔は、


『お前たちの方だろう?』


 そう言って、ヴァレリアは頭を抱えて(うずくま)った


「お嬢様!!!!」


 アイシャ?

 違う‥‥‥これは、この声は。


「エリー‥‥‥」


 ああ、エリーだわ、この安心する声は。


「お嬢様!!」


 ヴァレリアはエリーに手を伸ばしたまま、意識を手放した。



なんか変な展開になってきたんだが?

次回は本物のヴァレリア様登場します。


ここまでお読み下さってありがとうございます。

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