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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
38/269

王子一度城に戻る

アナスタシア(ヴァレリア)様たちは

呪われた村に(おもむ)く事になる

一方、王子はシリウスに自分の意思を告げに来たのだった

「というわけで俺は王子をやめる。今日から俺はただの『レクター』だ。よろしくな」


 そんな気まぐれを当然シリウスが許すはずはなく。


「王子! 王子をやめるとはどういう事ですか?!」


 一応自分の意思を告げに一旦城に戻った王子。シリウスが元々真っ白な髪を更に真っ白にしそうな勢いで振り乱して言った。


 王子の部屋にはハンニバルもいた。


「その言葉のままだが‥‥‥。俺が王子のままでは、ヴァレリアに自由に会えない。俺は、ヴァレリアの事をもっと知りたい」


 今ヴァレリア一行は呪われた村に向かっている。王子だけが城に戻り、事の経緯を説明した。


「ええっ?! ヴァレリア? 侯爵様のお嬢様ですか? あの方は確か王子が婚約を破棄なされたはずでは‥‥‥」


「その話は白紙に戻した」


「はぁ〜〜〜〜〜〜????」


「ハンニバルはどうだ? 役には立たないか?」


 シリウスはため息を吐いて頭を抱えた。


「うーむ、ではシリウス。俺とヴァレリアが旅に出ている少しの間、政務を執り仕切ってくれないか?」


「だめですよ、王子でないとできない仕事もありますし‥‥‥」


「俺‥‥‥」


 じっと二人の話を聞いていたハンニバルが口を開いた。


「俺、兄さんの仕事やってもいいよ」


 意外な言葉にレクターもシリウスも驚いた。


「どうしたハンニバル? お前政務は嫌だと逃げ回っていたじゃないか?(俺もそうだけど)」


「うーん、前まではそうだったんだけど、気が変わったっていうか‥‥‥」


「‥‥‥失礼ですが、ハンニバル様はレクター王子の仕事の範囲をご存知で?」


「うん、ざっくりとは勉強した。兄さんすげえな、毎日あんな膨大な量の仕事をしてたんだな。まだ全部は把握してないけど、外交とか、帝王学とか、パーティーの主催者とか諸々。大変そうだ」


 シリウスが疑わしそうに疑問を投げかけた。


「それがわかっていて何故急に心変わりを?」


 ハンニバルは急に真面目な顔になったと思うと、レクター王子の前に(ひざまず)いた。


「王子の代わりに、一生懸命働くので、王子の婚約者のアナスタシアを俺の結婚相手にしてくれ。ください」


 二人は驚いたようにポカンと口を開けた。


「アナスタシアを? お前、アナスタシアの事が好きだったのか?」


「‥‥‥。うん‥‥‥兄さんの婚約者だと諦めていたけど、兄さんはどうやら今は違う御息女(ごそくじょ)に、執心してるみたいだし‥‥‥」


 先日アナスタシアに会って来た。黒い瞳から流れる涙が、愛おしく、守りたいと思った。


「そうだったのか、いや俺としては願ったり叶ったりだな」


 これで堂々とヴァレリアと一緒に冒険できる!


「少しお待ちを、仮にも一国の主が遊び惚けているという噂が立ってはいけません。当分の間、王子は激務で部屋を出ることができないという事にしましょう」


 シリウスの言葉に、王子は目を見開いた。


「驚いたなシリウス、お前なら絶対俺を城から出さないと思っていたのに」


 シリウスは深々とため息をついた。


「レクター様の性格は把握してますよ、一度こうと決めたら意地でも貫こうとするでしょう? 私が何を言っても無駄なのは分かっているので」


 シリウスは半ば諦めたように言葉を続けた。


「そのかわり、『王子』は『王子』です! その肩書きは有効であるという事を念頭に置いておいて下さい」


「完全にはやめられないのか? ハンニバルがいるのに。何なら王子の座を譲ってやってもいいぞ」


「簡単に言わないでくださいよ〜!」


「ははは! 分かっているさ、言ってみたかっただけだ」


 そう、わかっている。俺は王子をやめられない。そもそも王位はもう約束されているのだ。俺が五歳の頃からずっと‥‥‥。その玉座が空になる事が何を意味するかわかってもいる。ハンニバルではその重荷に耐えられないだろう事も。


 だけど、俺もヴァレリアのように自分の意思で動いてみたい。たとえ一時期でもいい。自由に生きてみたい。今にして思えば俺は、あのヴァレリアの眩しい笑顔に、突き動かされたのだ。


「まぁいい、これで当面の間の政務の心配は無くなった。ハンニバル。アナスタシアの件、良いぞ!アナスタシアは身体が弱いからな。支えてやってくれ。後は頼んだ!」


 そう言うとレクターは部屋の窓からひらりと出て行ってしまった。


「ああ〜! ああ言ったはいいものの、どうあってもレクター王子が出席しないといけない行事が発生したらどうしよう、どうしましょう!!」


 ズーンと落ち込むシリウス。後ろで考えを巡らせていたハンニバルが口を開く。


「俺思い付いたんだけどさ、兄さんの従兄弟? に出てもらえばいいんじゃないかな? 兄さんに似てて褐色の肌だし、歳も近いし、背丈も似てるし‥‥‥髪の色は違うけど、なんとかなるんじゃないかな。カツラとか被ってさ」


「ハンニバル様‥‥‥」


 シリウスがワナワナと震えながら言った。


「それすごく名案ですね!」



おや、また新たな登場人物が?

王子窓から出て行くの好きすぎてワロタ


次回からは場が二転三転します。


ここまでお読み下さりありがとうございます。


この話が良かったと思ったら広告の下の☆に点を付けて行ってくださいね。良くないと思ったら☆にZEROを付けて行ってくださいね!


ご拝読ありがとうございました。またお読みください。

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― 新着の感想 ―
[一言] シリウス……。アンタがはげない事を切に祈るよ。 最後のカツラが伏線とならない様に。
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