ハンニバルの来訪
色々と思う通りにいかないアナスタシア(ヴァレリア)
とんでもない事実に驚愕し、倒れてしまう。
「あ、これはこれは、ハンニバル王子」
アナスタシアの侍女たちがハンニバルを見て深々と礼をする。ハンニバルはそれに手を挙げて答える。
「うん、アナスタシアはどうだ? 礼拝堂で倒れていたと聞いたが」
「うなされております、どうやら相当なショックがあったようで‥‥‥」
ハンニバルは兄の代わりにアナスタシアを見に来ていた。アナスタシアは苦しんでいる。苦しそうな吐息が微かに聴こえてくる。
「レクター王子?」
アナスタシアが疲れた表情をこちらに向ける。
「残念ながらハンニバルだ。王子は城を出てるから俺が代わりにきた」
「そう‥‥‥」
「泣いていたの?」
「ええ、私、馬鹿な事をして。ショックで倒れてしまったみたいで‥‥‥」
自分が嫌になる‥‥‥
「馬鹿みたい、全部自分のせいなのに。情けなくて涙が止まらない」
ハンニバルは黙って聞いている。
「ごめんなさい、私ひどい顔してるの。肌も浮腫んで本当に酷い」
「俺は気にしないよ」
そう言うと、ハンニバルはアナスタシアの手を握る。
透き通るように白い、柔らかくていい匂いがする。でも何故か、その美しさが悲しい‥‥‥何故だろう?
「‥‥‥ハンニバル様は私の見た目がどれだけ酷くても、お気になされないのですか?」
「俺は、気にしないよ」
そう言って御簾をあげ、アナスタシアの顔を見ると、黒曜石のような黒い瞳から涙が溢れている。
その黒い瞳、俺はとても綺麗だと思うけどな。
「全然酷くないよ? それよりどうして泣いているの?」
「‥‥‥。私、自分が情けなくて。全部自分が、自分が悪いのに!」
アナスタシアは思わずハンニバルの手を握ってしまう。
「ごめんなさい、しばらくこのままでいさせてください」
カタカタとアナスタシアの白い手が冷たく震えている。
「行かないで、私を置いて行かないで‥‥‥」
「うん行かないよ、ずっと側にいるよ」
ハンニバル様‥‥‥レクター王子とは違うのに‥‥‥優しい。
誰かの優しさに飢え、寂しすぎたアナスタシアはやっとぐっすり眠る事ができた。
ごめんなさい短かったですね!
次回は冒険に戻ります?
ここまでお読み下さってありがとうございます。