王子とユーリ
アナスタシア(ヴァレリア)と王子がじゃれあっている一方、なかなか起きて来ないユーリに痺れを切らし、セトが起こしに行くのだった
この小説はただのライトノベルです
犯罪行為を推奨する作品ではありません
この物語はフィクションです
セトはちゃっかりゼリーの報酬を受けていたので朝からホクホクだった
「にしても、ユーリ起きてくるのおっせーな。起こしてくるか?」
「あ、それは私が‥‥‥」
「いーっていいって、お前は今日の依頼でも見ておいてくれ」
セトはエリーにそう言って上の宿に行ってしまった。
「ユーリ、おーい生きてるかー? ユーリ?」
ユーリは起きて装備も整えてベッドに腰掛けていた。
「うわ、びっくりした! カーテンくらい開けろよな」
「セトさん、僕は昨日‥‥‥」
んー?と言いながらセトがカーテンを開ける。
「昨日? ああ、ヴァレリアのことか? 本人全然気にしてないみたいだぜ?」
「えっ? 俺に襲われかけたのに?」
ユーリの言葉に、セトが驚いて手を止める。
「お前覚えてるのか? 変なお嬢様だよなぁ。ケロッとして起きて来たぜ」
「何となく酷いことをしたとだけ朧げには覚えてます‥‥‥どのような顔をして会えばいいのか。‥‥‥怖がらせちゃったかな」
んー、と顎に手を当ててセトが考える。
「いや? そうでもないみたいだぜ〜? 気にせずに降りてこいよ、お前が起きてこないと依頼が出来ん。今日は少し難易度高めの依頼を請けようと思ってる。お前の力も借りたいんだがな」
「そ、そうですね。ごめんなさい」
ユーリはそう言って慌てて飛び起きると、急いで階下に降りていった。
「あれ? ヴァレリアさん‥‥‥」
(と、向かいに座っているのはレクター王子‥‥‥)
声に気付いたヴァレリアがこちらを向く。
同時に気付いた王子もユーリに目を向ける。
「ユーリ! 起きたのね! こっちで一緒に食べましょ♪エリー!」
エリーを呼び、朝食を持ってくるようにお願いする。
「はぁ?! お前アレクと俺を相席にするつもりか?」
「はぁ?! それの何がいけないんですの? それに今はアレクじゃないです。ユーリですよ」
「あ、僕、こっちで食べますから。どうぞお気になさらず」
ユーリは二人のやりとりを見て所在無さそうに言った。
「また王子の悪い癖が出てますよ! ここはお城じゃないのですから我儘禁止! それに昨夜仲直りしたいって仰ってたじゃないですか」
そう言ってヴァレリアは王子からぷいと顔を背けた。
「ユーリ、ここで一緒に食べましょ。この人は気にしなくていいから」
「‥‥‥」
ヴァレリアの真正面には不機嫌全開なレクター王子。
「‥‥‥い、いいのでしょうか?」
「平気平気、王子がユーリに話があるんですって!」
「えっ」
シーン‥‥‥
結局ユーリはヴァレリアに押されて気まずい空気の中3人で朝食を摂る事になった。
「アレク、昨夜は済まなかったな」
意外にも会話の口火を切ったのはレクターだった。これにはヴァレリアも驚いたようで王子の方を口をポカンと開けて見ていた。
「お前がヴァレリアを襲っていたように見えたんだ。それでカッとなってついあんな事を。済まない、お前の事情も知らずに」
ユーリは慌てて立ち、王子にお辞儀をした。
「えっ、いえっ! 元はといえば俺、僕が悪いし! 実際ヴァレリアさんを怖がらせたのは事実だし、むしろ止めてもらえて助かりました」
「アレク‥‥‥お前にも辛い事があったんだろう? 今はまだ難しいだろうが、その内時間が解決してくれる」
「は、もったいないお言葉ありがとうございます」
「うわぁ〜これで晴れて仲直りですね! 嬉しい!」
ヴァレリアがはしゃいだ様子で笑顔で二人を見る。
(だがヴァレリアは渡さんぞ?)
レクターはユーリに微笑んで無言の圧力をかけた。
「ははは」
(望むところだ)
ユーリの中のアレクが囁く。
「ははは、ははははは」
わざとらしい二人の笑い声が店中に響き渡る。
「何やってんだアイツら」
「もーセト、じろじろ見ないの!‥‥‥ヴァレリア様も本当に鈍いというかある意味、逞しいですわ」
チラッと横目で彼らを見る。そこにはどす黒いオーラを纏った男二人の笑い声の中で一人ではしゃぐヴァレリア様がいた。
エリーはその光景に頭がクラクラしていた。キッとセトの方を振り返ると、ギュッとセトの大きな拳を握りしめた。
「セト、私達色々と! 頑張りましょうね!」
次回はお城が舞台です
本物のヴァレリア様が出てきます。
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