二重人格
前回エリーに非礼を詫びたレクター王子
アレクにも謝りたいとエリーに部屋を案内される
ヴァレリアを担いだまま(笑)
「王子、この子は二重人格なんですって。幼い頃のトラウマのせいでアレクという別人格になってしまうんですが、普段は大人しくていい子なんですよ。王子が見たのはアレクになっていた時なんです」
「二重人格‥‥‥そうか」
そういう人間もいるのだな。どういう過程でそうなったのだろうか?
「私もユーリに出会って初めてそういう性質の人に出会いましたわ」
アレクの顔を見る。まだあどけない少年のような寝顔。
「トラウマ、か。哀れな男だったんだな、だったら尚更悪いことをした。一体何があってこんな風になったんだ?」
「そこまでは聞いてないですわ」
(心の傷はなかなか治りませんもの、私の心の傷も、まだ完全には癒えていない)
冷え切った窓から聞こえる幼い日の嘲笑。
病弱で死人のようだと笑われた日々‥‥‥
それを今話せと言われると、私には無理だ。
ユーリの過去も、いつか話してくれるまで待とう。
「まあ、人にはそれぞれ事情があるのですから。お城での礼儀作法も、外の世界の方が全員できるとは思わない方がいいですよ。庶民からしてみれば、王子の方が浮いた存在なのですから」
「うーむ」
「それで、王子は私達についてくるのですか? それならば王子はまず人の気持ちを考えることから始めた方が宜しいと思いますよ。王子の我儘に振り回されて仕方ないと思えるシリウスのような人は外の世界には多分どこにもいませんよ?」
私は王子に私を諦めてもらいたいのと、城に戻ってもらいたい一心でベラベラと偉そうに話す。
(うーん‥‥‥ヴァレリアさん、ヴァレリアさん、ごめんなさい‥‥‥)
ユーリ、うなされている?
ユーリの手を安心させるように握り締め、汗ばんだおでこに手を当てる。
「大丈夫ですよ、私は大丈夫! アレクに入れ替わったばかりでちょっと混乱しただけだったんですよね?」
『お眠りなさい
お前、我が青春の友よ
葦と薔薇とに囲まれて‥‥‥』
ヴァレリアは子守唄を歌って聴かせる。
その途端に、ユーリの表情が和らいだ。
ムカーッ!!(怒)
なんだこの男は!!ヴァレリアに触られた途端スヤッスヤじゃないか!事情が分かってもイライラする。大体ヴァレリアはなんだ?アレクにベタベタ触りおって、子守唄まで聞かせて。
ヴァレリアの手を握り、アレクから離す。
「お前はこの男に触るな。この男の事情が分かっていてもイライラする!」
「わぁ! 王子! 驚いた。でも魘されてるんだから仕方ないじゃないですか!」
「でもその男にお前が触っているとイライラするんだよ」
「? わけがわからないです。あ、じゃあ王子も私と一緒に触ります? ユーリも落ち着くと思いますよ」
「うむ、それだったらまだ許せる」
エリーがそっと部屋の様子を見に行った。
そこにはユーリに王子とヴァレリア様がベタベタ触って、ユーリが魘されているというこの世の終わりのような光景が広がっていたという‥‥‥
王子とアレクの仲直りはなかなかうまくいきそうにない気がしますね!
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