王子の謝罪
前回ヴァレリアを攫った王子だったが、その我儘振りにヴァレリアがキレ、説教をする
王子は何故か嬉しそう
ヴァレリアは胸の高鳴りを覚え、変な雰囲気のまま仲間たちの居る宿に戻るのだった
私とレクター王子はエリーとセトとユーリが宿泊している宿へと戻っていた。
まだ夜も明けない中、エリーが心配そうに宿屋の前で私を待っていた。ユーリはいなかった。
「ヴァレリア様! ご無事‥‥‥でしたか??」
私はレクター王子の腕の中でエリーに大丈夫と手を振った。レクター王子は下ろせといったのに聞き入れてくれなかったのだ。
「レクター王子‥‥‥一体何をしにやって来たのですか?もうお嬢様は、婚約を破棄されたと仰ていましたが?」
そこまで言うとエリーは口籠もってしまった。エリーも若干王子の身勝手な振る舞いに怒っている様子だった。
「すまない、エリー。俺がどうかしていた。今宵の無礼を許して欲しい」
と言うと王子はエリーに深々と頭を下げた。エリーは驚いた!一国の王子であるレクターが自分のような身分に頭を下げるなど信じられない!
「ええっ! レクター王子! やめてくださいよ! 曲がりなりにも一国の主ですよ! 私のような者に簡単に頭を下げてはいけません!」
そう言ってエリーは王子より深い礼を返した。
ちなみに私はまだ王子の腕から解放されていない。まるで私を離したくないとでも言うように、王子の馬鹿力で抱き込まれて身動きが取れない。
私はぶすーっとしていたと思う。
「‥‥‥その事なんだが、俺はアレクにも謝りたい。どうやら俺は勘違いをしていたみたいだ」
「えっ?」
意外な王子の言葉に私は思わず王子に視線を向けた。
「お前達の俺への印象が最悪だったとヴァレリアに言われて気が付いたのだ。仲直りがしたい」
「ブッフォ!!」
私は思わず吹き出してしまった!なっ、仲直り、一国の王子が、謎多きバルカ王国の王子が仲直りって!聞いたことないんですが?
「何を笑っているのだ? 俺は本気だぞ、お前がまず反省をしろと言ったから‥‥‥それとも俺はまた何かしたのか?」
「いいえいいえ、合格ですよ」
私はまた王子の腕の中でふんぞり返った。必死な王子が少し可愛いと思ったのは内緒だ。
エリーもこの王子の言葉には驚いたようで、ポカンと口を開けていた。
「すまんエリー、アレクのところへ案内してくれないか?」
「あ、は、はい、こちらへどうぞ」
そう言ってエリーはユーリが休んでいる部屋へ王子を案内した。
「王子がお嬢様を連れて行ったあの後、ユーリは自分がお嬢様にした事がショックで寝てます。あんまり刺激しないでくださいね! じゃ、私は別室にいますから」
そう言ってエリーはサッと部屋を後にした。
王子はアレクと仲直りできるといいね。
王子だけはユーリの事をアレクと呼んでいます!
いつかユーリと呼ぶ時が来るのかしら?
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