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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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アレクサンドル 二

突然のユーリの変貌にゼリー集めどころではなくなり、クエストは中断を余儀なくされてしまった

アナスタシアはアレクサンドルの言っている事がイマイチ理解できない

そこでセトが過去の事を語り始めるのだった

 私が治療をしてもらっていると、セトがユーリを担いでやってきた。


「ユーリ‥‥‥ッ!」


「安心しろ寝てるだけだ、目が覚めたら元のユーリに戻ってるだろ」


「そう、なの?」


 ユーリは子供のような顔をして眠っている。


「この様子じゃ、ユーリはアレクになった時の記憶はないんじゃないか?」


「え?」


「俺も変な人間には大概会ってきたつもりだが、その内にユーリみたいなやつもいたんだよ。二重人格って奴だな」


 二重人格??初めて聞きましたわ。


「みんな揃いも揃って本人は別人格の事は覚えていないんだ。しかもそういう人間の大半が過去になんらかのトラウマになる出来事があって、そのトラウマから逃げる為に作られた人格だという」


 ユーリもそのタイプだと思うがな。


「じゃあ、ユーリが目覚めたら、アレクの事は言わない方がいいかしら? トラウマを刺激しない為にも」


「‥‥‥しばらくはそうした方がいいかもな」


 まぁ、根本的な解決にはならんだろうが。


「俺はカウンセラーでもなんでも無いからな。深く知ろうとも思わんが」


 セトが面倒そうに言う。


 私は、


「私は、知りたいです。この子の闇を」


 そう言うと、セトが驚いて目を見開いた。


「お嬢様が面倒見切れるのかよ?」


「わかりません。でもこのユーリの寝顔を見ていると、胸が締め付けられる‥‥‥」


 助けてあげたい

 闇から救いたい

 アレクも救いたい


「はぁ〜、俺は関わらんぞ。そいつの実力は買ってやるがな。面倒事はごめんだ」


 セト‥‥‥

セトの言うことはすごくわかるし、真っ当な意見だと思う。


 ユーリ、こういう事で別のパーティーでも面倒がられて、はぶかれていたのね。


 でも、私にはわかる。孤独になる事の辛さを。高熱が出て一人で寂しいのに、苦しいのに。わざと平気な振りをして。


【どうせ誰もわからない】


 と心を(とざ)し。何度も諦めて、痛みに耐えながら無理して笑顔を見せていたあの頃。


 一人で痛みに耐えながら声を殺して泣く日々は地獄だった。


「ユーリ、今は何も考えずに寝てくださいね。寝て起きたら、何もかもうまくいきますよ」


 そう願った日々を思い出した。何度も、何度も。

目が覚めたら健康で、痛くもない、眩しくも無い、薬も何種類も飲まなくていい。普通の生活が送れる日々が来る事を。


「ユーリ‥‥‥」


 私は気が付いたらユーリを抱きしめて、自分とユーリを重ねて涙していた。


『眠りなさい 

お前、美しき夜のゆりかごよ

誇り高き山に囲まれ

(あし)と薔薇に飾らせて

明日の朝は希望だけ』


「はぁ〜、お人好しすぎるだろあのお嬢様は?なぁエリー?」


 セトが呆れたようにエリーに話しかける。


「まぁ! ヴァレリア様は元から優しいのですわ。少しわかりにくいけれど(機嫌がいい時は)、私たち女中にも、時々お菓子をくださった事もあったのですから! 」


 一瞬考えた後、セトが口を開く。


「‥‥‥優しさの意味がちょっと違う気がするが?」


「まぁとにかく! ユーリはヴァレリア様が好きなようですし、しばらくはヴァレリア様の好きなようにさせましょう!」



アナスタシア(ヴァレリア)様はユーリに過去の自分を投影させている模様ですね。

ユーリのトラウマとは一体何なのでしょうか?


ここまでお読みくださってありがとうございます!



この話が良いと思ったら広告の下の☆に点を付けて行ってくださいね。良くないと思ったら☆にZEROを付けて行ってくださいね!

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