アレクサンドル
突然ヴァレリアに牙を剥いてきたゼリーをあっという間に消し炭にしたユーリ
でもその口調はユーリとは違っていて
一同が困惑気味の中、男は
「大丈夫か?」
と言ってヴァレリアを抱きしめてきた!
「‥‥‥ヒッ! 無礼者!」
ヴァレリアは驚いて思わず突き飛ばした。
「あ、ごめんなさい。‥‥‥ユーリ?大丈夫?」
「ヴァレリア」
「ん?」
「‥‥‥俺はアレクサンドルであり、ユーリでもある。あの時ヴァレリアが抱きしめてくれた、ユーリだ」
は?
先日のパーティーへの勧誘の時、思わず抱きしめちゃった事を言ってるのかしら?ヴァレリアは顎に手を付けて首を捻った。
「いや、いきなりそんな事言われても混乱しますわ! なんかユーリ、いつもと違うし‥‥‥それにあの時は、ユーリが可愛いかったからゴニョゴニョ」
(それに、あの時と違ってなんだか今のユーリ‥‥‥怖いし)
「いきなり抱きしめて悪かったよ、でも俺が抱きしめたという事は、ユーリもお前を抱きしめたかったって事だと思う。俺はユーリの代わりだから」
むむ?ユーリも私を抱きしめたい?はぁ?ヴァレリアの頭にハテナマークが浮かんだ。
「訳の分からない事を言うのではないわ! それより貴方は何者なの? ユーリなの? それともユーリに乗り移った誰かなの?」
「お嬢様、大丈夫ですか? ユーリ‥‥‥なの?」
エリーが私の側に駆け寄り困惑気味に口を開く。
「お嬢〜、言わんこっちゃない、手負いの獣ほど怖いもんはねぇんだ。一応向こうでエリーの手当てを受けてこい。ちょうどいいから一旦休憩だ」
ユーリをジロジロ見ながら私達を庇うようにしてセトがユーリの前に立ちはだかる。
「お前、誰だ? ユーリか?それともアレクナンチャラか?」
ユーリはセトの登場でどこかホッとしたように息をついた。
「‥‥‥今は、アレクナンチャラだ。ユーリは、寝てる。感情が昂ると、俺が。アレクサンドルが出てくるんだよ」
アレクサンドルが、エリーに手当てされているヴァレリアを見て口を開く。
「俺は、ユーリは、多分ヴァレリアの事が好きなんだ。ユーリの代わりに、ヴァレリアを守りたかった‥‥‥んだ。治療が終わったら、すまなかったと、伝えてくれ」
そう聞くとセトがヴァレリアとエリーの方を見た。
エリーがヴァレリアの腕を治療している様子が見えた。
「‥‥‥ああ、伝えておくよ」
「お前達も、巻き込んで悪かった‥‥‥。たの、んだ‥‥‥」
そう言うとアレクサンドルは糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。
なるほどユーリは二重人格だったんですね!
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