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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第四章 新しい仲間
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アデルの過去

いよいよアデルの過去が明らかに!


※説明回なので読みにくいかもしれません。あらかじめご了承下さい。

 俺は、俺の一族は虚弱で短命という呪いを受けていた。


 昔、気の遠くなるほど昔の事。


 今よりまだ世界中に悪魔が蔓延(はびこ)っていた頃、世界で悪魔対人間の魔法戦争が勃発した。


 俺の一族の祖先は、その時代において、人類を勝利に導いた者の一人だった。名をカイヴァーン。人類との戦いに敗退した悪魔は、敗退したあともしつこく、最後の悪あがきとばかりにカイヴァーンに呪いをかけた。


「虚弱で短命」という呪いを。


 その悪魔の最後の悪あがきで、俺たちの一族は勝手に衰退し、いずれ滅ぶ運命だったんだ。


 それがある日、カイヴァーンは長寿で有名な女神オリビアと恋に落ちてしまう。美しいオリビアにカイヴァーンは夢中になった。

 それからオリビアの恩恵を受けて、かろうじて俺たち一族は「短命」という呪いに逆らって生きながらえてきた。


 オリビアもカイヴァーンにかけられていた呪いは知っていた。呪いは厳重にかけられていたので、いくら女神オリビアでも呪いはどうする事もできなかった。だからせめて自分の長寿の部分を分け与える事で呪いに逆らっていたのかもしれない。


 そうして虚弱ながらも何とか延命して、一族は命を繋いでいたのだ。


 そうして時は流れ‥‥‥。俺と、俺の双子の妹ルエラが生まれた。母グレースは俺たちを産んで間も無く、オリビアの恩恵も虚しく旅立ち。父のアーサーは大層悲しみに暮れた。


 父親はオリビアの恩恵も受けていない普通の平民で、短命な俺たち一族の事を理解した上で婿養子に入ってきた男だった。


 俺たち一族は美しい女神オリビアの恩恵もあってか、割とみんな見栄えは良かったので父も母グレースの美しさに一目惚れした。何とかグレースと結ばれたいと思った父親は、一族の婿養子となる事を条件に母グレースと結婚した。


 父アーサーはグレースを心から愛していた。俺たち双子を憎むほどに。


 父親は俺たち双子を事あるごとに罵倒した。


『お前たちを産んだせいでグレースは死んだ!』


 と。何度も、何度も罵った。俺はルエラには聞こえないようにルエラの耳を塞ぐ事しかできなかった。


 そして、ある時父は恐ろしい考えに至る。今にして思えば父は母グレースが死んだ時からおかしくなっていたのかもしれない。


 突然妹のルエラに、『この忌々しい呪いはルエラに全部引き受けてもらう』と言い出したんだ。

 何故そんな事をいきなり言うのかと誰もが思った。父が言うには、こんな呪いをかけた悪魔に、(アデル)をけしかけて復讐させるためだったんだ。


 悪魔はもういないんだ。俺たち一族に呪いを残して消えたんだ。と言っても聞かず、毎日のように怪しげなフードを被った者たちが家に出入りしていた。

 ある日父は、妹ルエラにこの虚弱で短命という呪いを全部受けるという儀式をついに実行に起こした。


「そんな事はさせない! ルエラ! ルエラーーーーッ!!」


 反対する俺は薬で眠らされて、鎖で繋がれてしまった。


 気がついた時には全てが終わっていて、一番に違和感を感じたのは体が軽いということだった。


 ルエラは文字通り呪いを一身に受け、元々虚弱なのがさらに虚弱になり、高熱でうなされているようだった。


 俺はルエラから無理矢理離され、その日から【復讐者】として教育された。俺は悪魔の呪いから解き放たれ、メキメキ体が丈夫になって行った。


 はっきり言って今までの虚弱だった世界とは全く違って、世界が明るく見えた。どんな花も美しい! どんな飯も美味い! 空がこんなにも青い!


 俺はどんどん健康的な体になっていった。でも心の隅ではいつも、ルエラに対する申し訳なさでいっぱいだった。


 俺がこうして元気にやっている間にも、ルエラは苦しんでいると思うとやるせなかった‥‥‥


「‥‥‥」


【俺がこうして元気にやっている間にも、ルエラは苦しんでいると思うとやるせなかった‥‥‥】


 ヴァレリアはアデルの言葉を聞いて肩を揺らした。そう、それは私も同じだわ。私がヴァレリア様として自由に、元気にしている間にも、本物のヴァレリア様を苦しませている。


 ニーズがその様子に気づいて私の肩をポンと叩いた。ニーズなりに慰めてくれたようだ。


 そんな時、ある事件が起こった! ルエラの死期が早まったのだ。ルエラが風邪を(こじ)らせて肺炎になってしまっていたのだ。ルエラは抵抗力も落ち、あとは死を待つのみの状態になってしまっていた。


 俺はルエラの元へ走った! 幼少期に離されて以降。一度も忘れた事のない双子の片割れ。制止の声も、腕も振り切って、ただ一目散にひた走る!


 ルエラ! ルエラ! ごめん!


 バタンと扉を勢いよく開いた俺が見たのは、命の炎が消えかかっているルエラの姿だった。ルエラの体は痩せ細り、顔色は真っ青というより白くなっていた。死神が命を狩る鎌を振り上げている様子が俺には見えた!


 俺はその場に崩れ落ち、泣いた!


 なんでこんなになるまで気付いてやれなかったのだろう!!


 その時俺の耳元で女神オリビアの声が聞こえた気がした。


【あなた達が互いに双子を思う気持ちはわかりました。妹を助けたければ、貴方の目を妹の目と入れ替える事で、ルエラの死は免れます。ただし、それはあくまでも応急処置です】


 女神の意見は唐突で、普通の人間なら戸惑うものだった。


「俺の目‥‥‥。を?」


【そうです。ルエラはずっと外の世界に憧れていました。貴方の片目を授けなさい。そして、貴方は外の世界へ出るのです。旅をし、いろいろな世界を見て、そしてルエラを助けて。私とカイヴァーンの愛する子孫よ‥‥‥。命を繋いで】


 ああ‥‥‥。そうか。ルエラはずっと外の世界を見たかったのか! それで俺の片目を授ければ、ルエラは死なず、俺の目で世界を見る事ができるのか!!


「そんなもん、いくらでもくれてやるよ!」


 ルエラが望むものなら何でも。いくらだって、なんだってやってやる! ごめんな。もっと早くこうすればよかった! 双子なのに、ルエラの気持ちを全然わかってなかった!


 俺は眼帯をしている部分にそっと触れる。


「この中にはその時に、ルエラと入れ替えた目が入っている。眼帯はしているが、ルエラにはちゃんと見えているんだ」


『それで女神オリビアに言われて、世界中を旅してんの? お前。そんな怪我してまで』


 ニーズがパンをかじりながら言う。


 アデルは一旦黙ってスープに口をつけた。


「ああ。ルエラは助かったが、一時凌ぎのような感じで、それでもやはり短命という呪いは完全には払えなかったんだ」


 そこで女神オリビアにもう一つ聞いたのが、病気も虚弱体質も治す『青い薔薇』というのがこの辺りにあると聞いて‥‥‥。俺は急いでここに来たんだ。


 女神オリビアはもう肉体を持たなくて目には見えないのだが、俺たち一族を心配して時々様子を見にきていたらしいんだ。鳥に変身したり、鹿に変身したりして。


『あー神ってよくやるよなそういうこと。動物に変身したり、物体になったり』


「それで俺がルエラに片目を授けた時、俺にも‥‥‥。短命という呪いが移ったらしくてね。もう俺には時間がないんだ」


 ヴァレリアは目を見開いて言った。


「まぁそうでしたの!? だからあのように急いでいたのですね? 自分の怪我にも気付かないほどに」


「そうです。だから俺には時間がないんだ‥‥‥です」


 そう言うとアデルは立ち上がり、一礼をした。


「見知らぬ俺みたいな男に親切にしていただきありがとうございます」


「気にしなくていいのよ! そうだアデル! 怪我をするほど焦っているのなら一緒に行きましょうよ! その調子だと短命じゃなくてもいつか死んでいてもおかしくないわ! ルエラを救うのでしょ?」


 アデルは顔をあげた。紫のキラキラした瞳をしたヴァレリアが、こちらを見ていた。


 なんて、吸い込まれそうな綺麗な瞳だろう。アデルは自分の意志とは関係なく顔が熱くなるのを感じた。


 この方達は冒険者なのか? いやきっとそうだ。ドラゴンもいるし、何よりお嬢様? とこの男のオーラが凄まじいし、きっと世界中を旅してきたのだろうな。


「良いのですか??」


 そう言ってアデルはチラッとレクターの方を見る。そこにはすごく不機嫌な様子のレクターがいた。


 レクターはフーッと息をついた。


 まぁ俺も、ヴァレリアの言う通り男だというだけで敵意をむき出しにすることもないな。クソッ、元はといえばシリウスやらセクメトやらその他諸々の男が悪いんだ!


「いいよ、ついて行こう。その方が早く済むかもしれんからな」


「まぁレクター! 嬉しいわ! ありがとう」


『わぁ! 危ねぇ!!』


 ニーズが思わず叫ぶ!ヴァレリアが勢いよくレクターを抱きしめた衝撃でレクターが椅子から転げ落ちた。



なんだか前に聞いた事あるような話ですね。あれはユーリの過去をヴァナルカンドが話した時ですかね。懐かしい!


隙あらばイチャイチャ。こんなにヴァレリア様に愛されてるのにレクターは何が不満なんですかねぇ?


ここまでお読みくださってありがとうございました。



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