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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第四章 新しい仲間
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ヴァレリア様圧倒的今更感

結局アデルの隣の部屋で休むことにしたヴァレリア様とレクターとニーズヘッグ。

夜中、ヴァレリアは唐突に不安になり起きてしまうのだが‥‥‥

 いつのまにか夜中になっていた。私はアデルが心配だったので、そのままオシリスさんの酒場の宿で、久しぶりにレクターに添い寝をしてもらってぐっすりと眠ってしまった!


 ただ私たちはアデルの隣の部屋。レクターとエリーが揃って「そうしてくれ」と頼んだからだ。


 私は別にいいのにな。レクターもいるし、ニーズもいるし。


 レクターはまだ寝てるのかしら? それとも寝たふり?


 ふふっ、思えばニーズヘッグの魔力を取り入れたばかりの時はまだ私の魔力が不安定で、レクターにこうやって添い寝をしていただいて抑えてもらっていたのですわよね。


 でもいつのまにかニーズヘッグは、私の体に馴染んで‥‥‥


 そういえば夢で炎の壁からレクターに救出されたあとから、ますます魔力が強くなった気がしますわ。


 あの後はあんな夢は見なくなったし、彷徨える魂も見えなくなったけど‥‥‥。何か意味があるのかしら? うーん、謎だ!


 まぁ考えても仕方ないですね!


【ははは! 王子はさっきから難しい顔してんな! 物事は自分が心配してるほどそうでもない時が多いんだぜ! なんとかなるって!】


「ふふっ、ニーズヘッグは本当に時々ですけど、説得力のある言葉が出てきますわね」


 カタンッ!


 レクターの腕を離れて、私はバルコニーに出た。


 バルコニーといっても、ここのバルコニーはお城やレクターの別荘よりはうんと小さい。


『ヴァーリャ〜、眠れないのか?』


「あっ、ニーズ。ちょっとね。考え事しちゃって」


『考え事ぉ??』


 すごく、いまさらな事なんだけど。馬鹿みたいな事なんだけど‥‥‥


「ニーズヘッグが言う通り。物事は自分が心配してるほどそうでもない時が多い、とは思います。でも私は、時々思うんです。もし何かの拍子でニーズヘッグと私の契約が終わったら。私はまた虚弱なアナスタシアに戻ってしまうのかなって。私がアナスタシアに戻ったら、もう‥‥‥。もう、二度とこんな風には冒険できない」


 それに(アナスタシア)は多分、薬を飲んでいるといっても、短命だと思う。アナスタシア様とハンニバル様には悪いけど、(アナスタシア)は多分長くは生きられない。


「それを考えたら。すごく怖くて。私、王子の事わがままとか言ってるのに、実は私が一番わがままなの! だって、いつかは元に戻る日が来るかもしれないのに」


 それが来ない日を、待ち望んでいるなんて‥‥‥。そんな日はずっと来なければいいと思っているなんて!


「‥‥‥。最低じゃない? 呆れるよね? アナスタシア様に私の寿命を預けて、自分は呑気にさっさと城を出て冒険して、おまけに王子と婚約までして‥‥‥。私のわがままで王子について来てもらってるなんて」


 しかもそれを黙っているなんて‥‥‥


『ふーん』


「ふーんって‥‥‥。そんな他人事みたいに」


 ニーズヘッグはクソデカため息を吐きながら言う。


『てか今更すぎ! 普通そういうのは序盤で悩むことなんじゃねぇのか!? そっちの方が驚きだわ! それにヴァーリャが言ったんだろ!「あの顔が欲しかったなら差し上げます」って。それは、顔とか体じゃなく、自分は誰になろうと、心が変わらなければそれでいいっていう意味だと思ったんだけどな俺様は! あん時のヴァーリャは、マジでかっこよかったぜ!』


「でも、レクターはこの顔と体の方がいいって。好きって言ってくれましたわ」


『王子もヴァーリャと同じ気持ちだと思うぜ! 例え入れ替わった先がアナスタシアでもヴァーリャでも、どっちも愛する覚悟なんだろ知らんけど』


「でも」


『でももクソもないの! そんなに不安なら、いつか来るその日のために、なんか一発で体が超元気になる薬草でも探しに行ったらいいじゃねぇか? ははは! テキトーこいたけど俺様結構いいこと言ったんじゃね?』


「ニーズヘッグ‥‥‥」


『なんだよ? お礼はパンでいいぞ? 俺様ヴァーリャと契約してから肉食から変わっ』


 私はニーズを抱きしめていた!


「ありがとうニーズヘッグ! それすごく名案だわ!!」


『なななななんだよ王子といいヴァーリャといい//ま、まぁお礼はさっき言った通りパンでいいぜ! 俺様ヴァーリャと契約してからそれまで肉が大好きだったのに異常にパンが好きになっちまったからな!』


 バァン!!


「そうだぞヴァーリャ! 俺はどちらかというと今のヴァーリャの方がいいが、仮にアナスタシアに戻っても大丈夫! 好きな気持ちには変わりない! ただしその時は血で血を洗う戦いが待っているだろうがな!」


 いつから聞いていたのだろう。急にレクターが何やら不吉な事を叫びながら出て来た!


「ヴァーリャ、心配するな。ヴァーリャに何があろうと、俺はお前を守るよ。ニーズヘッグとの契約も、ダルヒルデの言葉も、きっと何か意味があるんだ。それに元々のヴァーリャがニーズヘッグを使って呪いをかけたのが始まりだろ? だが今のお前たちはこんなに絆が深い。だからそんなことは起こらないよ!」


 レクターはぎゅーっと私の体を抱きしめてきた。ああ、この温もり、この匂い。私が今感じている全てはヴァレリア様の体なのだわ。でも伝わって来る感覚は今私が感じている。レクターの言う通りかもしれない‥‥‥。私がアナスタシア様と入れ替わったのは、きっと何か意味があるのだわ。


 それが何かは、今はまだわからないけど‥‥‥


「レクター、ありがとう」


 私はレクターを抱きしめ返す。


『俺様も混ぜろ! ヴァーリャのおっぱいに(さわ)れるのは俺様だけなんだからな!』


 ボヨヨン!


「まぁニーズ! ツノが当たってくすぐったいですわ!」


「ニーズ! 羨ましいぞこの野郎!」


「うるっせーぞ! お前ら静かにしねーとうんこ汁かけるぞ!」


 私たちがギャーギャーやっていると近所の方からお叱りを受けてしまった! うんこ汁‥‥‥。そんなものをかけられたらたまったものではない! 私たちはすぐに避難した!


 * * *


 翌朝、まだお店は開いていない。オシリスさんは自宅へ戻り、エリーはそのままセクメトと一緒に仮眠をし、ネフティスは娼館のマダムに気に入られてそこで寝泊まりしており、酔い潰れたセトが床に転がっている以外はシーンと静まり返っていた。


 私がニーズヘッグに同化して朝食を作り、それを《主にニーズヘッグと私が》(むさぼ)り食べている時だ。


 アデルが降りてきた。


「アデル! 起きたの? 具合はどうですか?」


 私はアデルをレクターと私が座っていた席に移動させた。レクターの顔が一瞬歪んだ気がするけど無視ですわ。大体レクターは男というだけで敵意向けすぎなのですわ!


 アデルは昨日より顔色がずっと良くなっていた。きっとエリーの回復魔法が効いたのね! よかった!


「き」


 アデルが口を開く。き?


「昨日は本当に申し訳なかった‥‥‥。何から何まで」


「まぁ座れよ。一晩中何も食わなくて腹減ってるだろ」


 レクターが椅子を引いてスープを促す。


「まぁレクター! 優しいのね!」


 私は嬉しくなって思わずレクターに抱きついた!


『ハイハイお二人ともそこまで! お前たちのせいで話がちっとも進まねぇ! アデル、食べながらでいいから事情を話してくれ。それで昨日のことと朝食のことはチャラにしてやるよ。まずは食べるといい。どうやらお前は生き急ぎ過ぎてろくなもん食ってないみたいだからな!』


 アデルはニーズヘッグを見ると席について、遠慮がちにスープに口をつけた。


「美味しい‥‥‥。あたたかい。こんな温かいスープは、ルエラが病気になってから。家を出てから食べた事がない」


 ルエラ‥‥‥。昨日の夜も寝ながら呼んでいた名だわ。


「俺は‥‥‥。俺の名前はアデル。うまく話せないかもしれない。俺はずっと一人で旅を続けていたから」


「大丈夫よ! 続けて!」


 俺は女性の顔を見た。短い赤毛に、紫の瞳の美しい女性だ。ルエラも、もしかするとこの女性のように快活に動けていたのだろうか?


「俺の一族は、一族といっても平民だが。悪魔に呪われているんだ。生まれつき虚弱で、短命という呪いを」


 美しい女性とその隣にいる男、小さなドラゴンは顔色ひとつ変えず聞いている。


 もしかして、こういう話を聞くのは初めてじゃないのか?


 俺はその様子に多少驚きつつも、スープを飲みながらゆっくりと話し始めた。



うーん、私もニーズヘッグの言う通り、何故今更そのことで悩むかね?と思ったんですよ(?)

う、うんこ汁嫌ですねぇ〜!この話では詳細は省いてますが、中世のヨーロッパはまだ下水が発達してなかったのでそこら辺に人糞が(以下略)


口下手で寡黙なアデル!その一族の呪いとは!?語られるのか?大丈夫かアデル?心配だなぁ〜 

なかなか本題に入らなくてすみません汗( ;∀;)


ここまでお読みくださってありがとうございました。



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