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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第四章 新しい仲間
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アデル

男の名前はアデルと言った。

ニーズヘッグとエリーとレクターは、またヴァレリアが変なことに首を突っ込もうとしている事に気付くが‥‥‥


※視点がウロウロして読みにくいかもしれません!

 ん‥‥‥。ここは?


 見慣れない天井。これはベッドか? 俺は、さっきまで何をしていた? 酒を頼んで、酒場には似つかわしくない美しい女性に布を渡されて。それから‥‥‥


「あら、気がつかれました? ああ、動かないでください。まだ出血がひどいですから」


 私はエリー。先程までセクメトのお守りをしていたのだけど、セクメトが寝てしまったのでその後をセトに丸投げして来ました。


 何やら階下が騒がしいので、様子を見に行くと。そこには王子の膝の上に乗って騒いでいるお嬢様と、血だらけの男を介抱するオシリスさんの姿が。


 私は全てを察しましたよ! ええ! また何かお嬢様が余計なことに首を突っ込んだに違いないと!


「お嬢様はまったく人がいいにも程がありますわ。まぁそこがお嬢様のいいところですけどね」


 私は男の怪我に光を当てて傷口を塞ぐ。この方、どうやら動脈に怪我していたようで一歩間違えば死んでいましたわ。運がいいというか何というか‥‥‥


「あ、起きました? アデル!」


「は‥‥‥」


 男の名前はアデルというらしかった。お嬢様の姿を見た途端、苦しそうに息を()いた。


「私はヴァレリアよ! 貴方かなりひどい怪我をしていて、栄養が足りなくて倒れてしまったのよ」


「な、何故‥‥‥?」


 ヴァレリア‥‥‥。この美しい女性だ。俺に上等の布を差し出して来たのは。

 何故俺みたいな男を助ける? こんな、見ず知らずの何も知らない男を。


『ヴァーリャはこういう奴なんだよ。目の前で弱っている人間がいたら手を差し伸べずにはいられないの! 俺様にはまったくわからん感覚だがな〜』


「ド、ドラゴン‥‥‥」


 アデルの目の前には小さな羽根をパタパタさせた小さなドラゴンがいた。


「おい、お前」


 呼ばれたアデルの視線の先には王子の姿があった。見るからに不機嫌な王子の。


 あっ、私は「ぜひアデルのために」とお嬢様に頼まれたので食事を作って来ましょうかね。お嬢様の命令なら仕方がないですわ。


「一応傷は塞ぎましたけど。急には動かない方がいいですわ。下で何か作って来ますから、大人しくしていてくださいね。貴方は栄養も足りていないようですので」


 バタン、と音を立ててエリーが部屋から出て行った。


『まぁヴァーリャはなんか人を惹きつける魅力があるんだよな〜、俺様もそうだけどな』


 そう言ってニーズヘッグはヴァレリアの胸の谷間に戻って行った。


「おいお前、ヴァレリアが助けたからといって勘違いをするなよ。ヴァレリアは俺の婚約者なんだ」


 王子はそう言うとヴァレリアの体を掴んで自分の方に寄せた。


「いた! もうレクター! 乱暴はよしてちょうだい!」


「ああしまった、すまんヴァーリャ! つい力を入れてしまった! 大丈夫か?? 跡になっていないか!?」


 王子は慌ててヴァレリアの体中をさすって確かめる。


「も、もう大丈夫ですわよ!// 痛いと言うのも冗談ですわ! ただアデルにそんなに敵意を向けて欲しくなかったのです!」


「婚約者‥‥‥」


 俺は首だけを動かして二人を見る。この二人は周りとは違って何か得体の知れないオーラがある。二人とも冒険者のような格好をしているが、俺が今まで見て来た冒険者とは明らかに違う。


「まだ話さない方がいいですわよ」


 そう言って優しく微笑む美しい女性。確かお嬢様、と呼ばれていたな。どこか良い所の出自なのだろうか? その隣にいる女性の婚約者と名乗る男。


 この男こそ、近寄りがたい雰囲気がある。


 俺はフーッと息をついた。

(心配しなくても、俺はそんな気を起こさない)

 と、男に言おうとしたが。意思に反して出たのはため息だけだった。どうやら今出て行った女性が言ったように、俺はかなり疲弊していたようだ。


「また話せるようになったら話を聞かせてちょうだいね」


 ヴァレリアという名の、お嬢様が言ったのが聞こえた。


 《お兄ちゃん、またお話聞かせてね》


(う‥‥‥。ルエラ‥‥‥)


 アデルは何事かうなされると、静かに目を閉じた。


「アデルは寝てしまったな、ヴァーリャ。どうする気だ? 俺はもうここまでしたらいいと思うのだが。」


 こいつの宿代もこちらが払ったし、忙しいエリーに無理を言って回復魔法も使わせてしまったし、アデルが起きればあとは自分で何とかするだろ。

 こいつの体が傷だらけだったのは、ヴァレリアの言うとおり大きな魔物と戦って下手こいたのかもしれないし。


 こいつは見たところ魔法も使えない、セトタイプの戦士だな‥‥‥。しかもセトと違い、冷静に見えて向こう見ずなタイプだ。セトは豪快に見えてバトルとなったら慎重だからな。

 怪我してるのに気にせず突っ込む性格のようだし。だから今回も自分の状態がどうなってるか知らずに敵か何かに突っ込んだんじゃないのか?


 いや、マジで知らんけど。


「‥‥‥。えっ? 何がですの? 何か困っているようでしたし、怪我もしてたし、話だけでも聞いてみましょうよ!」


 そう言って瞳をキラキラさせているヴァレリアを見る。


 俺は頭を抱えた。ヴァレリアがこういう瞳をギラギラさせた時は、もう何を言っても聞かないのだ。



レクター敵意剥き出しでワロタ。

アデルは一見普通の戦士ですが、結構猪突猛進なタイプです。ボサボサの黒髪からも分かる人なら分かるけど結構だらしないところもあります。


謎の男アデル。これからヴァレリア様たちと一緒に冒険したりするのでしょうか?!


ここまでお読みくださってありがとうございました。


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