レクターの久々のわがまま
すみません今回も短めです!レクターたちは久しぶりにオシリスの酒場を訪れるのだが‥‥‥
エリーがドアを開けた瞬間、だーだー!! という声が店の中に響いた。
「え? 何かしら今の声は?」
「ん?」
エリーの目の前には、赤ちゃんを抱いているセトの姿があった!
「ヒッ‥‥‥!」
一瞬でエリーの目の前が真っ暗になった! もしかしてセトの子供!? 隠し子?! 隠し子なの!?
「おお! エリー! 来てくれたんだな! 助かったよ、実は」
「セセセセト‥‥‥。そそそそその赤ちゃんは‥‥‥」
エリーが震えた声で言う。
「ああ、この子はセクメトだよ。俺は知らなかったんだが、何でもユーリの親父さんのフランシスっていうすごい魔法使いがいてな。その人がセクメトに呪いをかけてこんな姿にしてしまったらしい。可愛いだろう? こんな姿じゃあ、もう生意気な口はきけないぜ」
ああ、そういう事だったのね‥‥‥
「セト、私誤解をしてしまっていたわ。てっきりその子がセトの隠し子かと思って‥‥‥。ああ、安心したわ」
「なっ//かっ、隠し子なんかいるわけないだろ! 俺はそんな事ぁしねぇよ! エリーがいるのに‥‥‥」
セトのその言葉に嬉しそうにエリーが言う。
「そうね、セトは不器用ですものね。たとえ隠し子がいても、隠しきれそうにないですもの」
エリーがそう言ってセトの頬を撫でる。レクターはその二人のラブラブな世界に無表情。ニーズは呆れ、ヴァレリアは目をキラキラと輝かせていた。
「ああ〜久しぶりですわこの感じ! いいですわよいいですわよ! もっとやってちょうだい!」
「ヴァーリャ、何を言っているんだ。とにかく入ろう」
店の入り口でうっとりしているヴァレリアの手をレクターが引き、まだ準備中の酒場のドアはバタンと閉められた。
「なんで準備中なんだ? そいつが原因か?」
レクターは不機嫌な様子でセクメトを指して言う。
「ああ、こいつがちょっとグズっててな。さっきまでずっとイヤイヤ言ってたんだ。メジェドのおもちゃを持たせたら落ちついたよ」
セトの腕の中のセクメトはいきなり人がドドッと入って来た事にびっくりして目をまんまるにしていた。
「まぁなんて可愛い子! 抱いてもいい?」
ヴァレリアがそう言うとレクターが顔をしかめる。
「ヴァーリャ。お前はこっち! 俺の隣にいろよ!」
そう言ってレクターがヴァレリアを引き寄せたのはレクターの膝の上だった。
ちょっ、ちょっと!//
「なっ、なんでこんな事になるのよ! ちゃんと椅子があるのに! レクター離してください」
「嫌だ。セクメトが赤ちゃんになろうとヴァーリャには触らせたくない。ヴァーリャがセクメトを触らないと言うなら離してやる」
そう言ってレクターはツーンと顔を逸らす。いつのまにか酒もグラスも自分で用意していた。
「まぁ! 呆れた! ひょっとしてレクターは赤ちゃんに嫉妬してるんですか?」
ガタンッ!
「ああ、そうだよ。俺はヴァーリャに近づく者は誰だろうと赤子だろうと嫌なんだ」
「なっ、なっ! なんて大人げのない! レクター!やっとマシになって来たと思ったのに!」
「何が?」
『なんだまた王子のわがまま病再発かぁ〜?? 一生治らないんじゃないか? はっはっは! ウケるー!』
腹を抱えて笑うニーズヘッグ。笑い事ではないわ!
「ん〜ヴァーリャ、この距離は久しぶりな気がする。相変わらずいい匂いがするなぁ」
ち、ちょっと//レクター近いわ! 不意打ちのそういうのはまだ慣れていないのだから勘弁してよ!
「レクター、いきなりのそれはやめてよ! 驚くわ! 胸がドキドキするんだから!」
「んー??」
もう! わざとやってるの?? ちょっとセクメトを抱っこしようとしたくらいで、全然離してくれそうにない。すごい力で押さえつけられてるわ! このクソ馬鹿力!//
レクターはヴァレリアを無視してそのうなじをクンカクンカしている。もう完全に変態のそれだ。
『はぁ、王子にも参ったな。こうなったらテコでも動かないぞ』
俺様シーラネという感じでニーズヘッグは酒の棚を漁り始めた。エリーとセトはセクメトをあやしていて、二人のやりとりに突っ込むどころでは無さそうだ。
「まぁセクメト、こんな小さくなって。よほど暴れてしまったのね」
そう言ってエリーはセクメトを腕に抱く。
「ふふふ、ほっぺがぷにぷにで可愛いわ。お腹は空いてない?」
「だー! だー! しぇくめとぉ、エリーしゅき、セトから聞いたっさ」
「あらあら、記憶も退行しちゃったの? 森にいた頃は私に攻撃をしかけていたのに」
エリーがコロコロと笑う。
「どうやらそうらしい。お嬢を見ても何の反応もしないしな」
きらきら きらきら おほしさま
あなたは とっても ふしぎだわ
たかく たかく せかいの うえで
あんなにきらきら輝いて
きらきら きらきら おほしさま
あなたは とっても ふしぎだわ
エリーは子守唄を歌いながらセクメトの背中をトントンとした。
セクメトはエリーにすりすりしながらコテンと寝てしまった。本当に可愛いですわねぇ。
「私、ちょっと裏に行って来ますわ。ここはいずれ騒がしくなりますから」
そう言ってエリーは酒場の裏にある休憩所に行ってしまった。その様子を見てヴァレリアが口を開く。
「レクター、今の話聞きました? セクメトは記憶も赤ちゃんに退行してしまったのですって! だからもう離し‥‥‥」
「嫌だ」
「もぉ‥‥‥。レクターも子供みたいですわよ」
「それでも離したくないんだよ。記憶があろうとなかろうと。あいつはヴァーリャを襲おうとしたやつだ」
「‥‥‥」
心配しなくても、私にはニーズヘッグもいるし、いざとなったら私も魔法も使えるのに。ただその全てがリスクがあるものですけどね。でもなんか。私は嬉しいのかな‥‥‥。レクターに嫉妬、されて//
「レクター‥‥‥」
私はレクターに自然に頬を寄せていた。私がそうしたかったから‥‥‥
ニーズヘッグがヴェ〜ッという感じでこちらを見ていた。
と、そこへ。
「おお、みんな来ていたのか。すまんすまん。今店を開けるから。ホルスが逆ナンされてな。客にお持ち帰りされそうになってたのを止めていたら、こんな時間になってしまった。ハハッ、ホルスは純粋だから困るな」
オシリスが慌てて店の看板を『営業中』に切り替えた。
※ホルスは色々危険だからという理由でケルベロスとオシリスの家でお留守番です。
オシリスの酒場いっつも開いたり閉まったりしてんな。なかなか展開が進まなくてすみません汗(゜o゜;;
次回、第四章の展開は進むのか!?それともしないのか!?
ここまでお読みくださってありがとうございました!