再び仲間の元へ
はじめに言っておきます。今日の話はとても短いです。
「ええっ!? 本当にそんな事があったんですの!?」
翌日、俺たちはオシリスの酒場に向かって馬を走らせていた。セクメトの事があの後どうなったのか気になっていたのだ。エリーもお店を気にしていたし。
「うん、確かにヴァレリアは入れ替わる前のアナスタシアで、『ダルヒルデ』を助け出した後は瞳以外はヴァレリアだったよ」
「まぁ! そんな事もあるんですのね。では夢の中の私はまだニーズヘッグに出会っていなかったのですね。でも不思議ね、ヴァレリア様がニーズヘッグに出会うのは幼い時でしたのに」
「まぁ夢の中だからな、夢の中では時間軸が少し歪んでいるのかもしれないな。それにしても本当にヴァレリアがヴァルキリアの末裔だったとはな」
そもそもヴァレリアの夢の中ではヴァルキリアがいた時代だったしな。頭がごちゃごちゃして来たな。まぁ色々と不思議な部分がある事は仕方がないだろう。
「ところで昨夜はそんな夢を見なかったのか?」
「ええ! レクターが私を救ってくれた後は夢を見る事もなくぐっすりよ! それに体調もすこぶるいいし!」
ヴァレリアはそう言って笑ってみせた。かっ、可愛いな相変わらず//
「それより私を助けてくれてありがとう。やはりレクターは私が助けて欲しい時にいつも助けてくれるんだわ」
「当たり前だよ」
俺はヴァレリアにニッコリと笑い返す。
「まぁレクター!// 今の言葉とその笑顔のセットは卑怯ですわよ!」
「? 何が卑怯なのだ?」
「〜〜〜// もういいです!」
と言ってヴァレリアは真っ赤な顔を俺から背けた。また照れているのか? 可愛いなぁ。
とはいえ‥‥‥
ダルヒルデたちはあの後どこに向かったのだろう?それに「あるべきところ」とは‥‥‥? 色々と謎が多すぎるな。
『ははは! 王子はさっきから難しい顔してんな! 物事は自分が心配してるほどそうでもない時が多いんだぜ! なんとかなるって!』
ニーズヘッグがヴァレリアの胸の谷間からピョコと顔を出し、俺の真剣な顔を指差して笑う。
「ほほほ、本当ですわ! レクター。なんて怖い顔!」
こ、このお嬢様は! 俺はヴァレリアの夢の中でのダルヒルデの言葉の意味を考えていたってのに!
でもそうか‥‥‥。そういえばそうだよな。考えても仕方ないもんな。
「言われてみればそうだな! ははは!」
俺はヴァレリアの言う通りに、夢の中のダルヒルデを助けただけ。ヴァレリアももう悪夢は見ていないようだし。
それにニーズヘッグも生きている。ヴァレリアの瞳も夢の中とは違い、紫色。
バルカにいた頃の俺は、この紫の瞳が不気味で嫌だった。でも今はこの紫の瞳が、何ものにも変えられない程愛おしい。
ははははは、と大爆笑を繰り広げる茶番を見て、殿のエリーは首を傾げた。
この三人は何がそんなにおかしいのかと‥‥‥
* * *
「少し早く来すぎたかな?」
オシリスの酒場のドアノブには、《準備中》の札が吊るしてあった。
「うーん? そんな事はないと思いますけどねぇ」
エリーがそう言ってドアを開けた瞬間、だーだー!!という声が店の中に響いた。
すみません次の話につながるための小話をひとつ書きたかったのです。
「物事は自分が心配してるほどそうでもない時が多いんだぜ! なんとかなるって!」
ニーズヘッグのこの言葉は、私的には真理だと思っています。テスト自信がない〜って思っていたら、案外簡単だった。という時がありますよね!なかったらごめんなさい。
ここまでお読みくださってありがとうございました。