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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第三章 セト達の秘密
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番外編・バルカ学園のお正月

明けましておめでとうございます!

新年早々はなくそ学園です。

頭空っぽにして読んでくださいね。

 私はヴァレリアよ! この時期は学園はお休みなの。だから‥‥‥。


 思いっきり自室でジャージを着てだらだらゴロゴロしてるわ!


 漫画! ラノベ! ゲーム! アマプ●! ネ●フリ!


 ああ、楽しみなことがたくさんあるわ! 時間がいくらあっても足りないわ!


「うははは! カップラーメンもあるし、万全の引きこもり対策! さすが私!」


「お嬢様〜! お友達という方がいらっしゃってますよ」


 私がくつろごうとしたその時、階下にいるお手伝いさんから声をかけられた。


「お友達? 誰かしら?」


 私はお手伝いさんのエリーに返事をして、お友達の顔をモニター画面で確認した。


「あっ! アナスタシアだわ!」


 一体何の用かしら? アナスタシアと私の家は割と近くにある。


「アナスタシア! よく来たわねいらっしゃい! どうしたの?? こんな朝早く」


「貴女なんて格好をしているのよ?! ほらすぐ着替えて! 初詣に行くんでしょ?」


 アナスタシアが若干怒ったように言う。んん? 私そんなこと言ったっけ?


「言ったわよ! 全くもう、すぐ忘れるんだから。どうせそんな事だと思って私が迎えに来たのよ」


「わぁ〜アナスタシア! ありがとう! ちょっと待って貴女のその服綺麗な服ね! なんていう服なの?」


 褒められて嬉しいのか、ふふんという感じでアナスタシアは言った。


「これは着物よ、初詣に行くためにお世話になってる服屋さんに小紋を作らせたの。いいでしょうこれ? 一面梅の花の柄なの」


 はぇ〜? 着物? 私もそういう格好で行かないといけないのかな? でも着物なんてうちにあったかな?


「お嬢様にも作らせていますよ。こちらへどうぞ。私が着付けて差し上げますわ。アナスタシア様はリビングでくつろいでいて下さいませ。暖かいお茶を用意していますので」


 えっ? エリー着物なんか作らせてたの? いつのまに!?


「あっ、す、すみません! お邪魔します」


 アナスタシアは慌てて姿勢を正して挨拶した。


「エリー、アナスタシアごめーん! ちょっと待っててねアナスタシア。エリーお願いね!」


 しばらくしてリビングでお茶を飲んでいたアナスタシアの前に、着物を着たヴァレリアがやってきた。


 思わずアナスタシアは目を見開いた。ヴァレリアの着物姿はあまりにも似合っていた。


 シンプルな藤色にシンプルな葡萄蔦(ぶどうつた)の柄の小紋。帯もこれまたシンプルな白。


「ヴァレリア、ずいぶんと大人っぽい着物を作ってもらったのね。とても素敵よ! 似合ってる!」


 アナスタシアが目を見開きながら口を開く。


「アナスタシア、嬉しい! でもちょっと帯が苦しいわ」


「さっきまでゆるゆるジャージ着てたものね」


 アナスタシアはクスクスと笑いながら、和装コートを羽織る。同じく和装コートを羽織った私はエリーに手を振って家から出た。


「そういえば貴女朝ごはんはいいの?」


「いいのいいの! これから屋台でしこたま食べるつもりだから!」


「あのねぇヴァレリア‥‥‥。まぁいいわ。貴女はいつも花より団子だったものね。でも(むさぼ)り食うのは参拝してからよ。屋台の汚れや煙をつけたままだと神様に失礼でしょ?」


 アナスタシアはこのような儀式ごと? に妙に厳しい。


「はーい! ん? あそこにいるのはレクター君じゃない?? 隣にいるのは誰かしら?」


「学園では見ない顔ね」


 アナスタシアもレクター君の方に視線を向ける。


 レクター君は背が高くて目立つのですぐ見つけられた。


 あ、あれって私がこの間あげたマフラーだ。レクター君の濃いグレーで統一されたコーデに、赤いマフラーが浮いてる。でも不思議とレクター君が着るとオシャレに見えるな? なんか腹立つな?


 こちらには気付いていないようだが、どうやら逆ナンされているようだ。二、三人の女子君たちと話している。レクター君はイケメンで背も高いから当然なんだろうけど。


 なんだろう、なんか‥‥‥。別にいいんだけど、なんか嫌だな。


「行きましょうアナスタシア!」


 私はアナスタシアと手を繋ぐと急いで鳥居の方へと足を向けた。


「えっ! レクター君に一言声をかけなくていいの? 貴女、レクター君が好きなんじゃなかったの?」


「だっ、誰があんなクソアンチのことなんて好きになるもんですか!//それより早くお参りして屋台という屋台を食い散らかすわよ」


 そう‥‥‥。と言って納得いかないとでもいうようなアナスタシアの態度を見て見ぬふりして、私たちは賽銭箱にお金を入れた。


「ヴァレリア、神社の参拝方法は二礼二拍手一礼よ」


「マカロンガレットシュークリームね! わかったわ!」


「全然違うわよ!(怒)二礼二拍手一礼!」


 アナスタシアはこの手の事に厳しい! 私はどつかれながらなんとか参拝を済ませた!


(今年は全国の美味しいものをたくさん食べられますように!)


 * * *


「神社といえばおみくじよね。これで神様の意思を伺うことができるのよ!」


「はぇ〜? そんな御利益(ごりやく)のあるくじなのこれ? でも面白いからやってみるわ!」


 私はお金を払って六角形の木箱を巫女さん? に渡された。

 私が戸惑っていると、巫女さんは少し微笑んで「よく振ってくださいね」と言われた。よし、握力34の実力見せてやろうじゃねぇか? と思い、思いっきり振ろうと思ったらアナスタシアがこちらを睨んでいたからやめた。


 ちょっと振ってみると何か木の棒が出てきた。それを巫女さんに渡し、巫女さんが木の棒の代わりに紙を持って渡してきた。


 私が頭にハテナマークを浮かべていると、「どうも有難うございました」と言ってアナスタシアが私を人の少ない道に案内してくれた。


「この時期は人が並んでいるんだから早くしないといけないわ、貴女小さいのだから。危うく潰されるところだったわよ」


「ねぇ! アナスタシア私この紙渡されたんだけど! 何これ? 何の意味があるの?」


「そうね、一緒に開いてみましょう。そこから(ひら)けるわよ」


 そう言って私たちはせーの! でおみくじを開く!


「「大吉!!」」


「ねぇねぇアナスタシア! 大吉ってどういう意味!?」


「そうね! これ以上なく運がいいって事よ!」


「うはぁ〜! それは夢が広がりんぐね!」


 私たちはお互いに顔を見合わせて笑った。


「ヴァレリア?!」


 声がした方を振り向くと、そこには巨人(長身ともいう)の二人組がいた。


 レクター君だ‥‥‥。私はさっきまで逆ナンを受けているレクター君を思い出した。けっ、大人しくナンパされてればいいのに。なんで来るんだよ。私は何故かわからないが一瞬で不機嫌になった。


「あけましておめでとう。今年はいい年になりそうだな。偶然愛しのヴァレリアに会えるなんて」


 いいいい愛しのヴァレリア!?!? またそんな歯の浮くようなセリフを//どこで覚えてくるのよそんな言葉! やはり気に食わないわこのクソアンチ!


「あ、あけましておめでとうレクター君。あの、そっちの人は??」


「ああ、こいつはウードガルザ。俺の前の学校の親友なんだ」


「よろしく。ヴァレリア。そちらの黒髪の美人さんもよろしく」


 ウードガルザはそう言って私に握手を求めてきた。金髪に目の色まで金色! それにレクター君と違ってお肌が真っ白だわ。レクター君に負けず劣らずの綺麗な顔! さぞかしモテるタイプと見た。


 アナスタシアはウードガルザに名乗る事もせず、にべもなくこう言った。


「ヴァレリア。私はもうお参りも済んだし帰るからね」


 アナスタシア! えっ!? 帰っちゃうの? まだ屋台があるのに! アナスタシアはレクター君と私の顔を見ながら小声で耳打ちをしてきた。


(屋台はレクター君と楽しめばいいわ。レクター君の親友もきっと帰るだろうから)


「んなっ! なっ! だっ! 誰がこんなクソアンチ‥‥‥」


「なぁ、ヴァレリア。これから暇なら、屋台を回らないか?」


「ほぁ??」


 いつのまにかウードガルザ君も、アナスタシアの言う通り姿を消しており、アナスタシアも当然姿を消していて、その場には私とレクター君の二人だけになっていた。


 こんな漫画みたいな展開ないだろうが!! 現実世界では確実に嫌われるぞ! 友達より男を取った女って! いや、アナスタシアがいい友達でよかった泣 


 ありがとうアナスタシア!


 ‥‥‥。なんで私アナスタシアに感謝してるの?


「ヴァレリア、その格好‥‥‥。すごく似合っているよ。他の男には見られたくないよ」


 ん? 格好? あー! そういえば初めての事ばかりで意識してなかったけど、私今日着物を着てたんだ!


「シンプルだけど、上品で美しい。周りの浮かれている女性たちよりずっと目立っているよ」


 周り? 言われて気付いたが、初詣に着物を着てる女子君たちはたくさんいるけど、私の着物の柄より大ぶりな柄で、色も心なしか派手な気がするわ。流行の柄と色なんだろうけど。

 私のシンプルな着物が逆に目立っているわ! いや、目立ちたくてこの着物着てきたわけじゃないけど??


「ヴァレリア、屋台を回ろう? 参拝はもう済ませたんだろう?」


「う、うん。おみくじも引いて‥‥‥。あ、でもこれどうしたらいいんだろ」


「どんな結果だった? ああ、大吉か。それなら財布に入れとけばいいよ」


 そうなんだ‥‥‥。私はレクター君の言う通りおみくじの紙を畳んで持ってきていた財布に入れた。

 着物に合わせて持ってきたこのバッグ、小さいから財布しか入らない。それと‥‥‥


「レクター君もおみくじ引いた? どうだった!?」


「あ、いや俺は凶だったんだ。まだ持ってるけどね。今から結びに行くところなんだ」


「凶? 一体どういう意味なの?」


 私はレクター君のおみくじを覗き込んだ。項目は色々あったが、どの項目にもいい事は書いてなかった。だがしかし、「恋愛」の項目だけは違った。


『恋愛 良き。お互い通じ合っている。流れに身を任せよ』


 なななななんでこの項目だけこんな事書いてあるのよ!//


「ちょっと結びに行ってくるから待ってて、と‥‥‥」


 言いかけたレクター君は、私の手を引いて自分の身体の方に近づけた。


「人が多いから。ヴァレリアは小さいから、踏みつけられたらいけないから」


 ち、小さい小さいって! レクター君もアナスタシアと同じような事をいうのね。ていうかレクター君が巨人すぎるんよ! 駆逐すんぞ?


 あ、それより‥‥‥


「結ぶって何?」


「ハハッ、まぁ神頼みみたいなものだよ。おみくじの結果がよくなかった人はこうやっておみくじを結んで、神様に縁を結んでもらって、なるべく物事を良い方向に導いてもらおうってね」


 そう言ってレクター君は私じゃ届かないような木の枝におみくじを結び付けていた。


 レクター君といいアナスタシアといい、こういう事にやけに詳しいな!


 それから私は、屋台という屋台に出ている食い物を片っ端から食い散らかした。焼きそば、うどん、唐揚げ、カステラ焼き、たこ焼き、イカ焼き、わたあめ、お好み焼き‥‥‥


「ハハッ、ヴァレリアは小さいのによく食べるな」


「屋台に出てる食べ物ってみんな美味しそうでついつい食べたくなるんだよね! あっ、これくださーい」


 私は食事の締めにチョコバナナを頼んで、ベンチに腰掛けた。


「なんかこの間のクリスマスイブを思い出しちゃった! レクター君はあの時も私の食べっぷりに驚いてたよね」


「ははは、そう言われてみればそうだな」


 と、レクター君が私の首元を見た。


「ヴァレリアはいつも首元が寒そうだな。その着物にはマフラー的な物はないのか?」


 私はチョコバナナを貪り食っている最中で、レクター君の話は耳に入ってこなかった! 何かを食べている時の私は例えるならゾンビなのだ! 何も聞こえない! 何も考えられない。


 と、私のバッグがコロコロと落ちた。当然チョコバナナを夢中で食っている私には見えない。


「ヴァレリア、落ちたぞ」


 そう言ってレクター君が私のバッグを拾ってくれた。


「ん? 何だこのはみ出しているのは?」


 レクター君は私のバッグからはみ出している物をバッグの中に戻そうとしている。


「‥‥‥。これは‥‥‥」


 俺のあげたマフラーだ。こんな小さなバッグにぎちぎちに詰め込んで。何故巻かない? 着物に合わないから? それとも忘れてるのか?


 俺の眼前にはチョコバナナのチョコを必死に食べているヴァレリア。


 俺の顔がみるみる熱くなっていく。やばい、可愛い。ヴァレリア。抱きしめたい‥‥‥


 俺はマフラーを取り出し、ヴァレリアの後ろから巻いた。


「む?!」


「ヴァレリア、俺のあげたマフラーを持って来ていたんだな。どうして巻かなかったのだ? そんな寒そうなのに」


 俺が聞いた途端ヴァレリアの顔が真っ赤になった。チョコバナナを半分ほど食べてヴァレリアは小さい声でボソボソと呟いた。


「私、たくさん食べるから。万が一こぼして汚したくなかったから‥‥‥//このマフラー、大事だから」


 なっ‥‥‥!//


 なんだこの可愛い生き物は?? ヴァレリアは確かによく食べるが、全然食べ方は汚くない。ポロポロこぼした事などもないし。


「ヴァレリア‥‥‥」


 気が付いたら俺は、後ろからヴァレリアを抱きしめていた。


「ファッ?!」


 おいおいおいおい、これっていわゆるだいしゅきホールド? とかいうヤツじゃないの?? 私はさっきのマフラーを巻かれた時にもドキッとしたのに。その上こんな少女漫画の世界観なんて! もう私の心臓がもたない!!


 でも、なんだろう。この気持ち‥‥‥。さっきまで、レクター君が逆ナンされていた時にささくれ立っていた気持ちが、トゲが取れるように優しく、丸くなっていく‥‥‥


 このままずっと抱きしめていてほしいな。


 私はレクター君が後ろから抱きしめている手を離して欲しくなくて、チェスターコートからでているレクター君の手をずっと握っていた。レクター君は何も言わず、私を抱きしめている腕に力を込める。


 暖かい、優しい。

 レクター君の手。


 私は先程のレクター君のおみくじの恋愛の項目を思い出していた。


『恋愛 良き。お互い通じ合っている。流れに身を任せよ』


 流れに身を任せよ、か‥‥‥


 私は口元に笑みを浮かべていた。


 このままずっと、私とレクター君の時が止まればいいのにな。


 このままずっと、俺とヴァレリアの時間が止まればいいのに‥‥‥



 てこれクリスマス編と同じオチじゃねーか!!



※この二人はここまで色々やっているのに付き合ってません。レクターの方はヴァレリアが一方的に好きだけど、ヴァレリアの方は無自覚だけど徐々に惹かれているのかなぁ?その辺は本編とあまり変わりませんね。

いや今回も共感性羞恥やばかったです//


ここまでお読みくださってありがとうございました。


今年も宜しくお願いします。



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