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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第三章 セト達の秘密
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番外編・バルカ学園 クリスマス編

はなくそ学園のクリスマス。あんま学園関係ないかな?

なんか甘々になってしまった!汗


※視点がウロウロして読みにくいかもしれません。

 私はヴァレリア! 今日はクリスマスイヴだ! いや、イヴか? イブか? どっち? イブの方が言いやすいからイブにするよ!


 今年のクリスマスイブは土曜日だから学園はお休みなの。そこで! 前から行きたかった遊園地に今日は一人で行こうと思うの!


 ピロン♪


 その時私のスマホが鳴った。


「誰だろ? アナスタシアかな?」


 《ヴァレリア、今日は暇か? 暇なら遊園地に行かないか?》


 ‥‥‥。レクター君だ。花組のグループチャットから、個別チャットで送られてきたのだ。


 ええええっ?? ゆ、遊園地!? レクター君はアンチで嫌だけど、遊園地ィィ!? 私が今一番行きたかった所!!


 うーん、うーん。


 ピロン♪


 《俺は年パス持ってるからな。ヴァレリアにも買ってあげるよ》


 ねねねね年パス!? ちくしょーレクター君はイケメンで金も持ってんのかよ! は? でもこれってさ〜、悪く言うけどさ、お金で私を釣ろうとしてない?? いや! そんなの私絶対いや! 年パスは惜しいけど私絶対行かない!


 ピロン♪


 《すまん。金で釣ろうとした。我ながらダサい手を使ったと思う。ほんとにごめん。実を言うと、ヴァレリアと一緒に行きたかったんだ。ただそれだけなんだ》


 うーむ‥‥‥。年パスの話は照れ隠しだったのか。いや充分魅力的な提案だし、イケメンなんだから他の女子君といったらいいのに。で、でも遊園地! 行きたい!


 《いいよ》


 結局私は遊園地に行きたい欲に抗えず、それだけ送って準備に取り掛かった!


 ピロン♪


 《ありがとう!》


 ‥‥‥。なんか、レクター君てよくわからない。自信満々かと思ったら急に照れ始めたり。


「変なの」


 * * *


 待ち合わせ場所に着いたらレクター君はすでに来ていた。他の人より体格もよく、背が高いのですぐに見つけられた! 私は慌ててレクター君の元へ走る。こんな寒空の下、待たせるなんて。風邪を引いたらいけないわ!


「あっ」


 私はよろけて転けそうになった! 地面が近づいて。ぶつかる〜!!


 ‥‥‥。あれ? 衝撃が来ない?


「ヴァレリア、よかった。怪我はないか?」


 目の前にはレクター君の整った顔。イケメンすぎて草。いや草生やしてる場合じゃないわ!


「ど、どうもありがとう。私を助けてくれたのね」


 私は服を叩きながらお礼を言う。


 レクター君は何故か顔を赤くしていた。


「ん? どうしたの? レクター君?」


「ちょ‥‥‥。可愛い」


「えっ?」


 なんだこれ‥‥‥。ヴァレリアの私服姿可愛いすぎる。

 丈が短めのもこもこの白いファーコート、瞳に合わせたらしい薄紫のニットワンピース。薄いベージュのこれまたもこもこ付きのショートブーツ。軽そうな小さなショルダーバッグ。えっ? 俺たち今から遊園地に行くんだよね? そんな、まるでデデデデデートに行くみたいな格好‥‥‥


「何をジロジロ見てるんだい? おん?」


「ヴァレリア、その服‥‥‥。可愛い」


 一瞬キョトンとするヴァレリア。


「ああこの服? お手伝いさんが用意してくれたの。私は寒いからもっと着込みたかったんだけど、なんかデートだと勘違いしたみたいで、でも押し切られてさ。なんかほんとデートみたいだよね、この格好」


 ははは、と笑うヴァレリア。ああ、笑顔が眩しい。その時ふとある事に気づいた。


「ん? ヴァレリア。何も巻いてないが首が寒くないのか?」


「ああ、遊園地で買おうと思ったの! あの魔法学校のやつ!」


 そう言ってヴァレリアは、魔法の杖を振りかざす真似をして見せた。


 そういう事か‥‥‥


「でも着くまで寒いだろう。到着するまで俺のマフラーを貸してやろう」


 俺は自分に巻いていた赤いマフラーを取り、ヴァレリアの首に巻いた。


「いいのに」


 そう言いながらもヴァレリアはマフラーに顔を埋める。は?? 可愛いのだが??


「わーすごい!! 遊園地久しぶりに来ちゃった! まずは雰囲気づくりだよね!」


 遊園地はクリスマスイブだからかなかなか人が多かった。


 ヴァレリアは俺の手を引き、お土産屋にまっすぐに向かって行った。


「被り物買いたいから! このサメのやつ!」


「じゃあ俺はお店の外で待ってるよ」


 ヴァレリアは店からサメの被り物を被った状態で、手にはもう一つ被り物を持って出てきた。


「はい、レクター君はこれ被って!」


 そう言って差し出されたのは、ヴァレリアと同じサメの被り物。


「これ被ってまずは腹ごしらえに行こ〜! 前から行きたかったサメのレストラン」


 ヴァレリアに手を引かれるままに、俺たちはサメのレストランに来ていた。あれこれ頼んでいるヴァレリアの横で、俺はハンバーガーとポテトを頼んだ。


「あそこで食べよ!」


 テラスを指差すヴァレリア。寒いのに外で食べるとは正気か? 俺は平気だが‥‥‥


「ここから遊園地の施設が色々見渡せるから楽しいんだ〜」


「ヴァ、ヴァレリア、そんなに食べるのか??」


 ヴァレリアが持ってきたのはトレイいっぱいのハンバーガーとポテト、デザートのサメの形をしたロールケーキ5個。ハンバーガーに至っては何個食べるんだ? それ?


「これでも抑えた方なんだけど、血糖値ぶち上がって眠くなったら嫌じゃない?」


「ははは! 心配するのがそこか!」


 ヴァレリアは本当におもしれー女。今までこんな奇想天外で、天真爛漫な女子には会った事がない。


 食事をしこたま食ったあと(ヴァレリアはあの量を難なく食べきった)、俺たちはサメのアトラクション、それに3Dのアトラクション、恐竜のジェットコースター、乗れるものには全部と言っていいほど乗った。サメのアトラクションは船のアトラクションなので、ピークはサメが出て来て船を襲うというのがあるのだが、その時に水飛沫が舞うのでみんな寒いのか、待ち時間が短かったので合計3回も乗ってしまった。


「ははは! 楽しいね!」


 サメの被り物をして赤く染まった頬をして、振り向くその笑顔。ドキンと俺の心臓が跳ねた。その笑顔、俺だけが知っていたいな。


 しばらくして俺たちはメインの魔法学校のゾーンに到着した。ここは結構学校に到着するまで歩くのだ。魔法学校に到着したらお土産屋さんもあるのだが‥‥‥


「よーし、このアトラクションに乗ろう! マフラーは危険だからこのバッグに入れとくね! ありがとうレクター君」


「ははは、それは一向に構わないよ。このアトラクションは人気だからな。エクスプレスパスを使おう」


 さすが一番人気のアトラクションだ。結構待たないといけない。


「えっレクター君! 年パス以外にエクスプレスも持ってるの?」


 はぁ?? 嬉しいのだが! でも完璧すぎて腹立つな? イケメンで背が高くてお金持ちで年パスもエクスプレスも持ってて‥‥‥。さてはどっかの国の王子だなテメー!


 ‥‥‥。でも時間短縮は嬉しいな。ここは素直に甘えとこう!


 こうして私たちは魔法学校のアトラクションを楽しみ、施設を見て周り、バターミルクを飲んだ。寒かった体にバターミルクが染み込んで、あったかくて美味しい!


「ヴァレリア、これを飲んだら土産屋に行こうか。マフラーを買うんだろ?」


「うん!」


 私たちはお土産屋さんに行き、お目当ての赤いマフラーを買った!


「巻いてあげるよ」


 そう言ってレクター君は魔法学校の赤いマフラーを私の首に巻いてくれた。なんか、こうしてるとほんとにデートみたい。いや別に変な事してないからデートじゃないはず!


 でも何だろ、この気持ち‥‥‥。やばい。楽しい。一人で行く時よりもずっと楽しい。ずっとこの時間が続けばいいのに。


 私たちは夕ご飯を食べに来ていた! ナイトパレードを見るためだ! ナイトパレードを見ずに遊園地は終われないわ!


 私が食べたかったのは肉だったので、肉を貪り食うためだけにレストランに入った!


「ここのローストビーフが美味しいんだ〜!」


 他のカップルたちがクリスマス限定メニューをムードたっぷりなレストランで食べている中で、私たちは恐竜のジェットコースターの真下にあるレストランで、ムードもクソもあったもんじゃない肉を貪り食っていた(主に私がだけど)。


 なんか、楽しいな! レクター君も文句のひとつも言わずに私のめちゃくちゃな要望を聞いて、着いてきてくれるし‥‥‥


「綺麗だな‥‥‥」


 レクター君は目を輝かせてライトアップされた施設内を見渡しながら言う。ぶはっ、まるで子供みたい! ただのクソアンチかと思ってたのに、案外可愛いところもあるじゃん!


 ‥‥‥。て、何考えてんの私は! レクター君が今日たまたま遊園地に誘ってくれて、私がたまたまこの遊園地に来たくて来ただけなんだから! 可愛いなんて思ってないんだから!


「そろそろナイトパレードが始まるね」


 レクター君は時計を見ながら言う。不意にレクター君と私はバチンと音がしたかのように目が合わさった!


「まだ時間はあるから、ゆっくり食べてていいよ」


 ‥‥‥。何このレクター君。何今の微笑みは。ライトアップ効果なのだろうか。いつもよりレクター君の顔が百倍かっこいい気がする。


「う、うん‥‥‥」


 私はそれしかいえなかった。なんか心臓がうるさいんだけど!? 絶対嘘! このドキドキはそう、恐竜のジェットコースターの真下にいるせいよ! 絶対そう!


 私たちはお店を出て、ナイトパレードを見に行った。クリスマスイブだからか、人が多い。でも綺麗。


「ナイトパレードなんか久しぶりだよ!」


 ウキウキした気分のまま、私はレクター君を振り返る。


「ヴァレリア‥‥‥」


「え‥‥‥」


 レクター君の顔が近付いてくる。もしかして、もしかして‥‥‥! キキキキキス?! するの? しちゃうの?! そんなベタな事‥‥‥


「ヴァレリア、じっとしてて。ほら、取れた」


 そう言ってレクター君が見せて来たのは、私の頬についていた肉片だった! ああ! さっきのローストビーフがついたんだ!


「ははは、ヴァレリアは可愛いな」


 真っ赤になった私の顔を見て、レクター君はクスクスと笑う。と思ったらレクター君は突然真顔になった。


「綺麗だな、ヴァレリア」


「えっ? ああ、パレードか。うん! とっても綺麗!」


「違うよ。俺が言う綺麗なのは」


「ん?」


 綺麗なのは、ヴァレリアのキラキラと輝く紫の瞳‥‥‥。ナイトパレードに照らされて、一層美しい。


 * * *


「いや〜楽しかった楽しかった! レクター君ありがとう! 今日一日付き合ってくれて! エクスプレスも使ってくれて! お目当てのマフラーも買えたし、いい一日だったわ」


 これは本心から。なんだかんだレクター君にはお礼しか出てこなかった。だって今日一日中私の行きたいところにレクター君を連れまわしちゃったんだもん。私のめちゃくちゃな提案にも、レクター君は文句一つ言わずに着いて来てくれた。


「いや、お礼を言うのはこっちの方だよ。おかげで楽しかった。ヴァレリアと来れてよかった」


「‥‥‥」


 何だろ、もうお別れするのが、何だか寂しいな。


 私はレクター君をなんとなく見上げる。レクター君も私を見ていた。


 電車が最寄りの駅についた。これでお別れなのか‥‥‥

 いや、月曜日に学校で会えるんだからいいんだけど!なんか‥‥‥


「月曜日に学校で会えるって言っても、なんかこのままお別れするのが寂しいな」


 ドキッとした。レクター君も私と同じ気持ちだったんだ。いつのまにか私たちは手を繋いでいた。いつから手を繋いでいたのか知らないけど、なんか今はこの手を離すのが、なんかすごく‥‥‥


「この手を離すのが、惜しいな」


 私はまたドキッとした! レクター君、君はまさかエスパーか? そういうスキルを持ってるの?!


 あっ、そうだ!


 私はレクター君が巻いてくれたマフラーに手をかける。このマフラーは、ずっと欲しかった魔法学校のマフラーだけど‥‥‥


「これ、あげる!」


 そう言って私はレクター君に遊園地で買ったマフラーを渡した。レクター君みたいに背が高くないので、首に巻くとかは無理だ!


「え‥‥‥。うれし‥‥‥。でもヴァレリア、ずっとこのマフラーが欲しかったんじゃないのか?」


「いいの! 私にはこれがあるから。レクター君が今朝巻いてくれたマフラー」


 そう言って私はバッグの中からレクター君のマフラーを取り出す。


「レクター君、これもらっていい?」


 私は何故そんな事を言ったのか分からなかった、ただレクター君が自分のために巻いてくれたマフラーが、すごく心地よかったから。


「それは構わないが、いいのか? はは、こんな事ならもっと上等のをつけてくるべきだったな。それよりもヴァレリアはいいのか? このマフラーはずっと欲しかったんじゃ」


 うん、ずっと欲しかった。でも今は‥‥‥


「いいの、それともレクター君は嫌かな? 私が買ったマフラーは‥‥‥。潔癖症??」


 けっ、潔癖症?? おかしな事を言う。


「とんでもない、嬉しいよ」


 一瞬でもヴァレリアが身につけていたマフラー。俺が好きなヴァレリアが身につけていた‥‥‥。嬉しくないわけがない。


「ははは! これがほんとのプレゼント交換だね!」


 ヴァレリアはそう言って照れたようにへにゃりと笑った。かっ、可愛い//


 よし! 明日からこのマフラーを毎日巻こう! 擦り切れるほどまこ! このマフラー生地がペラペラだからすぐボロボロになりそうだけど。


「じゃあね! レクター君! また明後日ね!」


 そう言ってパッと手を離そうとしたけど‥‥‥


「ちょっと! レクター君から手を離してよ!」


「嫌だよ、ヴァレリアの方から手を離してくれ」


 私たちの手はお互いにがっつり握り締めていたので、なかなか離れなかった。離したくないのだ。

 私は握力が右手33、左手34あるからね? そこんとこよろしく。


「ワハハハハ! 全然離してくれないじゃん!」


「ヴァレリアこそ! ははは!」


 人混みの中で私たちは声を上げて笑った。


「あ、雪‥‥‥」


 いつのまにか雪がちらほら降っていた。


「ヴァレリア、中に入ろう。お茶でもして、暖を取ろう」


「うん!」


 私たちはカフェでずっとたわいのない会話を話し続けていた。先生のモノマネとか、神ファイブは実はいいやつの集まりだとか、そんなたわいのない会話でも、めちゃくちゃ楽しい!


 こんな楽しい時間は初めてかもしれない。チキンも、ケーキもない、ムードも何もないクリスマスイブだったけれど。


 このまま時間が止まればいいのにな!


 このまま時間が止まればいいのに‥‥‥




シリアス?な恋愛ものはあまり書いた事がないので共感性羞恥で叫び散らかしながら書きました!でも本編も大概イチャイチャしてたような‥‥‥

いや〜書いてて恥ずかしかった〜笑

でも楽しそうでしたよね。

何故このクソ寒いのに遊園地?と思われた方もいらっしゃると思いますが単純に作者が遊園地に行きたかったからです。


触れてないけどお手伝いさんがいたり、ヴァレリアはここでもまあまあお嬢様です。


皆様Merry Xmas!


ここまでお読みくださってありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] レクター君お金持ちなのに年パス持ってるんですね♡
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