唯一勝てない相手
今日は息抜き回です。イチャイチャ回とも言う。
レクターとヴァレリア様がイチャイチャしてるだけなので心を無にして読めると思います。
「雪合戦?? 何だそれは?」
「まぁレクター、雪合戦もご存じないのですか? 外に出て積もった雪を丸めてお互いに当てて遊ぶんですよ。幼い時にやった事ないですか?」
「‥‥‥。ないな。五歳の頃から母国語と、他国の言語の勉強漬けだったからな。いつか諸外国に訪れる際にその国の言語を話せなければ王としての威厳が無くなるからと」
レクターは顔を背けて仕方なさそうに話す。そういえばレクターはお城での事をなるべく話したくなさそうでしたものね。
「レクター、お可哀想に。では私が教えて差し上げますわ!雪合戦が何かをね!」
て言っても、私もレクターの事は言えないのですけどね。冬、特にこのように雪の降るような冷え込みが厳しい日は、一日中ベッドからは起き上がれず、酷い時には熱も出ていたもの。
ヴァレリア様は幼少期からおてんばだったのね。その記憶が教えてくれる。雪合戦とは何なのかを‥‥‥
ヴァレリア様の目に映る人物、あの方はアイシャ? かしら。顔はぼやけてよく見えない。
「ヴァーリャ?」
ぼーっとしている私にレクターが声をかけてきた。
「あ、ヴァレリア様の記憶を見ていたのですわ。私自身にそのような経験はなかったので。何せ幼い頃から私は病弱でしたからね! ヴァレリア様は本当に幼少期から元気で羨ましいわ。でもニーズヘッグの祠を見つけてしまってね」
「ほこら?ああ、ニーズヘッグが閉じ込められていたという祠か」
『まぁまぁその話は後にしようぜ! 湿っぽくなるからな!』
ニーズが慌てたように割り込んで言う。そうよね! ニーズヘッグの言う通り、この話は湿っぽいわ!
「そうね! ニーズの言う通りだわ、偉そうに言ったけど、実は私もこの体で雪合戦をするのは初めてなの! でも今はヴァレリア様の丈夫な体だから、できるとは思うんですけどね!」
レクターが顎に手を当てて、私の方を頭から足までジロジロと眺めている。
「? なんですのレクター。ジロジロ見て。私何か付いてます?」
「いや、ヴァーリャはやはりそのままで大丈夫だ! 特にその‥‥‥。豊満なところとか」
「えっ? 私そんなに太ってます? 確かにここ最近食欲は爆発したのは自覚があるのですが。ねぇニーズヘッグ? 私太ったと思いますか?」
『話が進まねぇ〜!! 王子はそういう意味で言ったんじゃねぇよ! あーもうめんどくさい! 王子、さっさとヴァーリャと一緒に雪合戦しろ! 俺様は寒いから外には出んぞ!』
ニーズヘッグはクソデカため息を吐いて顔を覆った。
「じゃあ始めましょうか! うわぁ寒い! 冷たい!えーと雪をこうして丸めてと‥‥‥」
私は早速雪が積もっているところに手を突っ込み、丸め始めたが、思ったよりずっと冷たいわ!
「ヴァーリャ! 何をしているのだ! 雪を素手で掴むなど! そんな事をしたら凍えてしまうではないか!」
えっ? でもこの雪を丸めなければ始まらないですのに‥‥‥。おかしなレクター。
「ヴァーリャやめろ、お前の玉のような肌を冷やさせるわけにはいかん。俺に任せろ」
そう言ってレクターは雪が積もっている場所に手をかざすと、その中から魔法で雪を適当に取ってあっという間に雪玉を何個か作ってしまった。
「ほら、これならヴァーリャの手は冷える事はないだろう?」
「もぉ〜! レクター! なんでもかんでも魔法で解決しないでくださいよ!」
そう言って最初に作った雪玉をレクターの体に全力でぶつける。レクターはそれをひょいと避けてしまった。
「あ! ちょっとレクター! 避けないでくださいよ!」
「? なぜ避けてはいけないのだ?」
「最初に言いましたでしょう? 雪玉をぶつけ合って遊ぶんだと。というわけなのでレクターもバンバン私にぶつけてくださいね! 私もぶつけますわ!」
「ヴァーリャ‥‥‥。俺には無理だ。お前の玉の肌に雪玉を投げつけるなど‥‥‥」
「何をつべこべおっしゃっているんですの?! ほらほらぼーっとしている場合ではないですわよ!」
スカッ、スカッ!
全力で当てに行っているのに、全然当たらない! 避けないでよ!
「もうレクター! 避けないでくださいってば!」
「すまん。つい避けてしまう癖がついてしまってな、何しろ今までに命を狙われる事が何回かあったものでな」
そう言ってレクターは申し訳無さそうに首の後ろをかく。
「私は命など奪いませんわ! これはただの『遊び』ですもの!」
私はレクターの作った雪玉の山から一つ掴み、それを投げた!
ボフッ!
「やった〜!! 初めて当たったわ!! レクターにぶつけてやったわ!」
ただの『遊び』? それでも俺は‥‥‥
「レクター? 何‥‥‥」
俺はヴァレリアに近づく。頬を真っ赤にしてはしゃぐヴァレリア。
「ほほほ! やっとやる気になりましたかレクター!」
嬉々としてまた雪玉を作り、俺にぶつけようとするその手を掴む。息を弾ませて、頬を上気させて、ふくよかな胸をドキドキさせるその様子。俺を見上げる紫の瞳。
ヴァレリア、その全てが。
「ヴァーリャ‥‥‥。愛おしい」
「なっ、なななななんですの//急‥‥‥にっ!」
ちゅ!
俺はたまらなくなって、ついついヴァレリアの唇を奪ってしまった! ヴァレリアが可愛いのが悪いのだ。
「レクター‥‥‥」
「ヴァーリャ」
しばらく沈黙が続いた後、突然、ヴァレリアが俺の体に勢いよくぶつかって来た! その衝撃でヴァレリアが転びそうになる。
「ヴァーリャ! あぶな‥‥‥」
ドサッ!!
俺たちはよろけて、雪の中二人して倒れてしまった!
その時持っていた雪玉で、ヴァレリアは俺の胸に雪玉をポンと当ててきた。
「ははは!! レクター! 私の勝ちですわね!」
驚いた。ヴァレリアはこのために俺にぶつかって隙を作ったのだ。雪遊びにこんなに必死になるとは。ヴァレリア‥‥‥。おそろしい子。
「ははは、そうだな。ヴァーリャの勝ちだよ」
いつでも、どんな時でも。たとえ俺がウードガルザになろうとも。唯一勝てないだろう相手は、ヴァレリアただ一人なのだ。
『でしょうな』
窓から様子を見ていたニーズヘッグが呟く。呆れたような口ぶりだったが、そのとんがった口には笑みが浮かんでいた。
レクター笑
悪魔とかセクメトとかには冷徹無敵なレクターも、ヴァレリア様には敵わないんですね。てか何回かこんな話書いた事ありますよね?いいんです!何度も何度もしつこく話したいのです!私がそういうのが好きだかr()
冷え込む日が続くので体調崩さないようにぬくくして過ごしてくださいね。
ここまでお読みくださってありがとうございます。