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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第三章 セト達の秘密
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気付くの遅えよ!byニーズヘッグ

セト達兄弟が森でわちゃわちゃしている間、ヴァレリアとニーズヘッグはエリーの用意してくれた朝食を貪り食べていた。

 一方王子の別荘にて。ニーズヘッグとヴァレリアは一緒にエリーが用意してくれていた朝食を食べていた。


『ヴァーリャ、体調は大丈夫なのか? もぐもぐ』


「ええ、エリーが長く効く回復魔法をかけて行ってくれたので今日は平気よ! エリーは大丈夫かしら? セトと会えたのかしら? もぐもぐ」


 ーーーー数時間前


「お嬢様、私やはりセトに会って来ますわ。セトが心配で‥‥‥」


 エリーはヴァレリアにセトがしわしわのだらしないシャツを着て街を練り歩いている事を説明した。(笑)


「まぁ! セトはエリーがいないとすぐだらしなくなってしまうのですわね」  


 思わず笑みが溢れる。


「それもあるのですけど、一番は私がセトに会いたいから‥‥‥。お許しください! お嬢様!」


「何を遠慮する事があるんですか? 行ってらっしゃいな! 私にはニーズヘッグも居ますし、痛みもエリーのおかげでだいぶ和らぎましたから、好きなだけイチャイチャしてらっしゃいね」


「お嬢様‥‥‥」


 あ、そうだ。


「お嬢様、私が居ないからと言って、王子と同じベッドでは寝ないでくださいよ! まぁニーズがいるから大丈夫だと思いますけど‥‥‥」


「 ? レクターは私に危害を加えたりしないですよ? 寧ろ私を守ってくれますから、大丈夫ですわ。でもそうね、今はまだちょっと下半身が気持ち悪いですから、同じベッドでは寝ませんわ。約束します」


 そういう意味ではないのですが‥‥‥。まぁお嬢様はそのあたりは学園でも習わなかったようですし、仕方ないですわね。


「セトとエリー、会えていたら良いですわねぇ。まぁレクターとユーリもいるし、その辺は心配いらないですわよね」


『まぁな、あの森は手入れがされているし、魔物はいないんじゃないか? 王子はその辺わかっていてあの森にセクメトを閉じ込めたんだ。全く完璧すぎて逆に腹立つよ』


 ニーズヘッグがぶすっと、元からとんがっている口をさらにとんがらせて言う。


「あらあら、どうしてニーズが腹立つ事があるんです?」


『別に〜! 作者の声を代弁しただけ! うぉぉ〜腹一杯! ヴァーリャももう腹一杯だろ?』


「そうですわね! ねえニーズ、ずーっと寝ているのも飽きましたし、この別荘の庭にだけなら出ても良いかしら?」


『別に良いけど多分寒いぞ?』


「平気ですわ! ちょっとくらい。うんと毛皮を着込んで、レクターがくれた赤いマフラーも巻いて」


「ただいま。どこに行こうというのだ? 外は寒いぞ」


 えっ??


 声がした方へ振り向くとレクターがいた。えっ早? もう帰って来たんですの?


 レクターは私の表情に気付いたらしく、首の後ろをかきながら言った。


「いや‥‥‥。一刻も早くヴァーリャに会いたくて。つい本気で走ってきてしまった。この飛べる足で。それよりヴァーリャ、体調は大丈夫なのか? 痛みはもうないのか?」


 俺がそう言うと、たちまちヴァレリアの顔が(ほころ)んだ。


「レクター、嬉しいわ。私もレクターに会いたかったんですの。体調は大丈夫ですわ、エリーがうんと長く効く回復魔法をかけてくれて行ったんですの」


 そう言って手を握り合う二人。


『お前ら今朝も会ってただろうが』


 ニーズヘッグが呆れたように言った。


「な、なぁ‥‥‥。ヴァーリャ。キキキキキス、して良いか?」


 俺は先程のエリーとセトの口付けていた光景を思い出す。なんか異様に照れるな? キスなんか、今まで相手の確認も取らずにして来たのに。キスという単語も恥ずかしい気がして来た。


 相手がヴァレリアだからか?


「レクター、一体どうしたのですか?? 今まで許可なしに散々私の唇を奪っておいて‥‥‥」


 そりゃ、戸惑うよな。ヴァレリアの気持ちもわかる。俺自身にもよくわからないのだ。


 ただ、ヴァレリアを傷付けたくない。まだ成長しきれてないヴァレリアの体。そうだ、ヴァレリアはまだ少女だった。


 その現実を知り、いや正確にはわかっていたはずなんだが、そもそもわかっていなかったのか? 分かろうとしていなかったのかもしれない。


「ヴァーリャ、今頃気づいたんだが、俺は少々自己中心的で、我儘だったようだ。もう一度最初から、段階を踏んでヴァーリャと同じ速度で歩み寄りたい」


 俺の生き方はバルカ城にいた頃は、少々早く、事務的で‥‥‥。冷たすぎた。


 いつしか心を持たない機械のように、ただ漫然(まんぜん)としていつか誰かと結婚し、王になる未来しか用意されていなかった。俺もそれを当然として、それで良いと思っていたのに。


『なんだ王子。もう婚約も済ませたってのに。圧倒的今更感なんだけど?』


「いや、それはそうなんだが、俺もヴァーリャのことを言えないなと思ってな」


 俺は今までヴァーリャは何も知らないと思っていたけれど、俺もヴァーリャと同じくらい、何にも知らなかった。


「まぁレクター、やっとご自分がいかに我儘で自己中心的だったのか気づいたのですね! 私嬉しいわ!」


『ブフォ!!』


 ニーズヘッグが吹き出した。


「ニーズヘッグ。笑うなよ。いや、正直今まで自分がそんなだとは思ってなくてさ‥‥‥。というか気付かなくてさ」


『まぁ良いんじゃね? 一生自分の間違いに気付かないで周りからどんどん嫌われていく奴もいるからな。セクメトみたいに』


 セクメト‥‥‥。このまま気付かなかったら俺はセクメトみたいになるルートもあったのか? うわぁそれだけは嫌だ!!


「じゃあレクター、早速やりましょう!」


「えっ? やるって何を? キスの事か?」


『おい、俺様の前ではイチャイチャ禁止だぞ! それにお前ら昨日一緒に布団揃えて寝たのに何だそれ?』


「ははは! すまない。好きになると、少しの時間も会えないのが苦しいのだ。なぁヴァーリャ‥‥‥」


 ヴァレリアに話しかけると、眼前からいなくなっていた。


「何って! こんなに雪が積もっているのだから! やる事は決まってますわ!」


 ヴァレリアは外に出ていた。いつのまに降っていたのだろう。しんしんと降り積もっていく雪の中で手を広げた!


「雪合戦よ!!」




すみませんなんか後半気に入らなくて修正しました。

レクターは確かに我儘で変態だけど紳士ですからね。

ヴァーリャとニーズ、もぐもぐ可愛い〜!

今回短かったですねすみません!


ここまでお読みくださってありがとうございました。

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