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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第三章 セト達の秘密
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どすけべレクター

情緒不安定なヴァレリア様に部屋を追い出された王子(笑)

一連の様子を見ていたニーズヘッグに笑われるのだった。

『ハハハハハ! ザマァねぇなぁ王子!』


 俺が肩を落としていると、後ろからニーズヘッグの高笑いが聞こえた。


「ニーズ、お前は追い出されたと聞いたが‥‥‥」


『おん? 俺様はそんな事された覚えはないぞ。ヴァーリャがピリピリしていたからな。なんかやべーなと思って自分から逃げてきたんだ』


「そうか‥‥‥。ヴァーリャは一体どうしたというのだろうか。あんなに心を乱して。まさかお前以外の悪魔が取り憑いたとか!?」


『王子〜! 俺様をみくびってもらっちゃ困るぜ? 俺様以外の悪魔がヴァーリャに取り憑こうもんなら俺様がその悪魔を食ってやるぜ!』


 そうだよな‥‥‥。ニーズはこう見えて結構強い毒の悪魔だ。中途半端な悪魔がいたとして、あっという間にニーズが()らえてその体を(むさぼ)り食うだろう。だとしたら一体何が?


 * * *


「仕方ないですわお嬢様、この時期は特に。女性には必ず月に一度起こる事なのですよ。わけもなく悲しかったり、普段はどうとも思わない事にも妙にイライラするのです。女性特有のものですので、病気ではないのでご安心くださいませ」


「ええっ?? それってもしかして今朝からの具合の悪さも関係してますか?」


 だってこの体(ヴァレリア様)になってから倒れたことなどなかったですもの!!


「ええ、お嬢様。おっしゃる通りですわ。下半身が気持ち悪いのも、精神が安定しないのも、女性特有のもの。ですからあの男どもには出て行って欲しかったのです。この現象に関しては、いかに王子が無敵であろうと、どうしようもない事ですから」


 まぁこの現象にならなくとも、王子はお嬢様にいつも負けてますけどね。


 私は先程のお嬢様に押さえつけられて慌てている王子を思い出してふふっと笑った。


(あのいつも澄ました顔で、何に関しても無関心で、余裕でどんな強敵も倒してしまう王子のあんな表情。しかもあの体制! きっとお嬢様は唯一王子が勝てない方なのですわ)


「ねぇ、エリー。私体調の変化と共に、なんだか変な夢を見たのを思い出したの」


 突然真顔になったお嬢様は静かに語り出した。


「笑わないで聞いてね。その夢の内容は‥‥‥。私はずっと炎の壁の内側で助けを求めていて、でも残念ながら私の声は壁の外にいる人には聞こえない。でもある時、レクターが私を炎の壁の中から救ってくれるの。私はそのお礼に指輪を渡すの。レクターが今付けている指輪よ。これはどういう意味なの? 具合が悪くなった頃から、眠るたびにそういう夢を見るの」


 炎の壁の内側から助けを呼ぶ夢? 何かしら?


「何かの暗示でしょうか? これからお嬢様がもしかして巻き込まれる災厄の暗示?」


「まぁ! だったらどうしましょうエリー! 私は炎の壁の中に入れられてしまうのかしら?」


「ほほほ。冗談ですよ。ただの夢ですわ、今まで健康だったのに、急に具合が悪くなったので、悪夢を見たのですよ。王子がいる限り、そんな恐ろしい事態にはなりませんわ」


 エリーに言われて思わずホッとした。そうよね、あれは体調不良が見せた悪夢なのだわ。きっと‥‥‥


「ならいいんだけど‥‥‥。でも途中まで悪夢でも素敵な夢だったわ。たとえ夢でも、夢の中でも助けてくれるのはレクターで、私があげた指輪をレクターがしているの。どういう状況でも、私を助けてくれるのはレクターなのね」


 その途端、すごくレクターに会いたくなった。会えなくてとても寂しいわ。レクター‥‥‥。


「ふ、ふええん!」


「お嬢様、たったの三日ですよ! 三日我慢してくださればいくらでも会わせてあげますから! それに会おうとしても下半身が気持ち悪いでしょう!」


 エリーにたしなめられて、私はハッと気付く。そうだわ! こんなに精神が不安定な、下半身が気持ち悪い状態で、レクターに会うのは私が嫌だわ!!


「そ、そうでしたわ! たったの三日ですよね!」


「そうですよ。お嬢様はこの三日間、全てをエリーにお任せください。大丈夫、快適に過ごせるように致しますわ」


「エリー‥‥‥。嬉しいわ!」


 * * *


『ふわぁ〜眠い! 俺様だけでもヴァーリャと寝ていいか頼んでみる。もうヴァーリャの谷間じゃないと落ち着いて寝れねんだ』


「ニーズヘッグ! お前だけずるいぞ!! 俺もヴァーリャと寝たい! ヴァーリャの小さな柔らかい体を抱きしめて‥‥‥」


『無理だよこのどすけべ王子。大体今のヴァーリャの暴れ具合を見ただろ? ヴァーリャもようやく理解《諦めたともいう》したらしいし、王子も今のうちにこのおんぼろ荘の補強とか、セト兄弟に今のセクメトがどうなっているのか、伝えるなりなんなりした方がいいんじゃないのか?』


 あ‥‥‥。そうか、セクメト。すっかり忘れてた。


『ふぁぁー! もう無理〜! ヴァーリャ〜!! 開けてー! ニャアニャア〜!』


 ニーズがそう言うと、ドアにほんの10センチほど隙間ができた。


『ありがと〜♡じゃ、王子! 三日後にまた会おうぜ!』


 にひひと笑うニーズ。その途端バタンと音を立ててドアが閉まる。


 う‥‥‥


「うおおおおおお〜!!!! ヴァーリャ〜〜〜〜!!!!」


 俺は叫んだ! その叫びでおんぼろ荘が傾いた!《気がした》


「うるさいですわよ王子!! お暇ならこのおんぼろ荘全体を建て直してください! 王子の力ならそのくらいできるでしょう?」


 ドアの内側からエリーの怒声が響き渡った。


 ァァ‥‥‥。


 俺はトボトボと階下に降りて、ブツクサ言いながらおんぼろ荘の補強をし始めた。もうすっかり日は落ちていた。


「セクメトの事は、明日でいいだろう。考えてみたら、今日は色々ありすぎたな‥‥‥」


 まぁ、こんな生活も城にいた頃は味わえなかった‥‥‥ヴァレリアのおかげだな。


 ヴァーリャ‥‥‥


「レクター、ごめんなさい。グスグス‥‥‥。愛してるわ」


 どすけべレクターは先程の事を思い出して肩をガックリと落としながらもおんぼろ荘の補強を黙々としていった。



どすけべレクターと言いたかっただけの話です。

ニーズのニャアニャアが可愛い〜!♡♡♡

完璧超人のレクターだが、そんなレクターがどうしても何をしても勝てないのがヴァレリア様。いいですねぇ私の性癖に刺さります!


あれ?だから私は溺愛とかの描写が一生わからないのでは?ええ?悲しみなんですが?( ;∀;)


ここまでお読みくださってありがとうございました!

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