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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第三章 セト達の秘密
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ヴァレリアの覚醒

オシリスによってセクメトが吹っ飛ばされたところはよりによってヴァレリアが休んでいる部屋だった!

ヴァレリアと同化したニーズヘッグによって金的を食らうのだった。

「何してんだテメェ! ヴァーリャの肌には指一本触らせねーぞ!」


 金的をうけてうずくまっているセクメトにヴァレリアと一体化しているニーズヘッグが、上着を探しながら言う。


 セクメトは脂汗をダラダラ流しながらも、やっとの事で口を開いた。


「ヴァーリャ‥‥‥。というのが、お前の、名前か?」


「だったらどうしたよ!」


 ニーズヘッグはガウンを羽織り、武器になりそうな物を探した。いくら意識はニーズヘッグでも、体はヴァレリアだ。ヴァレリアの意識が覚醒しない限り、呪文を唱えることができない。


(それにしても。ナンチャラエッダを唱えなくても何とかなったな。ヴァーリャが眠ってる時には俺様の意識が自動的に作動するとかそういう仕組みか? とにかくこの状況はまずいぜ! 王子は何やってんだよ! 怒)


 * * *


 その頃の王子は、ブランシュ公爵夫人の従姉妹、ギシェットの仕立て屋で、ありとあらゆる清潔な布を大人買いしており。ギシェットは目を丸くし、慌てて臨時休業の看板を出すことになっていた。


 王子が店のほぼ全部の商品を買い散らかして行ったからだ。


「ありがとうギシェット!」


「い、いえ、こちらこそ! 大量に買っていただいてありがとうございます」


 これでしばらくお金には不自由しないわ‥‥‥。それにしてもお店の物をほとんど買い上げてしまうなんて、貴族の方だったのかしら? 格好は貴族っぽくなかったのに‥‥‥


 ギシェットは王子の顔を見た事がなかった。ギシェットだけでなく城下町の人々は、王子の顔を知らないのである。

 前国王ガルシアが即位した後、お披露目ということで一度城下町の人々はバルカ城に招待され、その厳重な扉を開放されたきり、それから何年もバルカの門は硬く閉ざされている。王子がいるとは聞いていたが、皆その顔は知らない。


「まぁでもありがたい事だわ。あとでお姉様に手紙を書きましょう!」


 お姉様、とは言わずもがなブランシュ公爵夫人の事だった。


「待ってろヴァーリャ! コンスタン! 荷物が重いが頑張ってくれ」


「ヒヒーン!」


 コンスタンとはレクターの乗っている愛馬の名前だ。

 どの馬よりも早く。どの馬よりもタフだ。


 * * *


 あった! ナイフだ! これならヴァーリャにも扱えるはず!


 ニーズヘッグは棚の中にしまってあった護身用のナイフを見つけ、セクメトの方に突きつけた!


「失せろ! この部屋は今男子禁制だ! ヴァーリャは今デリケートな時期なんだ!」


「う、ヴァーリャ‥‥‥。なんと」


 なんと気が強い女だ! 今までこんな女には会った事がないぞ! 俺の国では女性は男性にかしずき、従順で口答えもしないのに!


 それに、それに、あの紫の瞳! 俺の国では全く見ない色だ!大体緑か赤か青色なのに!


 セクメトは痛みが引いてきたのか、嫌な笑いを浮かべ、ヴァレリアの方へと顔を上げる。


「はははッ、何をするかと思えば、その程度の短剣で俺と戦うつもりか? 可愛いなぁ〜」


 この俺にナイフの切っ先を向けるなんて!!


 ゾクゾク!! セクメトは自分の中の加虐心に興奮していた。


「女が、この俺に‥‥‥。このセクメト様に敵うわけないだろ!」


 セクメト? 聞いたことねー名前だな? 名前の響きからしてセトの知り合いか何かか?


「そんな事わかんねーだろ! いい加減にしろよ!男子禁制だっつってんだろ!」


 とはいえニーズヘッグの内心は心臓バクバクだった!ヴァーリャ〜! 早く起きろよぉ!! お前が起きないと戦えないんだよ!


 ガッ!


「ウッ!」


 いつのまに来ていたのか。セクメトはすごい速さでヴァレリアの腕を掴んでいた。


「な、何してんだ! ヴァーリャに気安く触んな!」


 動かない‥‥‥。ダメだこの体じゃあ、振りほどけない。


「はははッ! その強気な態度を崩さないところ!可愛いなぁ」


(ヴァーリャ! ヴァレリア! 起きろよ! 起きろ! お前の貞操の危機なんだぞ!)


「ははははは! この瞬間は堪らねえな! 強気な女が、男に屈服を‥‥‥。ん!?」


 瞬間、ヴァレリアとセクメトの間は紫のオーラに包み込まれていた。


(ヴァレリア! 目を覚ましたのか!?)


 ヴァレリアは静かに顔を上げる。バチンとセクメトとヴァレリアの視線が交差する。


『お前、私に何をしようとした?』


(よっしゃ! ヴァーリャは完全に覚醒したぞ!! よっしゃやったれヴァーリャ! この生意気なこの男の体ボロボロボーロにしたれ!! 特に下半身をボロボーロに!)


「なっ、なんだこの女‥‥‥。さっきと雰囲気が違う?なんか殺気を感じる?」


 ヤベェ! と思ったセクメトがヴァレリアと距離を取ろうとした時にはもう遅かった!


「なぁッ!‥‥‥」


 セクメトが気付いた時には毒の霧で部屋が充満していた!


「ゲホ、ゲホゲホッ! かっ、かは! なんだこれは、毒? 息ができな」


『我 毒の祝福賜り 我はその この上なく尊い宝 紫の耀く瞳に繋ぎ止めん』


(えっ? 何これは? 聞いたことないぞ。こんな呪文は‥‥‥)


 ヴァレリアの中のニーズヘッグはヴァレリアが今何か唱えている呪文を聞いたことがなかった。今まで詠唱してきた呪文には覚えがあるけど‥‥‥


 ヴァーリャ! 何をする気だ?!


ヴァレリア様どうしたどうした!?


私は個人的にニーズヘッグが可愛いくて大好きなんです。ボロボーロワロタ。


ここまでお読み下さってありがとうございました!

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