レクター王子の思惑
ヴァレリアの体に入れ替わったアナスタシアは、森の中の川で顔を洗い、朝の清々しさを感じていた
タオルを差し出され、女中のエリーザベトかと思って見ると、そこには何故かレクター王子が立っていたのだった
今、ヴァレリアと会って確信した。
この違和感の正体はヴァレリアの雰囲気だ。
生きている事を心から喜び、命に満ちた、溢れる生命力を感じさせる雰囲気だ。
このどうしようもない
この生き生きとした
変わってしまった女が
俺とは正反対な生き方をしているこの女が気になって仕方がない。
「すまん、ヴァレリア‥‥‥婚約破棄の話は少し考えさせて欲しい」
「え?」
「俺は、お前が嫌いだったんだ、だが今は‥‥‥」
今は、なんだ??
(わからない)
グイッと私の腕を引き、王子が私を抱きしめた。
「ふぇっ!?」
驚きのあまり、変な声が出てしまった。
王子の腕の中で戸惑っていると、突然王子が私に口付けた。
「‥‥‥ヴァレリア、俺は、お前との婚約破棄を白紙に戻す、俺は政務のため城に一旦戻らないといけないが、またここに来る、お前の様子を見に」
ポカンとしている私の顔にもう一度王子は口付けた。
「‥‥‥じゃあな、また来る」
そう言うと王子はあっという間にその場から去っていった。
は‥‥‥?
「えぇぇぇぇぇぇ?!」
今の一連の流れが信じられなくて、私はしばらく動けなかった。
先程の一連の王子の行動を思い出しながらボーッとしながら戻った。エリーとセトはとっくにテントを片付けていた。
「ずいぶん遅かったですね! あと少し遅いようならセトと一緒に見に行くところでした」
「えっと今、川で‥‥‥」
てか王子ドサクサに紛れて私にキスしなかった??
『俺は、お前が嫌いだったんだ、だが今は‥‥‥』
『今はお前の事が気になって仕方がない』
『ヴァレリア、見ろ、俺を‥‥‥』
あばばばばばば//
思い出したら顔が熱くなってきましたわ!
えっそもそも王子は何故私にキスしたの?王子はヴァレリア様には禁足扱いにするほど嫌いで、興味もなかったはずで、だからこそ婚約破棄もあっさり受け入れて‥‥‥
そんな私に何故?
わからない、レクター王子が何を考えているのかわからない‥‥‥
我儘王子の独壇場で、あれよあれよと婚約破棄も白紙にされましたね。
ていうかドサクサに紛れてキスすんな。
はっ、恥ずかしいじゃないか!
ヴァレリア(アナスタシア)の困惑を残したまま王子は立ち去りました
一体どうなってしまうのか!?
ここまでお読みくださってありがとうございました。