神々の末裔
前回突然酒場に乱入し、ボヤ騒ぎを起こしたセトとオシリスの弟セクメト。
怒ったオシリスにより、その体はどこかに吹っ飛ばされてしまうのだった。
「貴方達は何者なんですか? さっき、オシリスさんは神がどうとか仰ってましたが」
「うーん、どこから説明したらいいのか」
ユーリは興味津々だった! この兄弟は物理攻撃だけでなく魔法も使えるのかと!
前にヴァナルカンドが言っていただろう。はるか昔に人間と悪魔の戦いがあったと。あれと同じような感じで、俺たちの国にも戦争があったんだ。ただし俺たちの国は神々と人間の戦いだったがな。最終的に人間たちは強大な神の力に恐れをなしてすぐに負けを認めたんだ。
「何故人間が勝てる見込みのない戦いを挑んだかは永遠の謎だが」
セトがハハッと豪快に笑う。
「俺たちはその神々の末裔なんだよ。太陽神ラーと創造神アメンって知ってるか? 俺たち兄弟はみんななんやかやそのラーとアメンの血を引いているから、恩恵を受けてるんだ。だから人智を超えた力が使えるってわけだ。まぁ、俺は魔法なんてめんどくせえから、教えられても覚えなかったが‥‥‥。お、オシリスグラスが空だ。酒瓶ごと渡せ」
「そのラーとアメンの恩恵を特に受けているのが俺とセトの二人なんだ。血が近いからな。だから血の薄い弟達には負けないし、逆に弟達は天地がひっくり返っても俺たちには勝てないんだ」
オシリスはセトに酒瓶を渡しながら言う。
「いや正確にはオシリスだけだろ。俺は神だの王だのめんどくせえし、故郷をとっくに捨てたし」
「そんな、もったいない。セトさんが魔法を使えたら最強じゃないですか!」
セトさんは腕力も強いし、それに魔法が使えたら王子と並んで最強じゃないですか。
「だからー! 俺は魔法とかには興味ないの! それに審判でそう決まった時から俺には魔力なんて無いんだから」
「審判??」
ユーリがますますわからないというように小首を傾げる。紺色の瞳が興味津々でキラキラと輝く。
「うーん。神々の恩恵を受けた者達は兄弟が多いからね。時々王の前で審判を開いて決議するんだ。トトがまとめてその年の王に提出する感じかな。セクメトが話した感じだと、セトと俺がいなくなったあとはイシスが王の候補だったんだろうな」
「そう! その審判で俺が王の時、俺は神の力を体力と戦力に全振りするって宣言したんだ。だから俺がたとえ今何か呪文を詠唱しても何も起こらんぞ」
それは実質神々の決議‥‥‥。すごい!! ということは。
「セトさんが神って事ですよね?」
「違う違う! 恩恵を受けてるってだけ! ユーリみたいにやばい奴には追われてないし、もう俺は王権を放棄し、故郷を捨てたただの人間だよ! 元々神やら王には興味なかったし。それに神っつってもアレだぞ。めちゃくちゃ大昔の事だぞ。審判も形だけでそんなユーリが想像してるような大げさなもんじゃないって! 多分」
ユーリはその言葉を聞き、なんだぁと肩をすくめた。あ、そういえば‥‥‥。疑問に思ったことを口にする。
「その事はエリーさんはご存知なんですか? セトさんが神の恩恵を受けているのとか‥‥‥」
「いや? 言ってねぇよ、俺は王権を放棄し、故郷を捨てたただの風来坊のセトだ。まぁ、エリーに会ってからは‥‥‥。こんな生活もありかと思っているが」
セトが顔を赤くして答える。
「オシリスさんは魔法が使えますよね! それもそのラーとアメンという神さまの恩恵なのですか?」
ユーリはグラスを拭いているオシリスに向き直って聞く。
「そうだね。でも俺は王権を放棄しただけだからなんか中途半端なんだよね。セトみたいに審判で決議したわけじゃないし。トトは多分『オシリス・王権を破棄』としか記録してないんじゃないかな。魔法が使えるけど魔力はそこまで無いし、かと言って物理に特化してるわけじゃないし。ハハッ」
まぁでもセクメトは嫌いだな。あいつだけだ。どうせ王にはなれないと兄弟の審判を欠席して、半人半獣のホルスを馬鹿にして‥‥‥
「チッ! 忘れかけてたのに嫌なこと思い出したぜ」
「お二人とも故郷にはもう未練はないので?」
「ないね。もう兄弟達も立派な大人なんだ。自分の事は自分でするだろう。それにしてもイシスが殺されかけたとはな」
二人がほぼ同時に同じ事を答えた。そうだ、そういえば‥‥‥
「そのイシスさんは大丈夫なのでしょうか!?」
「んー? 大丈夫だと思うぜ。薄いと言っても一応神の恩恵を受けてるんだ。怪我くらい自分かケプリ(虫)に治療されてると思う。ケプリは兄弟達の治療係だからな」
うわぁ‥‥‥!すごい、この人達密かにすごい人達だったんだ!
「うわぁすごい。結構壮大な話ですよ? どうして今まで言ってくれなかったんですか?! エリーさんはともかく僕達には教えて欲しかったな」
「いや、何回か言おうとしたんだが、話す機会をなくしたというか、俺とオシリスももう王位を放棄したからなぁ。今さら言わなくてもいいっていうか。な? オシリス」
「ん? うん、そうだねぇ。それもあるけど、俺は自分のことを話すより人の話を聞く方が好きだしね」
僕は間抜けにポカンと口を開けていたような気がする。
あ、そういえば‥‥‥
「あの、セクメトという方はどこへ飛ばしたのですか??」
僕がそう問うと、オシリスさんはそういえば、という感じで顎に手をやった。
「ハハッ、どこだろう? 一応俺たちの故郷方面に飛ばしたつもりではあったんだけど」
「ええ‥‥‥」
その辺は適当なんだ‥‥‥。先程はかっこよかったのに。
僕はこの兄弟達の魔法への考えの違いに驚いた。この兄弟達の適当さにも。
兄弟達適当すぎワロタ。
セトお前やってんなぁ!!最近トキメキ要素が少ないですよねすみません。次回は、ドキがムネムネするような展開が待っているかもしれないし、ないかも知れないし。
ここまでお読みくださってありがとうございます。
このお話がいいと思った方は是非広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!ふーん、国によって考え方も捉え方も違うよね、みんな違ってみんな良き!思った私はセト達はこのまま適当でいいと思います。
ご拝読ありがとうございました!また読んでくださいね!