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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第三章 セト達の秘密
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貴方達って何者?!

エリーとヴァレリアがレクターの別荘でまったりとした時を過ごし、レクターはブランシュ公爵夫人に教えられたお店に急いでいた。


その頃オシリスの酒場では何かが起きていた!?

 その頃オシリスの酒場では。屈強な男たちがオシリスの指示に従って着実にダンスステージを完成させていた。


「ふー、まあこれだけ進んだら後はぼちぼちでいいだろうな。早く見たいなネフティスとお嬢様の踊りを」


「お前それ王子の前で言ったら殺されるぞ」


 そうオシリスに注意するセト。エリーがいなくて若干やさぐれているようだ。


「ふふっ、セトさんは本当にわかりやすいですね。エリーさんがいなくてお酒の量が目に見えて増えて」


 やさぐれているセトの背中をさすりながらユーリがふふっと笑う。


「ばばばっ! ばっかじゃねーの!?//そんな事で俺が潰れてたまるかよ!」


 そうセトがユーリの手を振り払った時だ。一人の男が酒場に入り、その場の雰囲気が変わった。


 アイツは‥‥‥


「ん? セトさんお知り合いの方ですか?」


 ユーリが顔をあげ、そいつの方を見た。オシリスが口を開く。


「セクメト‥‥‥」


 セクメトと呼ばれたその男は、セトとオシリスのように背が高く、顔は化粧を施しているのか、赤い顔に黒の線で目を囲い、下瞼の真ん中から涙のように三本ずつ金色の線が引いてある。


 緑の瞳が誰かを探しているようにギョロギョロと光っていた。


「セト! オシリス!」


 呼ばれたセトはうえ〜と言うかのように顔を歪め、オシリスはさすがバーテンというべきか、顔色ひとつ変えずに微笑んだ。


「セクメト? セトさんの親戚か何かですか?」


 ユーリはセトとオシリスが兄弟だと言う事も話を聞いて知っており、その兄弟が多い事も知っていた。


「まぁそんな感じかな。ただ今はちょっと会いたくない顔かな。なんでこんな所に来たんだろうね? ハハッ」


「俺は寝たふりをするからな? オシリスも知らねーフリしようぜ」


「うーん、セクメトは何故来たんだろう?」


 オシリスは顎に手をかけて考えていた。


「オシリス、セト! よかった探してたんだ。次の王になる予定のイシスが殺されかけたんだ! 助けて欲しい。ホルスに探してもらってやっとここを見つけたんだ」


 ホルス、というのはセトとオシリスの兄弟たちの一人で、半人半獣の腹違いの弟だった。

 ホルスは大人しい性格ゆえ、よくパシリに使われる事が多かった。

 ここをセクメトに教えたのも、ホルスの大きな翼と、優しく悪気のない性格がもたらしたのだろう。


「待て待て待て、情報量が多すぎる。一から説明してくれ」


 寝たふりをしていたはずのセトが飛び起き、セクメトに説明を仰ぐ。


「まぁ、座りなさいな。ユーリはそのままでいいから」


 オシリスが優雅に微笑んで言った。オシリスはあくまで冷静な姿勢を崩さない。


「まぁイシスは俺が殺しかけたんだがな」


 セクメトが座ったかと思うとあっさり自白した。ユーリは思わず酒のつまみを喉につっかえさせた!


「だろうと思った。何やってんだよ全く。もう俺らは王権を放棄して兄弟の縁を切ったんだぜ?悪いが出来ることはないよ。わざわざホルスに頼んで探してくれた所悪いがよ」


 セトが呆れたように言いはなつ。ホルスには同情するが。幼い頃からパシリ扱いされて、それが染み付いてるんだろうな。


「頼むよ! 俺がイシスを殺しかけたことで故郷を追放されそうなんだ! 俺は、俺はセトみたいな力もないし、オシリスみたいに世渡りも上手くないし! どうしていいかわからないんだよ!」


「はぁ〜? お前は立派な大人だろうが。それにお前は男だろ、故郷を追放されてもここまで来れたんだ。なんとでもなるだろ」


「そ、それはここに来れば二人が何か知恵を貸してくれると思ったから。俺たちは兄弟じゃないか!」


 セトがはぁーとクソデカため息を吐いた。


「お前はどこまで考えなしなんだ。トトからは何か言われなかったのか? アイツは頭がいいだろ」


「トトは俺がイシスを殺しかけた事で怒って話してくれない。他の兄弟もホルス以外には徹底して無視されてる」


 トト、というのはセト達兄弟の弟の一人で親父の秘蔵っ子だった。もの静かで頭も良く、王位継承権は最初から破棄されていた。

 親父の計らいで、兄弟たちの醜い王権争いに巻き込まれる事を危惧しての破棄だった。


「じゃあお前実質『詰み』じゃねぇか。俺たちもいくら元兄弟とはいえお前に手を貸す義理は無いね」


「俺もセトの意見に賛成だよ。大体お前はいつも短絡的すぎるんだ。あれが気に入らないから、これが気に食わないからと、子供みたいに壊して」


 ーーーーずっと前から言おうと思っていたが。


「俺もセトも、セクメトが兄弟の中で一番嫌いなんだ。特にその考えなしの突発的な性格が。今日は許すが、明日にはこの街を去り、二度とその顔を見せないで欲しい」


 オシリスが優しく微笑んでいる。しかしその濃い青の双眸(そうぼう)は笑っていない。


「お、オシリス‥‥‥」


 やべ〜オシリスマジギレしてんじゃん。アイツ怒らせたら口でしか笑わなくなるんだよな。セトは大きな体を小さくしながら様子を伺っていた。ユーリも静かにセクメトを見遣(みや)っていた。


「なっ、なんだよなんだよ!! オシリスもセトも!! 兄弟たちも! 俺が何したって言うんだよ!!」


「イシスを殺しかけたんだよ」


 ブチィ!!!!


 オシリスの言葉を聞いた途端、セクメトが般若の形相になった!


「なっ、なんだよなんだよォ! せっかく来たのによォ〜!!」


 ゴゴゴ‥‥‥

 セクメトの周りの床がガタガタと揺れる。オシリスが極めて冷静に言葉を発する。


「ユーリ。ケルベロスを守って」


 バキッ、バキッ!


 オシリスの酒場の床がセクメトの怒りのオーラによって剥がれていく。


「これは‥‥‥! 魔法? オーラだけで何故床が」


 ユーリがケルベロスを庇いながら不思議そうに言う。


「セクメト、やめてくれ。長年かけてやっと建てた俺の店なんだ。いくら元兄弟でも‥‥‥」


「うるせえ〜!! 兄貴ヅラすんじゃねぇーーーー!!!!」


 その瞬間、セクメトの咆哮と叫びから炎が発せられた!


「なっ‥‥‥」


 ユーリは驚いた。叫びがそのまま炎に!? どういう仕組みなんだ!?


 セクメトの炎は改装中の一部を燃やしてしまった。


「ふーっ‥‥‥」


 オシリスは呆れたようにため息を吐いた。


「セクメト、俺はお前の兄貴ヅラなんかじゃない」


 オシリスがそう言った瞬間、セクメトが急に苦しみ出した。

 良く見るとセクメトの周りにはセクメトだけを包み込むように水の膜が張っていた。


「がぼっ、ゴボゴボっ!!」


「俺はお前の兄貴だ。それもお前とは違い、神々の恩恵を受けている。初めから俺たちに戦い(相談)を挑む事がお門違いなのだ」


 オシリスがセクメトに向かって手を伸ばす。


「セクメト、お前は故郷へ帰って自立しろ! アポーディリト(帰れ)!!」


 ガッシャアアアン!!


 オシリスが何か唱えた瞬間、セクメトが窓を割ってどこかへ水に包まれたまま吹っ飛んでいった!


「おー、セクメトもう戻って来んなよ〜」


 セトが口笛を吹きながら口を開いた。ユーリは一連の出来事が信じられないかのようにじっとケルベロスにしがみついて様子を見ていた。


 が、突然我に返って口を開いた!


「あっ! 貴方達は何者なんですか?!」




オシリスてめー!何か怪しいと思ってたらついに正体現したね。

※セト兄弟はみんな男の設定です。


ここまでお読みくださってありがとうございました。


セト兄弟いきなり情報量多!兄弟多!と思った方は広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね。兄弟が多い方はこういうのは兄弟だからいいじゃんっていう事にはならないですよね(何言ってるか分からん)。


ご拝読ありがとうございました。また読んでね!

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