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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第二章
153/269

番外編・バルカ学園 花組

こちらは番外編です。全体的にツッコミどころが過多すぎる仕上がりです。無視しても問題なしです。

 私はシリウス。

 

 あれだけ学校中を沸かせて、学校外にまでその名を(とどろ)かせていたレクターは、「怒らせたら怖いヤベー奴」というレッテルを貼られ、すっかりその鳴りを潜めていた。ザッマァァァ!!


 それでも一部のドMの女子からは「だがそれがいい」「私も叱られてみたい」「むしろ叱られたい!」という熱狂的な支持を受け、一部の層からは完全に神格化されていた。

 今日もレクターは取り巻きの女子を何人か引き連れて登校してきた。

 レクターは女子がついてこようと来るまいとどっちでもいいらしく、何事もなかったかのように澄ました顔でヴァレリアの隣に座った。


 ヴァレリアはというと、ダース●イダーのようなヘルメットは外し、バリケードも取り払っていたが、相変わらずレクターを女の敵か何かの勧誘だと思って警戒心マックスだった。


「おはよう、ヴァレリア」


「おはよう、レクター君」


 とは言っても基本的な挨拶は交わしているようだ。ヴァレリアのこういう変に真面目なところ、私はレクターに利用されないかと思って勝手にハラハラしていた。


 あいつ(レクター)はやばい。キレた時もそうだが、ヴァレリアを時々眺める視線に、執着じみた何かを感じる。たしかにヴァレリアは美しいが、かなりの変わり者だ。私も最初はヴァレリアは変わり者っていう認識しかなかったぞ。


 レクターくらいのイケメンになれば、いくらでも可愛い女子と付き合う事ができるのに! てか早くその取り巻きの女子のうちの誰かと付き合えよ! 私とヴァレリアの邪魔をするな。


 ーーーー放課後。


 今日は珍しくヴァレリアの方から話しかけてくれた。


「シリウス君! 今日もまた新刊が出るの! 付き合ってくれる?」


「あっ、ああ//喜んで!」


 私はヴァレリアから声をかけてくれた事が嬉しくて、思わず舞い上がってしまう。私が答えるとヴァレリアはぱあっと花が咲いたような笑顔を浮かべた!


「よかった〜! 私友達が読んでるような三次元の雑誌とかにはあんまり興味なくて。私の趣味に付き合ってくれるのシリウス君くらいだから! 私嬉しい! ドゥフフ!」


 かっ、可愛い〜!// ドゥフフ笑いも気にならないほどのヴァレリアのかわいさ。私の恋愛フィルターがかかってるかもしれないが、今のヴァレリアの笑顔を私しか知らないと思うと‥‥‥。胸の奥からグッと込み上げてくるものがある。


「ああ、私は資料を先生に届けてくるので、玄関で待っていてくれ!」


 このこのこのこのバカシリウス!! よりによって何故こんな時に学級委員の資料なんぞが手元にあるんだよ! 私はそう言うとマッハ10(テン)を超える勢いで職員室に走った!


 * * *


 私は言われた通り玄関で靴を履き、シリウス君を待っていた。


 靴のつま先をトントンとして、かかとを入れようとした時だ。


「お?」


 私は靴紐が外れている事に気がついた。


「ひもさん外れかけてますよ〜♪こないしてるうちに一日終わんねん」


 独り言を言いながら私は靴ひもを直して顔を上げた。


「んお?」


 顔を上げた先にいたのはシリウス君ではなく‥‥‥


「レクター君」


 レクター君は背が高いのでどうしても見上げる形になってしまう。シリウス君もなかなか高いけど、レクター君はそれプラスムッキムキなんだよね。私は体格差カプ好きなので密かにヘルメットに隠れてレクター君に集まる女子で怪しい妄想してたんだ。


(ドゥフフ、ゲヘ、い、いいなぁドゥフ。体格差カプ。レクター君のあの大きい手で頭ポンポンされてる女子! ブッフォ! 萌える萌えるわ! いいぞもっとやれ)


 と着実に自分の中のカルマを上昇させてたのだけど、もしかして気付かれた!?!? で、でもバレたとしても私の妄想は誰にも邪魔させないわよ! 

 あ、あれ? いつもレクター君の周りにいる女子がいない!? どうしよう私の妄想ガガガ!


「レクター君、あの。いつもレクター君の周りにいる女子くんたちは??」


「‥‥‥」


 レクター君は答えなかった。私はみるみるやる気を無くしていった。もうあの光景は《今日は》見れないのね。そう思うともっと見ておけばよかったと後悔の波が押し寄せる。


 バンッ!


 突然すごい音と共に靴箱が凹んだ! いや! すごいなレクター君! 私のバリケードといい、オメー破壊してばっかだな!


 と、私は今置かれている状況にやっと気付いた。


(こ! これは! 世に聞く【壁ドン《ただしイケメンにかぎる》】ってやつでは!? いやいや、何故私にそれを!? 他の女子くんたちにしたらいいのに! そうしたら私も陰からコッソリ覗いてニチャァできるのに!!)


「ヴァレリア、俺を見ろ」


 グイッと半ば強引に顔を上に向かされて、強制的に目を合わされる!

 いや! これも私がニヤニヤしながら陰で見たいシチュエーションNo.1やないかい! スケブに真っ先に描きたい! 何故私なんだ!


「ヴァレリア、俺を見てなんとも思わないのか? かっこいいだとか、イケメンだとか」


 えっ?? 私は耳を疑った。レクター君は紛れもなくイケメンだわ! それは彼も知っているだろうに、何故私に今さら確認するの?


 憧れのシチュエーションNo.1の顎クイをしてまで、それを私に確認する意図は一体!? ああ、それよりももし私のドッペルゲンガーがいたら、この状況をスケブに描いてくれ!


「レ、レクター君。それをどうして私に?」


 どうして私に聞いてくるの? まさか、私が目が見えないと思ってる!? いえ! 私は見えすぎる程見えているわ。何度も妄想でタイトル作ったもの。「青い瞳の転校生」だとか、「彗星の如く現れた男」だとか。


「ヴァレリア、お前だけだ。俺に興味を示さないのは。俺は今まで生きてきて、こんな体験は初めてだ。ヴァレリアを前にすると、わけもなくドキドキするんだ」


 出たーーーーッ!! ヒロインがクラス一のモテ男に何故か好かれる状況に置かれるっていうシーン!

 でもそれは私じゃないでしょ!? 私は自他共に認めるオタクで、変わり者で、こういう状況になるのはむしろ、アナスタシアでは!?


「あ、あの、レクター君は何か誤解してるわ。私はレクター君をかっこいいと思っているし、多分レクター君は今まで私みたいな女子に会ったことが無いから、珍しくて勘違いしているのよ。レクター君にはもっとふさわしい女子がいるはずだわ」


 私はありとあらゆる少女漫画の状況を総動員してそれっぽい言葉を並べる。


 あ! 今流行りの悪役令嬢っぽい事を言えばいいのでは!? 何と素晴らしい思いつき!


「レクターく‥‥‥!」


 気付いた時には私はレクター君に唇を奪われていた!

 あ、これよくあるシーン! でも私じゃ無いのよぉ! 私はこういうありがちなシーンを見てニチャアってしたいだけなのに!


「ンッ、レクター君! やめて!」


「やめない」


 どうしよう‥‥‥。逃げようとしてもいつのまにか手首をガッツリ握られ、腰も(たくま)しい腕で支えられて身動きひとつ取れない。


 私はぎゅっと目を閉じた。キス待ちをしているわけでは断じて無い。悔しいのだ。

 他の女子くんたちでやって欲しかったこの状況! 悔やんでも悔やみきれない!


「ヴァレリア。逃げないのか? このまま続けてもいいのか?」


「‥‥‥。レクター君! 私はレクター君にはふさわしくないの! レクター君は何か誤解してる! こんな状況に陥っていいのは、私じゃ無いはずよ!」


「状況? 状況って何?」


 ぬぁぁぁあぁ伝わらん!!


 でもどうしよう。いざとなると言葉が出てこないわ。だって私もレクター君と負けないくらいドキドキしてるもの! 何と言ったらレクター君は離してくれるのだろう!? てか私のファーストキッス奪われた!? 奪われたよねぇ!? 


 えーと悪役令嬢っぽいセリフ、悪役令嬢っぽいセリフ‥‥‥


「考え事とは、随分余裕だな。もっとしてもいいのか?」


「違う! 私はどうやったらレクター君が離してくれるのか考えてたの!」


「へぇ〜‥‥‥」


 痛恨のミス!! 私は選択肢を間違えた! こういう時、レクター君は絶対離してくれないどころか‥‥‥


「んうっ」


 うおおお! ティーンズラブとかでよく見るディープなやつや! 


 私は「やめて」と言うようにレクター君の肩を叩いたり、足を蹴ったりした。でも何故? 思うように力が入らない。だってレクター君のキス‥‥‥。すごく‥‥‥


 こうなったらもう絶対レクター君は何がなんでも離せへんじゃろ! 何か妄想とか抜きにして普通に腹が立ってきたな?


「いい加減にして!!」


 バチンッ!


「いたアァ!!」


 レクター君の頬を叩いたが指が変に当たってしまい、逆に自分の手を痛めてしまった! 慣れない事するからこうなるんだ。


 私の悲鳴にびっくりしてレクター君は私の体をやっと離してくれた。


「だ、大丈夫か!? ヴァレリア! ごめん! 俺は何て事を‥‥‥」


 手を抑えてうずくまる私にレクター君が背中を(さす)りながら声をかける。

 チャンスだわ! ここからが俺のターンだ!!


「よくもこの私に傷をつけたわね! キスも、は、初めてだったのに私の許可なく奪ったりなんかしちゃってさ!// あなたなんか処刑よ処刑!! ザマァミロだわオホホホホ!!」


 よく見る悪役令嬢のセリフ《っぽい》事をレクター君を睨みながら言う。


 レクター君はキョトンとしている。


「ああ、よかった。平気そうだな。でも一応心配だから保健室に行こう」


 と言うとレクター君はあっという間に私を「お姫様抱っこ」して保健室へと足を向ける。壁ドン、キス、保健室、お姫様抱っこ!

 こんな欲張り三点セットみたいな状況聞いてない!


 《もうどうしてこうなるのよ!!》

 私は心の中で頭を抱えながらそう叫んだ!


 一方のシリウスは、提出する書類に不備があり、マッハ10(テン)で直していた。笑



テンプレまみれにしてみました☆すみません楽しかったです。ヴァレリア様「女子くんたち」呼びワロタ。


今宵私が言いたかったのは「マッハ10(テン)」です。


ここまでお読みくださって本当にありがとうございました!

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