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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第二章
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二人暮らしの一日目

※この話は149話「私、レクターが好きです!」

の続きです。100話以上書いてるのに未だに「溺愛」とか「王道恋愛」がわかりません(笑)。ヴァレリア様と一緒に一生模索中です。



『ゲェェ!! なんだこのヒッデーキッチンは!? この(かま)なんか爆発してんじゃねぇか!!』


 俺様はニーズヘッグ。ヴァレリアに取り憑いていた悪魔だったが、レクターに小さくされて、さらに弱っている隙を突かれて逆にヴァレリアに支配されてしまった悲しき悪魔だ。


 まぁ最近はその方が居心地が良いのでこの状態もいいかなと思っている。その俺様は今、キッチンの惨憺(さんたん)たる状態を目の当たりにしていた! フライパンは焦げて使い物にならず、パンを焼く窯もぶすぶすと煙を出している。


『ヴァレリア! お前は何をやってんだ! キッチンなんか入った事もないお嬢様なのに!』


「あら、ニーズヘッグおはよう。レクターがしばらく二人で過ごそうって仰っていたので、お食事の用意でもと思いまして」


 そう言ってこちらへ向けたヴァレリアの顔は、(すす)で真っ黒になっていた。 


『ゲェェ!! ひでぇ顔! レクター! レクター!!』


「ニーズヘッグ! レクターは今寝てるわ! 起こさないで」


 私の言うことも聞かず、ニーズヘッグはレクターの元へ向かって行ってしまった。


「なんだこのキッチンは! なんだヴァーリャのその顔は!真っ黒じゃないか!? 怒! こういうのは女中に任せれば良いのだ!」


「えっ? だってレクターが二人っきりで一緒に暮らすって言ったから、てっきり」


 それを聞き、レクターがヴァレリアの手を握る。


「ヴァーリャ、気持ちは嬉しいよ。だが俺はヴァーリャの方が心配だ。今までキッチンなどに立った事もないのに、無理をする必要はないのだ。女中の一人や二人、用意できる。万が一の事があって、ヴァーリャのこの玉の肌に傷がついたらどうする?」


 レクターが歯の浮くようなセリフをつらつらと並べながらヴァレリアの治療をしている。一方でヴァレリアは膨れっ面をしていた。


「それじゃあ全然意味がないじゃないですか!! 二人っきりってそういう事じゃないはずですわ」


 どうやらヴァレリアは「二人っきり」で過ごす事に執着しているようだ。


「それに、今の私はただのヴァレリアですわ! いえ、正確には王子と婚約してるし、侯爵家ですけど」


 ヴァレリアは混乱しながら言う。


「わかったわかった。女中は雇わない。食事は街から調達しよう。それで良いだろヴァーリャ」


 レクターが私の頭を撫で撫でしながら言う。青い瞳が私の瞳を覗きこんでいる。

 最初はこの青い瞳の中に揺れる炎が怖かった。でも今はただただかっこいい。ああ、これが恋っていう気持ちなのね。少し触れられるだけで心臓がドキドキするし、頬は熱を持つし、何をしていてもレクターを目で追ってしまうわ。


「レクター!」


「ンッ!?」


 私は堪らなくてブチュウとレクターに口付けた! 瞬間、ガチッと歯が合わさる。


「いイッ‥‥‥! てて! わかったわかった! お前が俺を好きなのはわかったから!」


 レクターは私の体を離して口を抑えた。どうやら今ので唇を痛めたらしい。


「まぁごめんなさい。今まで私からあまりキスしたことがないのです。大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ、むしろ愛が伝わったよ」


「レクター‥‥‥」


 イチャイチャを見せつけられる俺様‥‥‥。朝っぱらからようやるなお二人さん。糖分過多だ! 最悪だ!


『おいヴァーリャ! お前俺様と変われ! ナンチャラエッダを唱えるんだよ!』


「えっ?」


『俺様に任せろ! レクターはこのキッチンを直してくれ!』


「? 何をする気だ? ニーズヘッグ」


 レクターは(いぶか)しがりながらも魔法でキッチンの片付けを始める。


『へへっ、まぁ見てなって! ほらヴァーリャ!』


「あ、ああはい。ストゥルルエッダ!!」


 ボフンッ!!


『へへー! 料理のことなら俺に任せな! 伊達に何千年と生きてないぜ?』


 そう言うとヴァレリア(に憑依したニーズヘッグ)は、テキパキと作業をし始めた。


「へぇ〜やるじゃないか、ヴァーリャ」


『へへ〜、俺様って意外となんでもできるんだぜ? レクターやヴァナルカンドやユーリのせいでいまいち強キャラ感出せてないけど。女神も助けたし、結構重要なポジションにいると思うぜ』


 ヴァレリアは話しながらも着々と準備をしている。シチューを茹でたり、魚や野菜を焼いたりしている。


『この辺は魚が美味いからな! うなぎが大量にとれたみたいだから奮発するぜ!』


 ニーズヘッグはヴァレリアが何時間キッチンにいても気づかなかった食材を使ってあっという間に朝食を仕上げてしまった。


「ハハッ、すごいなニーズは。こんな技術を隠していたとは! 助かるよ。ありがとう」


『べっ! 別にお前のために作ったんじゃねぇし! ヴァーリャがあんまり不器用で心配だったから』


 ヴァレリアの顔がカァと赤くなる。かっ、可愛い! 俺は思わずニーズのことも構わずヴァレリアを抱きしめてしまった。


「ヴァーリャ、ありがとう‥‥‥。うーん、キッチンにいてもヴァーリャはいい匂いがするなぁ」


『ちょっ‥‥‥』


 レクターはすかさずヴァレリアの顔を自分の方に向け、口付けた。しかもディープなやつを!


『んっ! ほまへ(おまえ)!』


 ヴァレリアが両手をバタつかせている。無理もない。今のヴァレリアはニーズヘッグでもあるのだ。だが、口付けが深くなるにつれ、ヴァレリアは大人しくなった。


「んう、レクター//」


「可愛い。ヴァーリャ」


 ちゅ、ちゅっといつまでもキスをし合い、いつまでも二人はイチャイチャを()める気配はなかった。


『ヴォエ〜!! いくら中身が違うとはいえ、一瞬レクターとキスしちまった! あいつ絶対俺様のこと舐めてるだろ!怒』


 ヴァレリアの体と意思を入れ替わったニーズヘッグがブツブツと文句を言っていた。



ニーズヘッグの意外な一面!

ていうタイトルにすればよかったかな?


ここまでお読みくださってありがとうございました。


ニーズヘッグやるじゃない!と思った方は広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね。この描写は溺愛か?と一生思ってる私は、一生悩んでると思います。

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