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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第二章
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番外編・バルカ学園 花組

変な話が続いてしまいました。何のジャンルの話かわかりませんね。

 私はシリウス。このクラスのイケメン神ファイブの一人だ。


 その神ファイブを超えるイケメンが転校して来たという話題は学校中に広まり、どういうネットワークか知らないが、他校にも知れ渡った!


 栗色の髪に褐色の健康的な肌、高身長でイケメンで、無駄な話は一切しないが話しかけると笑顔で応えてくれる。同性にも気がねなく話してくれるので、レクターの周りにはいつのまにか人だかりが出来ていた。


「ハハッ、それは面白いな!」


 眩しい笑顔に青い瞳。女子たちはその爽やかな笑顔にあっという間に虜になり、中には神ファイブのファンだった女子たちもいつのまにかレクター推しになる女子もいた。


 アナスタシアもレクターが気になっているようだが意外にも気になる程度でハンニバルほどではなかった。


 そしてヴァレリアはと言うと、休憩時間の度にヴワッと女子がレクターの周りを囲んでワイワイやるので、隣りの席のヴァレリアは、漫画を読んだり昼寝をしたり早弁をすることに集中出来ずかなりイライラしていた。


 でもそれに対して怒りをぶつけないのがヴァレリアだった。ヴァレリアは女子が大声で騒ごうが泣こうが、女子がレクターに対してぶりっ子キャラを作ろうが平然としていた!


 人は人、自分は自分なのだ。

 だがそれがヴァレリアの良いところだなあ! 普通なら文句のひとつも出そうなのに。


「あの子、ヴァレリアはよく耐えられるわね。私だったら席を替えてもらうなり何なりするわよ」


 ヴァレリアの不思議な魅力に勝手に嫉妬していたアナスタシアもこれには流石に心配したらしい。


 確かに席を替えてもらうなりすればいいのに。


 私はヴァレリアを呼んでそれとなく聞いてみた。


「なぁヴァレリア。あの席を替えてもらうなりした方がいいんじゃないか? 集中できないだろ? その、読書や昼寝に」


「あの席お気に入りなの! 一番後ろだから早弁もバレにくいし、漫画を読んでるのもバレないし、廊下が近いから非常事態にはすぐに出られるしね!」


 ヴァレリアの席は廊下側の一番端の一番後ろ。確かにそうだが、多分それ全部バレてるぞ?


「それに私いい事を思いついたのよ! 明日を楽しみにしてて!」


 翌日ーーーー


 レクターの登校よりも人々の注目を集めたのはヴァレリアだった。


 ヴァレリアはダース●イダーのような被り物をしており、呼吸をするたびにシュコーシュコーという怪しい音が聞こえる。


 加えて驚いたのはヴァレリアの席周りだった。ヴァレリアの席には周りを囲むように鉄の盾が貼り付けてあり、その鉄の盾には無数の針が取り付けられていた。まさに完全武装、バリケードだ。

 だがここは学校だ! そこまでして漫画と早弁と昼寝をしたいというヴァレリアの強い意志に、私は思わず吹き出した。


「はははっ! これで誰も私の席に近づく事はできないわよ! シュコー!」


「確かに近づく事はできないだろうけど、あんたねえ‥‥‥。昼寝と早弁のためにそこまでする?」


 アナスタシアが耐えきれずヴァレリアに声をかける。


「何を言っているのシュコー! 私はこのためだけに学校に来ているのにシュコー!」


「わ、わかったわよ。ガルシア先生に怒られても知らないんだからね!」


 アナスタシアはそう言うとふんっという感じでヴァレリアの席を離れた。


 そこへレクターが数名の女子を引き連れて登校して来た。


「‥‥‥なっ!!」


 レクターがヴァレリアの姿を二度見して叫びをあげた。


「おいヴァレリア! 何をしている!」


「おー! おはようレクター君シュコー! 何をって何が? あ、このヘルメットのこと?? これはお父様が作ってくれたの! 聞きたくない音や声は聞こえなくて、食事の時には顔面の動きを察知して勝手に顔を出してくれるのよシュコー! シュコいでしょ!」


 シーン‥‥‥。一瞬耳が痛くなるほどの静寂が教室を包み、やがてどこからともなく笑いが(こぼ)れ、あっという間に教室中が笑いに包まれてしまった!


「だ、だめだ! 我慢してたけど今の『シュコいでしょ』で耐えきれなかった!」


「俺も俺も! 前から変わってるとは思ってたけど、ヴァレリアそれはないだろ!」


「ハァ‥‥‥。もう何やってんのよ」


 私も当然笑ってしまった。大体何なんだその「シュコー」は! 鳴らないとダメなのか!?


 レクターに着いて来た女子も笑っている。


 クラスの全員が笑っている中で、レクターとヴァレリアだけが真顔だった。


 ヴァレリアは何故みんなが笑っているのかわからないという様子だ。


「? 何でみんな笑ってるの? シュコー! そんなに笑われたら私、私も、あははははシュコーシュコー!!」


「ぎゃははは腹がよじれるー!! 笑い死ぬ!! 誰か助けて!」


 一番笑っていたのはユーリで、笑い泣きしながら助けを呼んでいた。


 バリバリバリー!!!!


 突然レクターがヴァレリアの机周りのバリケードをいとも簡単に剥がした!


「きゃああ〜!! レクター君! 血が出てるわ!!」


 レクターの周りにいた女子の一人が金切り声を上げた。どうやらレクターは鉄の針で怪我をしたらしい。何でそんな事をしたのか知らんけど流血ザマァ!!


「本当だわ! 早く手当てをしないと!!」


「いや、構わない。これくらい大したことない。それよりヴァレリア。その鉄仮面は何だ? 今すぐ外せ!」


「ハァ? 何でそんな事貴方に指示されなくちゃいけないのよ!? シュコー! さてはオメーやっぱアンチだな!?」


「俺はアンチじゃない! てかアンチって何だ!?」


「そんなの聞かれても私にもわからんのですけどシュコー! それよりどうしてくれるのよシュコー! 私のお父様がせっかく作ったバリケードが」


 その時レクターの取り巻きの一人がふふっと笑った。


「なぁに!? あの格好! シュコシュコ言ってて馬鹿みたい!」


 いやいや! またしてもこれはフラグだ! あの女子、多分レクターに嫌われるぞ!


 それを聞いたヴァレリアは固まった。


「ヴァレリア‥‥‥。ちょっと貴女、やめなさいよ。ヴァレリアはちょっと変わってるけど誰にも迷惑はかけてないわ。少しシュコーが気にはなるけどブフッ」


 立ち上がったアナスタシアがヴァレリアの背中をさすっていたが堪えきれなくて思わず吹き出した。


「こ、これは違うのよヴァレリア! 貴女があんまり突発的で、おかしな事ばかりするから」


 アナスタシアが取り繕うように慌てて言う。


「ヴァレリアっていうの? その子。おかしなヘルメット被ってるくせにレクターの隣りに座らないで!」


 その一言を皮切りに、レクターの取り巻きの女子たちが口々にヴァレリアの文句を言ってきた。


 うわぁ‥‥‥。これが女子の団結したいじめか? エグいなぁ。いやいや感心している場合ではない! 助けに行かなくては!


「ヴァレリ‥‥‥」


「お前たちいい加減にしろ!!」


 私が声をかける前に、レクターが女子たちに向かって怒声を上げた! いや、怒声というかほぼ咆哮と言ってもいい! 教室中がビリビリする! 先程まではなかった殺気がレクターの周りを囲む! 人一人、いや百人殺せそうな殺気だ!

 私はレクターの殺気に押され、それ以上近づく事ができなかった。


 ヴァレリアだけはキョトンと《多分》している。


「ヒィィー!! 助けてぇ命だけは取らないで!」


 レクターの周りにいた女子たちは蜘蛛の子を散らすように散り散りに去っていった。中には腰を抜かしながら、泣きながら逃げた女子もいた。


 ヴァレリアはしばらく黙っていた。


「ヴァレリア、俺はアンチじゃない。勧誘でもない。俺が言いたかったのは」


「レクター君! 女子を泣かせるなんて最低ね! シュコー! ちょっとお腹空いたから弁当食うわ」


 と言ってヴァレリアは何事もなかったかのようにバリケードが外れたままの机で、ヘルメットは被ったまま、早弁の用意をし始めた。


「あらら、ヴァレリアはマイペースね。レクター君頑張ってね」


 アナスタシアは心底気の毒そうにレクターの肩をポンと叩いた。当のレクターはヴァレリアの方を見ながら呆然としていた。


 レクターは血まみれの腕で前髪をかき上げた。あっ、その仕草厨二病みたいでかっこよ。今度私もやってみよう。


「ヴァレリア‥‥‥。フッ、おもしれー女」


 いやどうしてそうなる!? ヴァレリアもそうだがレクターも大概おかしいな!?!?


 私は思わず心の中でツッコミを入れた。



シリウスは番外編(この話)だと結構砕けた話し方しますね。

ここまでお読みくださって本当にありがとうございました!

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