赤い炎と青い炎
アナスタシアがヴァレリアの体に入れ替わって初めて森の中で朝を迎えた
森の朝は清々しく、アナスタシア(ヴァレリア)は改めてヴァレリアの体の素晴らしさを実感するのだった
一人で顔を洗いに行ったヴァレリア
タオルを差し出され、受け取った先には何故かレクター王子が立っていた
「あ、エリー?ありがと‥‥‥?」
エリーだと思って見ると、違った。そこには城にいるはずのレクター王子が立っていた。
城での正装と違い、革の軽装備と腰には剣を携えており、更にフードを深々と被っているが。
そこに居たのは正しくレクター王子だった。
「ぇ‥‥‥」
私は小さな声しかあげられなかった。だって、何故ここに王子が?お城は?政務は?
「お、王子‥‥‥珍しいですね、こんなところに、従者も付けずに」
私は半ばパニックになり、やっとの事でそれだけ言えた。
「‥‥‥ヴァレリア、見ろ、俺を!」
「‥‥‥ッ!?」
無理矢理顔を引っ張られ、王子と目を合わせられる。
(王子、何か怒っている?一体なぜ?私が婚約破棄を申し出たから?でもあれは王子も了承済みのはずなのに‥‥‥)
などと考えていると、私の顔を王子が覗き込む。
「‥‥‥ッ!!」
この目、この目だ。
婚約候補発表の時、挨拶の時初めて王子と目が合った。
遠目で見た時はまるで聖人のように優しい笑顔で私達の方を見ていたが、ふと目が合った時に、私はこの王子の目が怖いと直感的に思った。
『すみません、青い炎なら見たことあるんですが、、まだ私が学園にいた、授業中の実験で‥‥‥。ですけど、あと‥‥‥」
あの時、私は確かに王子の瞳の中で静かに燃える青い炎を見たのだ!
悪寒さえ感じさせる、深くて、暗くて。ゆらゆらと揺らめく青い炎。凍てつく氷河さえ凍らせてしまいそうな光を放つ瞳、どこまでも深淵で、何を考えているのかわからない。
「‥‥‥王子」
「何故だ、俺は、お前の事はどうでもよかったはずだ、なのに‥‥‥」
私の顔をジロジロ見ながら、噛み殺したような声で王子が呟く。
(そうですよ、王子は私を禁足にするほど会いたくなかったのでしょう??なのに何故??)
「今はお前の事が気になって仕方がない」
今、ヴァレリアと会って確信した。この違和感の正体はヴァレリアの雰囲気だ。生きている事を心から喜び、命に満ちた、溢れる生命力を感じさせる雰囲気だ。
このどうしようもない
この生き生きとした
変わってしまった女が
俺とは正反対な生き方をしているこの女が気になって仕方がない。
うぁぁぁぁ!なんか、なんかぁ!赤面しちゃいますー!
レクター王子は急に変わってしまったヴァレリア(アナスタシア)が気になって仕方ないのです。
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