私の王子よ 取らないで
前回漸く自分がレクターを男として意識している事が判明したヴァレリア(笑)
そんな事ある?と戸惑いながらもレクターはヴァレリアをこれはこれでアリだと思うのだった!
「ヴァーリャ、俺は酒場に行くがお前はどうする?」
装備を整え、マントを羽織りながらレクターが言う。ああ、眩しすぎて見えないですわ! レクターがかっこよすぎて‥‥‥
今までこんな事はなかったのに! 何で何で、レクターはそんなに一挙手一投足がとても優雅で格好良くてスタイリッシュなんですの!?
* * *
ーーーーあれはまだ私がお城に隣接する学園にいた時、お嬢様方が口々に言っていたのはこういう事?!
「あ、見てレクター王子よ! いつ見ても麗しいわねぇ」
その頃の王子はいつも執務室か何かにこもりきりで、お顔を見る事など滅多になかった。
私はそもそも虚弱なので光などは避けていたのですけど、せっかくなのでと人の影に隠れてこっそり覗く事ができた。確かに王子と従者がテラスに居たわ。でもお嬢様方が言っているような麗しいとかそういう言葉はイマイチピンと来ていなかった。私が幼かったというのもあるかもしれないですが‥‥‥
「いつお見かけしてもイケメンねぇ〜。見てあの彫刻のような横顔」
「絵画から出てきたように美しいですわねぇ〜」
学園のお嬢様方の視線を独り占めしている事にも気づいていない様子で。その頃の王子はテラスに出て何事か考え事をしているように見えた。
お嬢様方がはしゃいでいる中一方で私は。
(相変わらず厳しく、冷たい顔をしていらっしゃるわ)
* * *
ーーーーとしかその時は思わなかったのですけど、今! その王子が! あのお嬢様方の視線を独り占めしていた王子が! 私の目の前でくつろいで、お城で着るような正装ではなく冒険者のような格好をして! 私の目の前で私に微笑んでいる!!
私、本当はとんでもない事をしてしまったのでは?? だってこんなハンサムな方が、私をすすすす好きになるはずがないですわ?!
ひょっとして婚約も何もかも嘘だったのでは!? 私の願望が見せたまぼろしだったのでは!?
頭の中がぐるぐるしてきましたわ! こんなのいつもの私らしくない!! どうしちゃったのよ!
「ヴァーリャ、やはり外は寒いし今日はここで過ごすか?」
レクターが心配そうにこちらを見る。
「いえ、王、レレレレクターと一緒に行きますわ。ニーズも酒場に行っているだろうし」
「はは、そうか。それなら」
そう言ってレクターは私のマフラーを巻き直した。
「外は寒いからな、俺は平気だが」
レクター‥‥‥! 私はたまらなくなって思わずレクターにしがみついてしまった。
本当なのだわ! 本当! まぼろしでも何でもない! 本物の王子、レクターがここに私の目の前にいる!
「レクター、ごめんなさい。今まで‥‥‥。レクターがおおおお男だという事に気付かなくて。いや気付いては居たんですけど、このように心臓がドキドキする体験は今までなくて。私自身、まだ混乱していて‥‥‥」
何故かしがみついたレクターを、離したくなくて私は必死にしがみついていた。何故かわからないけど、だ、誰か他のお嬢様方にレクターを取られたくない。レクターと離れたくないとこの体が言っている。
もお何なのこの気持ちは!?泣
「ははは、焦る事はないよ。先程も言ったようにゆっくりと学んでいけば良いのだ」
そう言って私を抱きしめ返してくれ、私の頭をぐしゃぐしゃにかき混ぜた後、私の体を離そうとするレクター。
* * *
「あらアナスタシア様、貴女も王子の麗しい姿を見にいらっしゃったの?」
「えっ、いえ私はそんな事は‥‥‥」
「まぁお珍しい。この城の女性は皆、レクター王子の姿を一目見たいという女性で溢れかえっていますのに」
レクター王子。5歳からその才能を認められ摂政と共に国を支えてきたお方‥‥‥。そしていずれは次期国王となるお方でその姿は才色兼備で非の打ち所がないほど美しい。(と言われているらしい)
お嬢様方の一人が笑って言う。
「ほほ、この学園に入学したとはいえ、アナスタシア様はまだ13歳よ。まだ「そういうの」はお分かりにならないのでしょう?」
「まぁ、ほほほ。それもそうですわね!」
【「そういうの」?】
あの時他のお嬢様方に少し馬鹿にされたのにも気付かず、もちろんそのお嬢様方は「そういうの」の意味も教えてくれず、「そういうの」の意味をずっと考えていた。
私はお嬢様方が立ち去ったその後も、テラスに出ている王子の横顔を見ていた。歳上とはいえ、まだあどけなさを残した王子の姿。残念ながらその横顔に特に何も思うことはなく‥‥‥
あのお年で政務を仕切るなんて大変そうだな、と思うだけで。
* * *
あの時の私! 今にして思えばなんて鈍感で激鈍だったのかしら!? レクターやエリーが言っていた意味が漸くわかったわ。
「い、いや! 行かないでください!」
咄嗟にそう叫んでいた!
「レ、レクターは私の、私だけの男性なの!」
そう言ってグイッとレクターを半ば強引に引っ張り、レクターの横顔にキスをした! あの時城中のお嬢様方の視線を独り占めしていた横顔。月明かりに照らされていた凛々しい横顔に。
「え‥‥‥」
驚いたレクターが小さな声を上げる。私はそれを無視して急いでその場を去る。多分今の私の顔は真っ赤になっているはずですわ!
「でっ、では私は先に酒場に行っていますわ!//」
その場にぽつんと残されたレクター。先程ヴァレリアにキスされた頬を触る。そこだけ熱を持ったように熱い‥‥‥
な、なんなのだ? なんなのだ一体? 泣いたり甘えてきたり、離れてはダメだと言いながらくっついてきたり、キスはダメとか言いながら自分からしてきたり!
ぬぉぉぉぉぉ!! ヴァーリャが何を考えているのか全然分からん!!!! 誰か教えてくれ!!!!
いや〜楽しそうっすねお二人さん。私はドキがムネムネして、なんか変な気持ちなってきましたよ?!
特にヴァレリア様は忙しそうでしたね。しかもちゃんと王子の気持ちを振り回して行くという、罪深い女性ですわヴァレリア様は!(誰?)
何か分からんけどキュンキュンしてきたという方は広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!
ご拝読ありがとうございました。また読んでくださいね!