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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第二章
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そんな事ある?

ニーズヘッグに言い捨てされ、その場に立ち尽くすヴァレリアとレクター。

レクターはニーズヘッグの言葉の意味はわかっていないようだったが‥‥‥

 ニーズが去り、部屋には静寂が訪れた。


「大人の男‥‥‥? 婚約するまで?」


 俺は混乱していた。ニーズヘッグは確かに言っていた。ヴァレリアは、先日まで俺と婚約するまで、俺が大人の男だと知らなかった?


 ヴァレリアの方を振り向く。真っ赤になった顔を誤魔化すように、両手を頬に当てている。


 うん‥‥‥。可愛い。


 いや、分からん! ニーズの話を聞いても分からん! 俺と婚約するまで大人の男がどういうものかわからなかった?? どういう事?


「うーん、よく分からんが。ヴァーリャは俺を、婚約するまで歳上の男としては見てなかったということかな?」


 性別も体格も全く違うこの俺を、今まで「大人の男」としては見ていなかったと?


「あの、えっと‥‥‥。そうではなくてですね。レクターを、そういう対象として見ていなかったというか。今まで気付かなかったというか。レクターの顔が、実はものすごく整っている事とか、そそそその//はだ、かが」


「? よくわからないな。とにかく座ろうヴァーリャ。ずっと立ちっぱなしは辛いだろう?」


 ヴァレリアは俺がせっかく案内した一番暖かい場所から離れて、いつのまにか部屋の隅に立ち尽くしていた。


「で、でも‥‥‥」


「‥‥‥」


 ヴァレリアの話もニーズの話も全く分からんが、ひょっとしてこういう事か? 俺はある事を思いつきヴァレリアに近付くと、そっと髪を撫でた。


「ヴァーリャ‥‥‥。ひょっとしてこういうのがダメ?」


 俺はヴァレリアの耳元でわざと囁く。ふとヴァレリアの方を見ると、目を閉じて震えていた。ヴァレリアの薔薇のように色付いた唇から甘い息が微かに漏れる。


 俺は今度はヴァレリアの頬を撫でる。


「ヴァーリャ、俺を見ろ」


 固く閉じていた瞼を震わせて、やがて綺麗な紫の瞳が開き、俺の青い瞳を捉える。その途端、ヴァレリアの顔がボボボと一気に火が付いたように顔が赤くなり、慌てて視線を逸される。


 なるほど、わかった気がする。ヴァレリアは今の今まで俺を「男」として認識していなかったのだ。それで最近意識する様になって急に態度がよそよそしかったのだな。これは思ったより難儀だな?


 ‥‥‥。いや、これはこれでアリか?


 そりゃそうか。まだ男女の事、恋愛の事について何も知らないんだよなヴァレリアは。まだ16歳だもんな。おまけにヴァレリアは自分の事となると途端に鈍感になる。


 婚約するまであんなにゴネていたのは、ヴァレリアは婚約イコールいずれ国王となる俺と契約する事だと思っていた節があった。男女の契りは全く別のものとして勝手に解釈して。


 ヴァレリアにとっては男女の事など二の次だったのだ。おままごとの延長のままの認識で今まで過ごしてきたんだよな。もちろんハグもキスも、おままごとの延長上にしか存在しない。


 ヴァレリアにとっては挨拶程度の事だったのだ。


 それ以上の行為は、そもそもヴァレリアの認識にはなかった事で。


 なんだ、結局オシリスの言った通りだった。そもそも認識が違っていただけの話だったのだ。そう思うとホッとした。


「ヴァーリャ‥‥‥。こっちへおいで。座って話そう?」


 俺はヴァレリアの手を取り、暖炉のそばへ導く。


 俺はいつまでも俺と目を合わせないヴァレリアを無視して、今思っていた事を口にする。ヴァレリアが急によそよそしくなった事の理由、根底にはこんな事があったのではないかと。ヴァレリアはずっとこう思っていたのではないかと。


「‥‥‥。えっ?」


 それまで俯いていたヴァレリアが驚いたように顔をあげる。


「そっ、そうだったんですか? わ、私は‥‥‥」


「うん、そうだよ」


 ヴァレリアはまだ自分の気持ちがわかってないようだ。


 そうだ。今まで抱きしめたり、キスしたりという事はヴァレリアにとってはおままごとの延長‥‥‥。だとしたら。


 俺はヴァレリアの手を取る。面白いくらいにビクリとなるヴァレリアの体。


(こんなにも変わるのか? 意識するかしないかで?)


 俺はヴァレリアの顔に再び手を伸ばす。途端にまぶたがぎゅっと閉じられ、まつ毛はふるふると震えている。


 触れるだけで、こんなにも。


「ヴァーリャ、俺が怖いか?」


 ふるふると一生懸命に首を振るヴァレリア。


 段階を踏まなくては。ヴァレリアには嫌われたくない。


「ヴァーリャ、これは? 不快ではないか?」


 俺はそう言ってヴァレリアの体をそっと抱きしめる。


 答えの代わりにヴァレリアは抱きしめ返してきた。俺は何故かホッとしていた。


「では、これは?」


 そう言って今度はヴァレリアの唇に俺のそれを重ねようとする。


「まっ、待って!!」


 ヴァレリアの顔が真っ赤になり、抱き合っているからヴァレリアの心臓の鼓動が伝わってくる。ドキドキドキドキ! こんなにも緊張するものなのか?


 俺は慌てて顔を離す。


 それにしてもおかしい。どう考えてもおかしい。今まで抱きしめたりキスも思いっきり深いのもやったことがあるのに、ヴァレリアにとっては今までの事が全部リセットされた?


 いやそんな事ある? でもヴァレリアだったらあり得そうと言えばあり得そうなんだよな。


「ヴァーリャ、ではここまでにしよう? 心配ないさ。ゆっくり学んでいくといい」


 ヴァレリアは顔を真っ赤にしたままこくん、と小さく頷いた。


 か、可愛い// もう一度言おう。

 これはこれでアリだと。



ヴァレリア様今更ですかい本当めんどくさいな!笑

でもレクターはこれはこれでありだと言ってるし、私もこういうぐるぐるしてるうちに原点に戻るパターン好きです(何で?)。てかこれ私が一番難儀n(以下略)


ここまでお読みくださってありがとうございます。


でも二人が幸せならOKです!と思った方は広告の下の☆に点を付けて行ってくださいね。何をやってんの何を!でもそういうのもいいけどね?と思ったツンデレさんは私と握手してください!


ご拝読ありがとうございました。また読んでくださいね!



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