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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第二章
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ガールズトーク!

ヴァレリアたちが行く先々でトラブルに見舞われるのはニーズが持っている女神の枝が原因と判明した。

ニーズヘッグの孤独を知り、ヴァレリアとニーズヘッグはますます二人の絆を深めるのだった。

「お嬢様〜! 買い出しに行ってきましたよ。お嬢様のお好きなドラジェ買ってきましたわ! なかなか見つからなくて遅くなってしまいました、ガロ様のお城の近くにある商店でやっと見つけました。外は寒いですわね」


 エリーがガタガタと体を震わせて暖炉に火をつける。


「あ、エリーが戻ってきたわ‥‥‥。どうしよう。私エリーに聞きたいことがあったんだけれども」


『? レクターのことか?』


 ニーズに指摘されてたちまちに真っ赤になる私の顔。ニーズはその様子を見てため息を吐く。


『俺様は知らねーぜ? この件に関しては一切ノータッチだ! ヴァーリャと王子の問題だしな』


 ニーズヘッグは何もかもわかっていた。私がレクターの裸体を見て驚愕したことも、最近レクターに対してよそよそしい事も。全部全部繋がっているから筒抜けなのだ! こういう時には意識離れていてほしい〜!! 恥ずかしい! でも私の気持ちを考えてレクターには黙っていてくれたのよね? 


「じゃあニーズ、私は降りてエリーに聞いてくるわね? ニーズはどうする?」


『ん〜俺様? 俺様は少し酒場の様子を見てくるよ。大好きなパンが食えるかもしれないし』


「まぁニーズヘッグ。私と同じように食い意地が張ってますのね?」


『ヴァーリャのせいだろ普通に考えて』


 まぁいいや、とニーズヘッグは小さな羽根をパタパタさせて窓から出て行ってしまった。


 ああ、エリーに質問すると言っても、何を質問すればいいのかしら? だだだだ男性の体ってあんなに筋骨隆々としているの? とか? はおかしいですわね。


 〜以下ヴァレリアの妄想〜


「おかえりなさいエリー。ところで男の方って何故あんなに筋骨隆々としているのかしら?」

 絶対無理ですわ! いやらしい事を考えていると思われますもの。


「おかえりなさいエリー。ところでエリーはセトの裸体を見たことがありますかしら?」

 いやいやこれもおかしいですわ! セトを狙っていると思われますもの! いや私は元々レクター以外は好きじゃないのですけど‥‥‥


「おかえりなさいエリー。ところで男性の裸体をマジマジと見たことがありますか?」

 いやいや最低! 今までで一番最低な質問ですわ! いやらしさが全面に凝縮されたような質問ですわ!


 〜妄想終了〜


「お嬢様? お休みですか?」


 ノックの音と共にエリーの声が聞こえてくる。


(はわわわわ。どうしましょうどうしましょう!)


「いえ、起きているわ。エリーおかえりなさい、寒かったでしょうにお疲れ様でした」


「? これくらい慣れっこですよ。お嬢様こそそんな薄着で大丈夫ですか? 王子にもらったマフラー、大きいからマントにもなりますし、それを羽織りましょう」


 そう言ってエリーはマフラーを広げて私の背中にかけてきた。


(王子‥‥‥。レクター‥‥‥)


 ぼぼぼと火がついたかのように一気に赤くなる頬。その様子にエリーが気付いた。


「まぁお嬢様、今さら何を思い出して照れる事がありますか?婚約する前からあんなに距離感バグり散らかしていたのに」


「エっ、エリー!!」


「えっ」


 私は半泣きでエリーの懐に飛び込んだ!


 * * *


「なるほど‥‥‥。それであんなによそよそしかったのですね最近のお嬢様は」


「うっ、うん。冒険を急かしたのも、暇な時があるとレクターの裸体の事ばっかり考えてしまって。その度に心臓がうるさいから」


「へー‥‥‥」


 エリーは半ば呆れたように相槌(あいづち)を打った。


「エリーは!? エリーはセトの体! 裸体を見たことがありますか?」


「私はお嬢様ほど箱入りではないのである程度見慣れてますわ。伊達に幼い頃から奉公に出されてないですわよ。酔った領主様に襲われかけた事もありますし。男性の力がどのくらい強いのかも知っていますわ」


「‥‥‥ッ! エリー! 嫌なことを思い出させてごめんなさい!」


「いえ。良いのですよ? その酔っ払いの領主様には金的を食らわせましたし、その日のうちに逃げましたし、それに女中仲間に助けられてこうしてヴァレリア様お付きの女中になれましたし。あまり私のメンタルの(たくま)しさを舐めないでいただきたいですわ」


 そう言ってエリーはえっへん、と胸を張る。


「エリー‥‥‥」


 私がそう言うとエリーはふっと表情を緩めて私に語りかける。


「私がセトのような大柄の方が好きなのも今思えばそういういざという時に守ってくれそうな方を無意識に選んでいたのですわね。それにセトの胸板は‥‥‥。分厚くて、それに手も大きくて、包容力がありますわ。セトに抱きしめられていると安心するのです」


 エリーが思い出したようにうっとりして明後日の方向を見て話している。


 包容力? 安心? 今まで何度となくレクターに抱きしめられ、私も抱きしめ返していたけど、そんな事考えたこともなかったですわ。


 あー抱きしめ合ってるなぁ、くらいで。あ、でも暖かいとか離れたくないとかは思ったことがありますわ。そういう事なのかしら?


 でもでも、あの装備の下には確かにあの筋骨隆々とした凛々しくて(たくま)しい身体があって‥‥‥。ああ、思い出したらまた顔が熱くなってきましたわ。もう‥‥‥。なんでよりにもよって月明かりに照らされていたの?! あの彫刻のようなレクターの裸体は‥‥‥。普段はかっちりとした皮の軽装備にマントで隠されていて‥‥‥


「詐欺ですわ! 詐欺!」


 私は机をバァン! と叩いて言った! 顔は相変わらず真っ赤なままだった(と思う)。


「うえーん、どうすれば良いのぉ? エリー? 私、私もう気軽にレクターに抱きしめられたり、抱きしめたりできないですわ。ましてやキキキキキスなんて!」


 エリーはその様子を見ながら若干イライラしていた。


 このお嬢様は学園で習わなかったのかしら? それとも周りに教えてくださる方がいなかったのかしら? 学園の先生方は何をしてらっしゃったのかしら?


 しかもこのお嬢様の反応を見るに、男性と女性の体の作りについて何もご存知ないご様子‥‥‥。王子にはその豊満な巨乳はないでしょうが!! 何を見てきたんですの??? 


 つい先日娼婦の真似事までしたのに!? もしかして、娼婦の意味もわからなかったのですか? いや、あれだけ熱意を持っていて取り組んでいたからそれは無いの?? でもお仕事の内容は良くわかってないみたいでしたわね。ただ男女が身体を抱きしめ合う場所とかそういう認識だったのかしら? それ以上の事は知らないと?


「‥‥‥」


 つまりお嬢様は男女の身体の違いから学ぶ必要があると‥‥‥?


「はぁ〜、王子が不憫でなりませんわ。未来の伴侶となる予定のお嬢様がこれでは‥‥‥」


「うわぁ〜、このドラジェ! すごく色々な色があって、しかも美味しいですわ! ありがとうエリー!」


 お嬢様は先程泣いて突っ伏していたのが何処へやら、ケロッとしてドラジェをかじっていた。参ったと言う感じでエリーが顔を覆った。



ヴァレリア様はまだ16歳だからね?

いやその歳でよく娼婦の真似事までしたよねヴァレリア様。度胸があるのか。とにかくすごいですよね(笑)

あんな事ができたのもレクター王子が居たからでしょうか?


※ドラジェとはナッツ類を砂糖でコーティングしたお菓子のことです。


ヴァレリア様その段階か!と思った方は私もそう思います。エリーが言うように今までのは何だったの?ただのスキンシップですかいお嬢様?と思った方は広告の下にある☆に点を付けて下さいね。


ご拝読ありがとうございました!また読んでくださいね。



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