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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第二章
138/269

海の悪魔

ヴァレリア一行は、ユーリが待っているであろう場所に向かっていた

ユーリは久しぶりにみんなと揃って冒険が出来ることにヴァレリアと同じように密かに心を躍らせていた。

 ユーリはスキドブラドニルが放っているであろう嫌な気配がするギリギリ手前で待っていた。


 さすがユーリ、嫌な気配は肌で感じるらしい。


「エリー! みんな!」


 ユーリは久しぶりに見る仲間たちと出会えて目を輝かせた。


「あれ? セトとケルベロスは?」


 エリーは軽く事情を説明した。


 そうですか、と納得するユーリ。


「呼び出してすまなかったな、親父は大丈夫だったか?」


「ええ、(こころよ)く送り出してくれましたよ」


 そう言って笑うユーリに安堵した様子の王子。


(このお二人、一時期よりかなりお互いの雰囲気が丸くなりましたわ)


 エリーは一人ホッとして胸を撫で下ろした。


「気を付けてください、この辺りから異常な気配がします。一応全員にガードの魔法をかけます。王子には‥‥‥。一応かけます! 王子は元々の魔力は強いですけど、常に魔法のオーラを纏ってる感じではないので」 


「確かにそうだな。頼むユーリ」


 王子は納得してガードの魔法をユーリにかけてもらっていた。もちろんヴァレリアにもエリーにも。


「スキドブラドニルとここはだいぶ遠い位置にいるのに、禍々しいものを感じます。本当に騒音だけだとは思えません。本質はこの禍々しいオーラにあるんだと思います」


「へぇーよくわかりますわね! ユーリを呼んでよかったわ! レクターありがとう、ユーリありがとう!」


 そう言ってヴァレリアはレクターにキスをしようとしたが、何故か思い留まり頬を染め顔を背ける。


「れ、レクターも、ありがとね//」


 ‥‥‥は? なんですか今のは?もうお二人は婚約されたのですよね? 王子も困惑してる様子だわ。ヴァレリア様の為に広げた腕をどうして良いかわからないご様子‥‥‥


 エリーは今更照れるヴァレリアに若干というか、かなりイライラしていた。


「でも何故騒音騒ぎという依頼が‥‥‥」


 ユーリが言ったその時、スキドブラドニルのある方向からものすごい熱風と、女のものとも男のものとも分からない悲鳴が聞こえてきた!


「これは‥‥‥。声がここまで!? 確かにこの叫びは体に悪いな、普通の人間なら耐えられないだろうな。エリーこれはそもそもどんな奴からの依頼だったんだ?」


 レクターが驚いてエリーに尋ねる。


 エリーは聞いたことのないような叫び声に鳥肌を立てながらも答えた。


「オシリスさんに聞いたらどうやら海賊の依頼のようですよ、スキドブラドニルのせいで、その海域を制覇できないからですって! 呆れるわ。もちろんそれを聞いた後は報酬は弾んでもらう事を約束してくれました」


 なかなか話そうとしないオシリスさんに問い詰めました。怪しかったのでね!


「なるほど海賊が‥‥‥。ガルシア様の予想は当たっていましたね」


「親父が? 何て言っていた?」


【スキドブラドニルには色々噂があるんだが、一つは幽霊騒ぎ、あとはお宝が眠っているとかな。なにしろ女神に献上されたと言われる神々の乗る船だ。さぞ豪華絢爛だろうよ、その不気味さゆえ誰も近寄らないが】


【その依頼者、やってる事が卑怯ですね。謎を解明できたらその船の財宝を盗もうって】


 ーーーーと‥‥‥


「へぇ〜親父にしては冴えてるじゃないか。魔法にしか興味がないと思ってた」


「ははは‥‥‥」


 ユーリは言えなかった。ガルシアがフランシスと一緒にこの船の様子を見に来た事を。


「とにかくここからは気を引き締めて行きましょう。特にヴァレリア様! なんか先程からボーッとしてますけど大丈夫ですか?!」


 エリーがイライラしながら聞く。


「えっ? ええ大丈夫! 平気!」


* * *


 一同は視界の悪い森に入っていった。この森を抜けなければスキドブラドニルには辿り着けないのだ。


 森に入った途端に霧が立ち込めてきた。


「霧が濃くなってきたな。どうやら歓迎されてはいないようだ」


「そうですね‥‥‥。まるでこの森、そして船自体が生きているような感じがします」


 そうユーリが言った時だ。


「ヴァレリア様!!」


 突然エリーが大声を上げた!


 ヴァレリアは森に入った途端、何かが取り憑いたかのように先を走っていたユーリをあっという間に追い抜いてしまったのだ。


「ヴァレリアさん!」


「ヴァーリャ! どうしたのだ!? クソッ‥‥‥! ユーリ、悪いが俺は先に行ってる! 心配ない、いざとなったらこの目がお前たちを見つける!」


「は、はいっ!」


 ヴァレリアさん、一体何が?!


「‥‥‥?‥‥‥霧が晴れた?」


 ヴァレリアとレクターの二人が去った後、あんなに立ち込めていたはずの霧が晴れた。


「ヴァーリャ!! 一体どうしたのだ!!」


 レクターがあっという間に追いつき、馬を近づけヴァレリアの馬の手綱(たづな)を握る。


 ヴァレリアはブツブツと何かを呟いている。


「レクター‥‥‥。何か、歌みたいなのが聴こえてこない?聴こえる、聴こえる、悲しくて寂しい歌‥‥‥」


 それに、なんて美しい声なの?


 歌? 聴こえないが‥‥‥。もしかして、ヴァーリャには聴こえているのか? まさか、セイレーン?


 恋しくてたまらないとは

 なんと愚かな思いつき

 どうしてあなたはそこにいるの

 どうして私はここにいるの

 これが罰だと言うのなら

 何が罪だったのですか

 嗚呼‥‥‥神さま神さま


「ヴァーリャ‥‥‥。ニーズヘッグ! ニーズヘッグ!!」


 ふとヴァレリアの胸元を見ると、ニーズヘッグがぐったりとしていた。どうやらニーズヘッグはヴァレリアが聴こえると言う歌を同じく聴いてしまったのだ。深い眠りに堕ちて起きそうにない!


「クソッ! なんでヴァーリャが、ヴァーリャだけに聴こえるのだ!? それにセイレーンは男を船から引きずり下ろすと聞いたことがある‥‥‥。ヴァーリャは女なのに何故?」


『残念、惜しいけど違うよ。僕はリヴヤタン、海の悪魔だ。君らが探しているのはあの船だろう? その昔、女神に献上されたという伝説の船‥‥‥。今は僕が管理し、寝床(なわばり)としている』


 そいつ(悪魔)は音もなく静かに現れた。その悪魔は、人間のような(なり)をしており、銀の長い髪に紫のギラギラ輝く瞳を持ち、肌は白く、人間よりもひと回り体格が大きい。


「‥‥‥ッ!!!!」


 ブワァッ!!


 瞬間、レクターの周りを一気に青い炎が取り巻き、その瞳が金色に輝く!


『わぉ、すごいね君』


 レクターの中の魔剣レーヴァテインが咆哮(ほうこう)を上げている!


「待て! レーヴァテイン! ヴァーリャがいる!」


『クククッ』


 リヴヤタンと名乗る悪魔が思わず笑う。


『ヴァーリャ? その女の名前か? ずいぶんとお優しい事で。ヴァーリャか‥‥‥。美しい、我が花嫁にふさわしい』


 ビキィッッッッッ!!!!


 リヴヤタンがそう言い放った瞬間、レクターの金色の瞳が怒りに燃え盛り、頭にはビキビキとツノが生えてきた!


「クソッッ、待てレーヴァテイン‥‥‥。まだ、ヴァーリャ、が」


 俺は辛うじて残っている理性で自分の中の魔剣に呼びかける。


 レーヴァテインが怒りと嫉妬で暴れているのがわかる! 直感で分かる、このリヴヤタンという悪魔は。


 ヴァーリャを自分の花嫁にしようとしているのだ!!


 だが今ウードガルザ(レーヴァテインが人間となって現れる姿)になるわけにはいかない。ヴァーリャを安全な場所に移さないと‥‥‥


 ヴァレリアはいつのまにか馬の上に突っ伏して気絶していた。


 この状態のヴァーリャを(ほお)って、リヴヤタンと対峙するなど‥‥‥


『ほほほ、もしかして僕と勝負するつもり?』


 その馬鹿にするかのような悪魔(リヴヤタン)の嘲笑に、我慢の限界が来た! 俺を怒らせるとは、馬鹿な悪魔だ‥‥‥


(すまんヴァーリャ!!)


 俺は持っていた手綱を離し、力を解放した!


 ビキビキビキッ!! レクターの頭にツノが生え、体格がひと回り大きくなり、羽根が生え、肌の色が変わる!! 


『グオオオオオーーーッ!!』


 ウードガルザに変身したレクターの咆哮(ほうこう)は、森にいるユーリたちにも聴こえていた!


「な、なんなの今のは!? この世の者とは思え、な‥‥‥」


 エリーはその咆哮に圧倒されて倒れてしまった。 


「‥‥‥ッ、エリーさ、ッ!」


 ユーリも辛うじて耐えていたが、やがてエリーと同じように気を失ってしまった。


『な、なんだ。お前は‥‥‥。先程までただの人間だと思っていたのに』


 リヴヤタンは心なしか震えているように見えた。


 ウードガルザはリヴヤタンの方へゆっくりと振り返る。


『私の名はウードガルザ・ロキ【終わらせる者】だ。この姿を見て生きた者はいない。さぁ、先程お前が言っていた「勝負」とやらをしようじゃないか?』


 ウードガルザはそう言うと、ニヤリと口の(はし)に笑みを浮かべた。



ヴァレリア様、行く先々でトラブルに巻き込まれて大変ですな。


それより、今回の王子かっこよくないですか?//


レクターはヴァレリア様の事となると全力!と思った方は広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね。咆哮一つでガードの魔法を貫通するってどういう事やねんと思った方は私もそう思います。


ここまでお読みくださってありがとうございます。

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